第二の減点ポイントは、ハルヒと出会ってから世界を元に戻す方法に辿り着くまでの展開に起伏がないという点です。
改変後の世界においてもハルヒの行動力という魅力は消失しておらず、電光石火の行動により鍵となる人物たちを特定の場所に集めてしまうのですが、その過程があまりに順調すぎると感じました。
当初の混乱期を脱したキョンが、ハルヒに出会った瞬間からはハルヒの力によって順当なまでに「解決」への道筋を辿ることができてしまうという流れはやはり淡白に感じられます。
鍵となる人物たちを特定の場所に集める過程においても、何かそれを妨害するような障害が現れて、そこでひと悶着あるとより感情を揺さぶる物語になったのにと思ってしまいます。
最後の減点ポイントは、終盤の展開がやや形式的に過ぎるという点です。
世界を元に戻す決断をしたのち、キョンは事情を知っている側の人物たちとSF的な時間移動等を駆使しつつ世界を元に戻す方法を実行していくのですが、この過程においてあまり感情に訴えかけるような事件がなく、SF的理屈が並べ立てられるだけの文面が続いてしまうのです。
これは「涼宮ハルヒ」シリーズ全体に横たわる欠陥とも関連しております。
本シリーズの魅力はジャンルが「青春学園ファンタジックSFミステリ純文学ラブコメ」であるところなのであり、様々な要素が同時並行的に走る物語にその魅力があるのですが、時おりSF一辺倒やミステリ一辺倒の場面が続くと、途端にそのジャンルおける二流作品へと転落します。
本作の終盤がまさにそれであり、つまらなくもないが特筆して面白いわけでもない二流SF展開が続くうえ、それを演じているキャラクターたちが少しキツめのライトノベル的キャラクター言動を行うので胸焼けがしてしまいます。
評価4点をつけた第1巻と比較すると、やはり、コンセプトは同レベルに良くとも個々のエピソードの面白さに欠けるという印象があります。
とはいえ、ここまで「涼宮ハルヒ」シリーズを読んできた読者ならば十分に楽しめますし、本作を読まずして「涼宮ハルヒ」シリーズを楽しんだとは決して口にできないような伝説的作品でもあります。
お時間があまりないという方でも、この第4巻までは是非読んで頂いて、往年の名シリーズに宿る魅力を体感してもらいたいと思うところであります。
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