青年漫画

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雪の峠・剣の舞

「雪の峠・剣の舞」岩明均 評価:3点|儚く厳しい戦国時代を生きる人間たちのドラマを描いた佳作中編集【歴史漫画】

「寄生獣」や「ヒストリエ」で有名な漫画家、岩明均さんが著した歴史漫画です。 単行本には表題の中編二編が収録されており、前者は戦国末期に有力大名だった佐竹家で起こった「川井事件」というお家騒動、後者は疋田陰流という剣術流派の祖となった疋田文五郎がまだ戦国大名である長野家に仕えていたときに起こった架空の少女ハルナとの交流を描いた作品となっております。 のちに「ヘウレーカ」や「ヒストリエ」といった漫画によって歴史漫画家としての地位を盤石にする岩明均さんというだけあって、史実をもとにしながらも起伏に富んだエンタメを提供する漫画となっており、安心感のある面白さだったという印象。 強烈に刺激的な感動、というわけにはいきませんが、演出や構成力の巧みさと読み易さを両立した佳作に仕上がっております。 あらすじ ・雪の峠 関ヶ原の戦いで西軍についたため、常陸国(概ね現在の茨城県に相当)を長らく統治していた名門大名佐竹家は出羽国(現在の山形県と秋田県に相当)へ転封となってしまう。 新領地にて新たな居城を建築することになった佐竹家だが、当主である佐竹義宣は家老たちの...
岡崎京子

「リバーズ・エッジ」岡崎京子 評価:3点|独特の退廃的な世界観が魅力的な90年代高校生群像劇【青春漫画】

1980年代から90年代にかけて活躍した岡崎京子さんの作品。 漫画雑誌での連載期間は1993年から1994年までとなっており、連載終了後に単巻で単行本が発売されております。 1990年代という時代を背景として、ややダウナーでオフビートな高校生たちの生活を描いており、いじめや同性愛、摂食障害や援助交際といった岡崎さんらしい要素が散りばめられています。 作中では衝撃的な事件が起こりますが、あくまでメインテーマは高校生間で結ばれる恋愛と友情の機微となっており、掴みどころがないのにぐんぐんと読み進めてしまうような、そんな作品でした。 あらすじ 大きな河の河口付近に位置する街が舞台。 主人公の若草わかくさハルナは女子高生で、素行不良の同級生である観音崎かんおんざき峠とうげと付き合っている。 といっても、もはや観音崎への愛情は存在せず、惰性で付き合っているばかり。 そんなハルナが通う高校の教室では、同級生の山田やまだ一郎いちろうが激しいいじめに遭っていた。 執拗ないじめを見るに見かねたハルナは山田を助けるのだが、そのことがきっかけとなり、ハル...
タコピーの原罪

「タコピーの原罪」 タイザン5 評価:2点|凄惨な環境で過ごす少女と、救済を図る無能な異星人、皮肉な展開と仄かな希望【短編漫画】

集英社が運営しているweb漫画サイト「ジャンプ+」に連載されていた作品。 全16話の短期連載ながらインターネット上で好評を博して多数のPVを獲得、上下巻にて単行本化された漫画です。 いじめられている少女の前に、宇宙から来た「タコピー」というマスコットキャラクターのような生き物が現れ、少女を助けようと奮闘するという物語。 そう紹介すると聞こえがよいのですが、実態は真逆で、少女たちが抱える背景の陰惨さと、「タコピー」の無能ぶりによって悪いほう悪いほうへと事態が進行していくというサスペンス調の展開が特徴となっております。 全体的な評価としては、発想は面白いと感じたのですが、いかにも漫画的な「ベタ」さが多く、とりわけ深刻に描かなければならないはずの、登場人物たちの家庭環境の酷さがステレオタイプだった点が惜しいと感じました。 物語の枠組みは悪くないのですが、細部に工夫がないために凡庸だと言わざる得ない作品です。 あらすじ 小学四年生の久世しずか(くぜ しずか)が公園で出会ったのはタコのような形をした謎の生き物。 しずかによって「タコピー」と名付け...
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GUNSLINGER GIRL

「GUNSLINGER GIRL 第1巻」相田裕 評価:4点|もしも誰かを好きで好きでしょうがなくなって、それでも永遠に満たされないとわかってしまったら【社会派サスペンス漫画】

