【現代社会】おすすめ現代社会評論3選【雑記まとめ】
「嵐が丘」エミリー・ブロンテ 評価:2点|世界の十大小説にも選ばれている英国ロマン主義文学の愛憎劇【海外純文学】
英国の著名な作家、ブロンテ三姉妹の二番目、エミリー・ブロンテの小説です。サマセット・モームの「世界の十大小説」にも選ばれる歴史的名作だそうです。とはいえ、大いに楽しめたかと言われればそうではありません。二つの家系の愛憎劇は序盤こそスリリングに思えるものの、ただ愛憎劇が繰り返されるだけの単調さは飽きが来るのも早いです。あらすじ都会から旅に出た青年ロックウッドは、「スラッシュクロス」という田舎の屋敷に泊まることにする。近隣にもう一つある屋敷、「嵐が丘」を訪れたロックウッドだったが、そこでの歓迎は非常に手荒いものであり、ロックウッドは困惑する。「スラッシュクロス」に帰ったロックウッドは「嵐が丘」の住人がそうなってしまった理由を屋敷の女中であるエレンから聞かされる。「嵐が丘」に拾われた子供であるヒースクリフと、「スラッシュクロス」のお嬢様であるキャサリンとの歪んだ恋。それは愛し合い、そして憎しみ合った二つの家の、長きにわたる陰惨な物語......。感想非常に高尚で格式高く書かれた昼メロです。富豪の家に拾われたヒースクリフが家庭をズタズタに引き裂き、そして自身をも破滅に導いていくという筋書きは確...
「ぼくらのウォーゲーム!」細田守 評価:3点|情熱と技巧と夏の切なさが詰め込まれたデジモン映画の佳作【アニメ映画】
人気シリーズ「デジモンアドベンチャー」の映画2作目。いまでは著名となった細田監督が指揮した作品です。アニメファンからの高評価を聞いて試聴してみましたが、40分と短い中で冒険アニメの良さを存分に引き出した作品だと感じました。あらすじデジモンたちと別れ、それぞれの生活を楽しむ太一たち。しかし、西暦2000年の春休み、ネット上で生まれた新種デジモンがまたたく間に進化。NTTからアメリカの軍事機関まで、ありとあらゆる場所を侵食していった。このデジモンの暴走を止めるため、パートナーのデジモンたちと一緒に再び戦いへと身を投じる太一たち。あまりにも凶悪なデジモンとの戦いは熾烈を極め、そしてついに、謎の新種ポケモンは核ミサイルを発射させてしまう。ミサイルが着弾されるまでの時間は10分間。太一たちは世界を救うことはできるのだろうか......。感想非常に巧妙で感動的な映画でした。「大量に送られてくる応援の名を借りた迷惑メール」を最後に武器として活かす展開は意外性がありながら少年向けアニメの王道でもあって胸を打たれます。また、空と太一の関係性も絶妙。アニメの趣旨を理解した、恋愛をバトルに持ち込ませないよう...
【音楽の映える青春アニメ】映画「夜明け告げるルーの唄」湯浅政明 評価3点【アニメ映画】
あらすじ舞台は田舎の港町、日無町。主人公のカイは音楽以外にハマるものはなく、無気力な生活を送っていた。そんなある日、動画投稿サイトに自らが打ち込んだ音楽をアップしたことをきっかけに、カイは同級生である遊歩と国夫のバンド「セイレーン」に誘われる。バンドの練習の帰り道、密漁を行う青年二人に襲われかけたところを、カイたちは人魚の少女ルーに助けられる。音楽を通じた交流により打ち解け合っていくカイとルー。町の人々にも好意的の受け入れられていくルーの存在だが、ある日、町おこしのためにルーを使うことが企画され……。悩みを抱える少年少女と小さな人魚の、町を巻き込んだひと夏の物語。感想序盤からこんなにもぐいぐいと引き込まれる映画は久しぶりでした。フラッシュアニメーションによる独特の絵柄がかえってリアル感を増していて、いわゆる「アニメ絵」とは一線を画す表現に生々しさがあります。テンポもたいへん良いものながら展開にも無理がなく、ルーがクーラーボックスを飛び出して砂浜で踊るシーンあたりまでは傑作だと信じて疑いませんでした。しかし、その後はやや冗長。人間の「恐ろしさ」を感じたルーの混乱と、それを助けようと町に乗...
