人間たちのささやかな成長と、そんな成長に置いていかれてしまうロボットのアルファが感じるちょっとした寂しさ、他のロボットたちとの出会いによって喚起されるちょっとした喜び、そういった「物語」たちが本作の静謐で豊饒な空気感に華を添えているのです。
唯一欠点を挙げるとすれば、アルファの性格が「愛嬌と包容力がある(空想上にしか存在しない男性側から見た理想の)女性」となってしまっていることでしょうか、もう少し性格に裏表があったりすれば現実感が増して面白くなったと思いますし、ただ静かなだけではないドラマも起こせたことでしょう。
アルファに限らず、どの登場人物たちも素直過ぎるな、と思わせられることが度々あり、朴訥な人々ばかりの方が確かに本作の雰囲気を壊さないで済むのですが、やや刺激に欠け過ぎてしまう、起伏がなさ過ぎてしまう効果を生んでいるように感じられました。
とはいえ、本作の本質的な持ち味は、あくまで「『夕凪の時代』に起きる静かな感動」ですので、それらの欠点は全く致命的ではありません。
凡百の漫画とは一線を画す、独特のエンタメを是非、ご賞味ください。
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