本ブログで一度紹介した作品ですが、あまりにも感動が深いので単巻ごとのレビューを書いていきたいと思います。 全体のレビューはこちら テロリズムの脅威に揺れるイタリアで、政府側の対テロ組織に所属する訳あり元軍人・元警察官、そして、彼らとペアを組むことになる、身体改造手術を施されて「義体」となった少女たちの物語。 息の詰まるような葛藤の連続、その果てにある悲壮な感動。 そんな本作の魅力がいきなり炸裂する第1巻のレビューです。 あらすじ 舞台は超近未来のイタリア。 貧しい南部と豊かな北部という、イタリアが伝統的に抱える格差問題を巡る政争は熾烈を極め、北部独立派によるテロが横行する事態となっている。 豊かな北部から搾取された税金が、怠惰な南部人を食わせるための公共事業や補助金に投下されている。 そんな主張には北部人の多くが同調しており、テロリスト側の勢いは止まるところを知らない。 そんな折、テロとの戦いに勝利して統一を維持したい中道左派政権は「社会福祉公社」という機関を創立する。 表向きは身体に障がいを抱える子供を支...
GUNSLINGER GIRL

「GUNSLINGER GIRL」相田裕 評価:4点|テロリストとの闘いに身を投じるのは「義体」を与えられた少女たち【社会派サスペンス漫画】

2002年から2012年まで「月刊コミック電撃大王」に連載されていた作品。 「電撃大王」といえば所謂オタク向けの「萌え」漫画を中心とした雑誌ですが、その中にあって異彩を放っていたのがこの作品。 現代イタリアが抱える「南北問題」という政治問題を嚆矢に、北部イタリアの分離独立派テロ組織と政府が創設した対テロ組織である「社会福祉公社」との戦いを描いた硬派な作品となっております。 しかし、本作の特色はそういった欧州の政治問題を背景にしたサスペンスという側面ばかりではありません。 「社会福祉公社」に所属するのは様々な機関から集められた訳ありの元軍人や元警察官たち。 そして、そういった「大人」たちとペアを組むのは、瀕死の状態だったところに身体改造と精神洗脳を施され、テロリストと戦うために蘇った「少女」たちである、という点が他にはないオリジナリティを醸し出しています。 社会問題を巡って政治家や軍人、メディア、市井の人々が織りなす政治活劇というマクロな枠組みと、テロとの戦いの中で明かされていく「社会福祉公社」組織員が辿った苦節の人生、「義体」となった少女たちの愛憎...
ヨコハマ買い出し紀行

「ヨコハマ買い出し紀行」芦奈野ひとし 評価:4点|滅びゆく世界が生み出す静かな感動【近未来日常系漫画】

1994年から2006年まで「月刊アフタヌーン」に連載されていた漫画であり、敢えてジャンル分けするならば「近未来日常系」とでも呼べる作品です。 誰もが知っているような有名作ではないかもしれませんが、2007年の第37回星雲賞コミック部門を受賞するなど、SFとしての評価も界隈では高い漫画となっており、隠れた実力派という位置づけが適切でしょう。 文明が後退した世界を長閑に生きる人々の、少し不思議でなぜだかとても感動的な日常に打ちのめされること間違いなしの傑作です。 あらすじ 海面上昇に伴って現在の沿海部が水の底に沈み、文明が後退してしまった日本が舞台。 女性型ロボットである初瀬野アルファ(はつせの あるふぁ)は三浦半島の「西の岬」で「カフェ・アルファ」を経営している。 といっても、一日に2,3人お客さんが来ればよいほうの暇なお店で、アルファはとても長閑に日常を暮らしていた。 近所に住む「おじさん」や、その孫である「タカヒロ」と交流したり、ヨコハマへ買い出しに出かけたり、少し長めの旅に出たりする中で、アルファは様々な人々との出会いと別れを経験する。...
月刊少女野崎くん