「街の灯」チャールズ・チャップリン 評価:2点|切ないラストシーンが印象的なチャップリンの代表作【コメディ映画】
1931年に発表された映画で、映画好きの間では定番の作品だそうです。チャップリンの代表作の一つということで見てみました。筋書きは面白いのですが、やはり全体的に表現が冗長だと感じます。あらすじチャップリン扮する浮浪者の男は、おふざけばかりの生活で日常を過ごしていた。そんな男はある日、花売りの少女に一目惚れしてしまう。本来ならば見込みがない恋だが、花売りの少女は盲目であり、ひょんなことから男のことを別の大金持ちと取り違えてしまう。貧しい盲目の女性に献身しようと男は身を粉にして働くようになるのだが、男は大富豪の家に入った強盗として逮捕されてしまい.......感想もうちょっと圧縮できるのに、というのが正直な感想です。テンポの良い現代の作品と比べてしまうとかなり冗長に感じてしまいます。各コメディシーンも、当時は斬新だったのかもしれませんが、いまとなってはややグダグダ感があり、一般の視聴には堪えないでしょう。映画好きは細かいところをいろいろ褒めるのかもしれませんが、フィクション作品である以上、気づかれなければ存在しないことと同じです。ただ、ラストシーンはやはりジーンときました。短い「You?」の...
「千年女優」今敏 評価:2点|大女優が歩んだ数奇で大胆な人生の記録【アニメ映画】
「パプリカ」等を手掛け、アニメーション映画界では著名な今敏監督の作品。込み入った手法は面白く、オタク受けする作品であることは間違いないでしょう。しかし、単純なエンターテイメント性には欠けるうえ、人生の深さを描くという純文学的な意味でも曖昧に過ぎ、相当程度オタク的な「解釈」なしに楽しめる作品ではなかった点が残念。テンポの良さや映像美は高品質ですが、テーマや脚本も含めた映画作品としての総合評価としては凡庸な作品だったという印象です。あらすじ真夏の山道を歩くのは映画制作会社社長の立花源也と、カメラマンの井田恭二。彼らは山奥にある藤原千代子の家を訪れようとしているのだった。藤原千代子という女優。既に引退してから長い時間が経っているものの、日本映画界を支えてきた名女優としての名声は計り知れない人物である。インタビューの冒頭、立花は千代子に「鍵」を手渡す。それは千代子が長年大事にしてきた「鍵」であり、千代子の人生に大きな影響をもたらしてきた「鍵」だった。立花から渡された「鍵」をきっかけに、千代子は自分の人生を語りだす。数奇な運命を辿った大女優の人生とは.......。感想ストーリーの入れ子構造や、...
アニメ映画 「もののけ姫」 宮崎駿 星4つ
1. もののけ姫言わずと知れたジブリの名作です。未見だったことを恥じる傑作でした。もののけ姫 posted with カエレバ宮崎駿 ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 2014-07-16Amazon楽天市場
小説 「木を植えた男」ジャン・ジオノ 星1つ
1. 木を植えた男本作を原作としたアニメーション作品に影響を受けて読んでみました。あの素晴らしいアニメーションを見た後だったからか、字面を追うだけではいまいち感動できませんでした。普通の「いい話」だったなぁという印象です。あすなろセレクション 木を植えた男posted with ヨメレバジャン ジオノ あすなろ書房 2015-10-31AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo
【住宅政策の手軽な概説書】新書「住宅政策のどこが問題か」平山洋介 評価:4点【政治学】
目次第1章 住宅所有と社会変化第2章 持ち家社会のグローバル化第3章 住まいの「梯子」第4章 住宅セーフティネット感想あまり注目されない分野である住宅政策に光を当てた新書。住宅政策という個別の政策分野への理解が深まるだけでなく、戦後日本における経済政策の全体的な特徴や、これから日本が進むべき道も見えてくる良書です。第1章では、日本の住宅政策の概要が分析されます。日本の住宅政策の特徴が、就職→結婚→出産(夫が働き妻が専業主婦)という「標準」ライフコースを想定し、そのコースに当てはまる人を優遇していることが述べられます。若年層や新婚世帯向けの公団住宅の供給、住宅ローン減税のような家族の持ち家取得援助などがその具体的な政策です。「標準」ライフコースを辿る人々を小規模賃貸から大規模持ち家へという住宅の「梯子」を上っていく単線コースに誘導する仕組みが整えられてきたわけです。日本全体の所得の伸びとともに、新中間層となった人々がその梯子に殺到していったのが戦後の流れではありますが、そういった「標準」ライフコースを歩めなかった人々が住宅政策から取り残され、住宅確保において不利な立場に置かれ続けているこ...
