漫画タイトル「や」行

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雪の峠・剣の舞

「雪の峠・剣の舞」岩明均 評価:3点|儚く厳しい戦国時代を生きる人間たちのドラマを描いた佳作中編集【歴史漫画】

「寄生獣」や「ヒストリエ」で有名な漫画家、岩明均さんが著した歴史漫画です。単行本には表題の中編二編が収録されており、前者は戦国末期に有力大名だった佐竹家で起こった「川井事件」というお家騒動、後者は疋田陰流という剣術流派の祖となった疋田文五郎がまだ戦国大名である長野家に仕えていたときに起こった架空の少女ハルナとの交流を描いた作品となっております。のちに「ヘウレーカ」や「ヒストリエ」といった漫画によって歴史漫画家としての地位を盤石にする岩明均さんというだけあって、史実をもとにしながらも起伏に富んだエンタメを提供する漫画となっており、安心感のある面白さだったという印象。強烈に刺激的な感動、というわけにはいきませんが、演出や構成力の巧みさと読み易さを両立した佳作に仕上がっております。あらすじ・雪の峠関ヶ原の戦いで西軍についたため、常陸国(概ね現在の茨城県に相当)を長らく統治していた名門大名佐竹家は出羽国(現在の山形県と秋田県に相当)へ転封となってしまう。新領地にて新たな居城を建築することになった佐竹家だが、当主である佐竹義宣は家老たちの意見を軽んじ、新参者で若手の渋江内膳の意見を重用するのだっ...
ヨコハマ買い出し紀行

「ヨコハマ買い出し紀行」芦奈野ひとし 評価:4点|滅びゆく世界が生み出す静かな感動【近未来日常系漫画】

1994年から2006年まで「月刊アフタヌーン」に連載されていた漫画であり、敢えてジャンル分けするならば「近未来日常系」とでも呼べる作品です。誰もが知っているような有名作ではないかもしれませんが、2007年の第37回星雲賞コミック部門を受賞するなど、SFとしての評価も界隈では高い漫画となっており、隠れた実力派という位置づけが適切でしょう。文明が後退した世界を長閑に生きる人々の、少し不思議でなぜだかとても感動的な日常に打ちのめされること間違いなしの傑作です。あらすじ海面上昇に伴って現在の沿海部が水の底に沈み、文明が後退してしまった日本が舞台。女性型ロボットである初瀬野アルファ(はつせの あるふぁ)は三浦半島の「西の岬」で「カフェ・アルファ」を経営している。といっても、一日に2,3人お客さんが来ればよいほうの暇なお店で、アルファはとても長閑に日常を暮らしていた。近所に住む「おじさん」や、その孫である「タカヒロ」と交流したり、ヨコハマへ買い出しに出かけたり、少し長めの旅に出たりする中で、アルファは様々な人々との出会いと別れを経験する。よもや人類には滅亡の運命しか残されていない「夕凪の時代」に...
湯神くんには友達がいない

【学園コメディ】漫画 「湯神くんには友達がいない」 佐倉準 星3つ

1. 湯神くんには友達がいない2013年から「週刊少年サンデー」で連載されていた作品で、2019年7月に最終巻が発売され完結となりました。連載中にアニメ化がされることもなく、超有名作とは言い難いですが、月イチ連載とはいえ週刊誌連載をやり切って円満完結(おそらく)した作品ということもあり内容はなかなか充実しておりました。分類としてはコメディ(ギャグ)漫画であり、実際なかなか笑わせてくれるのですが、安易に俗っぽい笑いを取りに来るのではなく、人間心理の深いところを探求し、それをユーモラスに表現しているのが本作独自の魅力になっています。高校生あるあるを交えながら、ときに寂しさや切なさ、やりきれなさといった感情を絶妙に表出させることでほろっとくるような展開もあるという作品で、まさに現代版人情コメディという呼び名が相応しいのではないでしょうか。メタ表現や特定クラスタのネタに頼らず、万民向けの普遍的な笑いと感動を追求している点でも卓越した作品です。2. あらすじ高校二年生の綿貫ちひろ(わたぬき ちひろ)は転勤族の父を持ち、これまでも転校を繰り返してきた。しかし、今回の転校先である上星高校には長くい...
夜とコンクリート

漫画 「夜とコンクリート」 町田洋 星2つ

1. 夜とコンクリート町田洋さんの中短編集。「夏休みの町」で第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞した新進気鋭の漫画家です。流行かつ王道の漫画表現とは一線を画し、細い線とモノトーンで描かれる独特の絵柄と不思議な雰囲気の物語が特徴です。とはいえ、感想としては「こういうマイナー漫画よくあるなぁ」という印象。幼少期への憧憬を描いた「青いサイダー」も、大学生の青春とSFを混ぜた「夏休みの町」も、日常に少し変わったファンタジー/SF要素を入れて、あとは多くを語らないという手法。いかにもサブカルチャー感がありますが、それ以上ではありません。悪くはありませんが、好きな人は好きの域を出ない作品でしょう。夜とコンクリートposted with ヨメレバ町田 洋 祥伝社 2014-02-03AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo
夜をとめないで

漫画 「夜をとめないで」 ハルミチヒロ 星3つ

1. 夜をとめないで「ベルベット・キス」が代表作の女性漫画家、ハルミチヒロさんの短編集。多作な作家さんではありませんが、独自の路線で人気を確立しています。あまり期待せずに読んだのですが、思いのほか良い作品で面白かったです。女性主人公の話が多く、女性の心理を細かく描きながらも、設定や展開において男性読者に対する訴求力も強いという物語が多いように思われました。絵柄も少年漫画・少女漫画・青年漫画のどれとも区分しがたい筆致で、「性」を強く描きながらも中性的という不思議な作風は魅力的ですね。夜をとめないでposted with ヨメレバハルミ チヒロ 白泉社 2014-11-28AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo
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