「月刊少女野崎くん」椿いづみ 評価:3点|王道の笑いで攻める、少女漫画制作にかける青春学園コメディ【青年漫画】

ガンガンオンラインにて2011年から連載されているウェブ漫画。 今年で連載10周年を迎えた長期連載のコメディ漫画です。 少女漫画のパロディで笑いを取るという独自性を有している作品であり、だからこそ、少女漫画ではあまり見られない「ヒロインが意中の男性の気を引くために頑張る(が空回りする)」という構図が特徴となっております。 サブキャラクターたちも個性豊かな面子が揃っており、テンポの良い4コマの中でオタク的な寒いノリに頼らない王道の笑いを提供してくれる点に本作の良さがあります。 漫画文化に浸ってきた人ならば必ず笑える作品。忙しない日常の息抜きにお薦めです。 あらすじ 舞台は私立浪漫学園高校。 佐倉千代(さくら ちよ)は意中の人である野崎梅太郎(のざき うめたろう)に告白しようとするも、緊張のあまり「ずっとファンでした」と叫んでしまう。 そんな佐倉に、野崎はなぜかサイン入りの色紙を手渡してくれる。 サインとして記されていた名前は「ゆめの咲子」。 野崎の正体は人気少女漫画家である夢野咲子だったのである。 紆余曲折あって野崎の漫...
ドラゴン桜

「ドラゴン桜2」三田紀房 評価:3点|丸くなって復活した現代風教育漫画【青年漫画】

2007年に完結した「ドラゴン桜」の続編。 人気ドラマとなった前作に続き、本作もドラマ化されております。 低偏差値の高校生を画期的な方法で東大合格に導いていくカタルシスが絶妙だった前作とは違い、本作で東大を受験する生徒たちは偏差値50前後のいわば中偏差値な高校生たち。 しかも、東大合格に導く手法もアプリの活用であるなど「現代風」に媚びてしまっているのがやや破壊力不足に感じました。 普通の高校生が一年間頑張れば東大に合格することができる、をコンセプトにしているようですが、設定が丸くなったぶん展開も丸くなり、常識破りの方法で驚かせると言うよりも、現代の常識を伝える漫画になってしまっています。 それゆえ、やや漫画としての面白さには欠けると思ってしまった次第です。 ただ、現代における教育についての啓蒙漫画としてはそれなりによく出来ており、特に家庭教育についての助言や「勉強」の先にあるもの、現代社会を生きるうえで必要な「勉強」以外のスキルについての言及は示唆的であると思います。 (14巻までを読んだ感想です) あらすじ 桜木健二の活躍により...
エンタメ

【創作論】「1518! イチゴーイチハチ!」の設定から考える、現代の学園漫画において生徒の多様性を描く困難

「1518! イチゴーイチハチ!」という漫画が好きです。 王道の青春学園漫画であり、真摯に楽しく高校生活を謳歌する登場人物たちの姿に胸をうたれる作品になっております。 そんな「1518! イチゴーイチハチ!」の舞台になっているのが「松栢学院大付属武蔵第一高校」という埼玉県の私立高校。コースが偏差値順に「選抜」「特進」「情報」の3つに別れており、それぞれのコース内でクラスが組まれています。「情報」にはスポーツ推薦で入学した生徒も多いため、スポーツコースと茶化されたりもするという設定。 本作は生徒会活動を中心に描いた作品ですので、それぞれのコースから集まった生徒会役員たちが友情を深めていく物語になっております。 読んでいるあいだは夢中になって気づかなかったのですが、あらためてこの設定を眺めると、上手く考えたなと思います。 現実問題として、都市部であればあるほど一つの高校には同質な生徒が集まりやすい傾向があります。 普通科の高校は偏差値ごとに階層が細かく区切られているため、知能や家庭環境の似通った生徒が集まりやすくなっており、工業や商業、情報系や芸術系と...
僕は愛を証明しようと思う

「ぼくは愛を証明しようと思う」藤沢数希・井雲くす 評価:2点|恋愛工学を駆使してモテ男になろう【恋愛ハウツー漫画】

外資系銀行出身で現在は作家として活躍する藤沢数希さん。 そんな藤沢さんは「恋愛工学」と題した恋愛術も発信しており、その技術を纏めた著作として小説「ぼくは愛を証明しようと思う(幻冬舎刊)」があります。 本作はその漫画版であり、藤沢さんが提唱する「恋愛工学」理論が物語に絡めて紹介されていくという作品になっております。 先日紹介した漫画「ピックアップ」が「成長物語」を描くための道具として恋愛技術を用いていたのに対し、本作は「恋愛工学」という恋愛技術を紹介することが漫画の目的であり、そのための道具として物語形式を用いている点が対照的です。 そんな本作ですが、まさに「恋愛工学入門」という位置づけに相応しい漫画であると思います。 一般的な発想ではまず思いつかない「恋愛工学」の理論と技術が次々と紹介され、主人公による実践を通してその具体的な方法と成功までの道筋が描かれていきます。 聞き慣れない用語が心理学的な補足を伴って上手く説明されており、そんなに都合よく「モテ」を解決してしまえるのか、と疑問に思うこともなくはないのですが、それなりに理解・納得しな...
ピックアップ