「紅の豚」宮崎駿 評価:3点|退役軍人パイロットの孤独と勇気と恋愛を描く大人のエンターテイメント作品【スタジオジブリ】
押しも押されぬスタジオジブリの有名作品の一つ。「飛ばねぇ豚はただの豚だ」の名台詞でもお馴染みですね。その内容はまさに「大人の(男性の)ためのエンターテイメント作品」といったところ。敏腕パイロットの誇り。酒場を取り仕切る美女。元気印の技術屋少女。悪役はどこか憎めないハリウッドスター。一瞬たりとも飽きさせない、ベタだけれどそこが良いと言える作品です。あらすじ舞台はイタリア。時代は二つの大戦の戦間期。元イタリア空軍のパイロットであり、現在は豚の姿となっているポルコ・ロッソは空賊を相手に戦う賞金稼ぎとして生計を立てていた。そんなある日、ポルコが打ち負かした空賊たちがドナルド・カーチスというアメリカ人パイロットを雇う。ポルコにやられた借りを返すために雇われたカーチス。彼は整備のためミラノに向かっていたポルコ機を追跡して撃墜してしまう。飛空艇を失ったポルコは昔なじみの工房ピッコロ社を訪れる。そこで出会ったのは、ピッコロの孫娘で17歳のフィオ・ピッコロ。すったもんだの末、ポルコはフィオの設計した機体でカーチスとのリベンジマッチに挑むことになる。男の誇りを賭けた戦い。果たして勝利するのはどちらなのか。...
【社会学】「孤独なボウリング」 ロバート・パットナム 星4つ
1.孤独なボウリング「社会関係資本」という概念に光をあて、様々な分野に影響を与えた本です。著者のパットナム教授はこの本で一躍スター研究者となりました。ご近所づきあいや会合などの社会的紐帯の減少という、誰もが個人としては感じていることを米国全体というスケールで分析し、その原因、そして影響を社会的・政治的なものに結びつけた大著。もはやどの分野でも無視できなくなった「社会関係資本」をアカデミック界に知らしめた作品として、非常に読みごたえがありました。2. 感想本書は5部構成となっており、そのうちメインとなるのは第2部から第4部までです。 第2部では、社会関係資本の濃淡が20世紀のあいだにどのように推移してきたかが膨大なデータとともに語られます。政治参加・市民参加・宗教参加・職場でのつながり・慈善活動・インターネット。わたしたちをとりまくあらゆる「繋がり」が分析の対象となりますが、驚くことに、どの分野を分析しても結論はただ一つに収斂していきます。それはすなはち、米国における「社会関係資本」が、20世紀初頭に増加→大恐慌期に一時的減少→第二次世界大戦~60年代まで増加→十数年の停滞→現在まで続く...
【近未来SF】アニメ 「イヴの時間」 監督:吉浦康裕 星3つ
1.イヴの時間人間とアンドロイドが共存する近未来を舞台にしたアニメで、「アルモニ」を手がけた吉浦康裕さんが監督を務めております。インターネット上のみで配信された作品となっており、全6話で、最終話以外は15分、最終話だけ30分という「テレビ」アニメではあまり見ない構成になっております。そんなマイナーな出所の作品ながら界隈では評価が高く、第9回東京アニメアワード優秀賞OVA部門を受賞し、第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の審査員推薦作品にも選ばれた作品です。その人気の高さから2010年には劇場版も製作され、公式DVD及びBlue-rayも発売されました。Blue-rayの海外版についてはクラウドファンディングが成功し、8か国語の字幕に加え、英語吹替版も製作されるなど、飛躍を果たした作品だといえるでしょう。私としても、「アンドロイドたちが人間の心を理解しようと葛藤する」というなかなか珍しい切り口に感心し、また、その切なく柔らかい物語に感動した次第です。 2. あらすじロボットが実用化されて久しく、アンドロイドが実用化されて間もない時代。アンドロイドは生活に浸透しつつあるものの、一...
アニメ映画 「木を植えた男」 監督:フレデリック・バック 星4つ
1. 木を植えた男フレデリック・バック監督によって同名の小説を映像化した作品。1987年のアカデミー短編アニメ賞受賞作でもあります。木を植えた男/フレデリック・バック作品集 posted with カエレバフレデリック・バック ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 2011-07-20Amazon楽天市場
小説 「アリソン」 時雨沢恵一 星3つ
第1巻1-1.アリソン「キノの旅」シリーズで有名な時雨沢恵一さんの作品で、後続のシリーズ作品群と合わせて「一つの大陸の物語シリーズ」と呼ばれています。戦闘機が出始めごろの時代における架空の大陸を舞台に、孤児院育ちの青年男女が国を跨いで活躍する冒険活劇、というなかなか珍しいジャンル。「剣と魔法」ならぬ「銃と戦闘機のファンタジー」という形容が相応しいかもしれません。深い感動、というわけにはいきませんでしたが、ライトノベルというよりは往年の児童向けファンタジーを思い起こさせるポップな文体でスラスラ読むことができました。