【ナンパ・男磨き・友情】漫画「ピックアップ」真鍋昌平・福田博一 評価:3点【青年漫画】

「ナンパ」を題材とした全2巻の短編漫画。 「闇金ウシジマくん」の作者として有名な真鍋昌平さんが原作を務めております。 とはいえ、チャラいナンパ師がコリドー街や江ノ島で女性を「ピックアップ」してはセックスする様子を描いた漫画、というわけではありません。 主人公はいかにも「陰キャ」な新卒社会人であり、そのバディとなるのがデキる先輩という構図。 この先輩が主催する「魁ナンパ塾」に主人公が入塾し、様々なナンパ術を学びながら社会を生きる「漢」としての技量を高め、仕事でも成功していくというサクセスストーリーです。 へたれ主人公が「師」の導きで成長し、強さを身に着けながら自立して一人前になっていく。 そんな少年漫画を彷彿とさせる大枠ながら、自由恋愛と「男女平等」が隅々にまで行き渡った現代社会の闇を何でもないことのように描くことで却って生々しく表現しているという面白い作品。 都市部で生きる若手社会人なら共感できること請け合いでしょう。 あらすじ 主人公の南波春海(みなみ はるうみ)は都内の出版社に勤める新卒社会人。 配属希望はマンガ...
漫画特集

【短編漫画】おすすめ短編漫画ランキングベスト5【オールタイムベスト】

本ブログで紹介した全4巻以下の短編漫画からベスト5を選んで掲載しています。 第5位 「リバーズ・エッジ 」岡崎京子 【1990年代の高校生を取り巻く退廃的な日常と惨劇】 ・あらすじ 大きな河の河口付近に位置する街が舞台。 主人公の若草わかくさハルナは女子高生で、素行不良の同級生である観音崎かんおんざき峠とうげと付き合っている。 といっても、もはや観音崎への愛情は存在せず、惰性で付き合っているばかり。 そんなハルナが通う高校の教室では、同級生の山田やまだ一郎いちろうが激しいいじめに遭っていた。 執拗ないじめを見るに見かねたハルナは山田を助けるのだが、そのことがきっかけとなり、ハルナは山田のとある秘密を知ることになる……。 やり場のない劣等感を抱えた高校生たちの、切なく苦しく、それでいてちょっと可笑しな青春群像劇。 ・短評 何が良いのかと問われれば具体的な要素を挙げづらいのですが、それでいて感傷的になりながら一気に読み切ってしまう作品です。 若い身体が持つ特有の体力と精神力を抱きながら、人生や高校生活に対する...
ハチミツとクローバー

【ハチミツとクローバー】甘くて切ない「夢」と「片想い」の青春恋愛漫画 評価:4点【羽海野チカ】

1. ハチミツとクローバー 2000年代前半に一斉を風靡した少女漫画。 著者は羽海野チカさんで、現在は白泉社の月間漫画雑誌「ヤングアニマル」で青春将棋漫画「3月のライオン」を連載されています。 10巻完結ながら累計発行部数は800万部に達し、アニメ化と実写映画化も果たしているなど、名実ともに堂々たる人気作品である本作。 2度の掲載紙休刊を乗り越えて連載が続いた作品でもあり、マイナーな掲載紙出身ながら大ヒット作にまでのし上がった経緯にもドラマを感じさせます。 そんな本作を今更ながら読了したのですが、評判や販売実績に値するような、素晴らしい感動作でした。 多様な登場人物たちの恋模様と夢の探求、もがき続ける中で生まれる葛藤が濃密に描かれており、とにかく一話一話の盛り上がり度合いが著しく高い作品です。 中だるみや「捨て回」のような話が存在せず、まさに人生のハイライトを駆け抜けているような、甘くて苦い青春のひとときを自分自身が経験したかのように錯覚させられる名作です。 2. あらすじ 物語の主な舞台は浜田山美術大学。 東京に存...
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