【古典純文学】おすすめ古典純文学小説ランキングベスト9【オールタイムベスト】
☆☆☆(教養書)
「死ぬ瞬間の5つの後悔」ブロニー・ウェア 評価:3点|「もっとお金を儲ければよかった」という人はいない【生き方】
介護人として数多くの人物を看取ってきた著者がそれぞれの人物の最期に焦点を当て、彼ら/彼女らが死の直前にどのようなことを後悔していたのかを綴った著作になります。元々出版を予定していた本ではなく、著者のブログが世界的に読まれるようになり、その結果として出版に至ったという「草の根」の支持から生まれた本です。この手の本によくある、文字がやたらに大きくて行と行のあいだも極端に広く、見開き2ページごとにサブタイトルが一つという形式の本かなという先入観をもって購入したのですが、意外なことに、字がびっしりと詰まった読み応えのある本でした。著者に介護を受けた人々が、人生の最終盤に何を想い、著者とともにどのような行動を起こしたのか。人生でやりすぎてしまうこと、人生でやり残してしまうことの典型が淡々と語られる著作であり、ノンフィクション作品としての切ない魅力と、残りの人生をどう生きるかについて考えさせられる洞察を持った作品になっております。目次後悔一 自分に正直な人生を生きればよかった後悔二 働きすぎなければよかった後悔三 思い切って自分の気持ちを伝えればよかった後悔四 友人と連絡を取り続ければよかった後悔...
「教養としての大学受験国語」石原千秋 評価:3点|論説文から読み解く近現代社会【国文学教養書】
2000年に筑摩書房から発売された新書で、著者は早稲田大学教授の石原千秋氏。「この本は、大学受験国語の参考書の形をとった教養書である」本書冒頭の言葉であり、本書の性質をよく表現した文章となっている。テーマごとに2つずつの論説文の過去問が紹介され、著者が解説しながら解いていくという形式で本書は進行していくという構成。精選された論説文と、その解説の中で表現される「近現代社会というものを国文学者たちはどのように考えているのか」という思考枠組みが本書の核心となっている点が面白いところ。つまり、近現代社会を分析する視点がなければ大学受験国語を解くことはできないため、大学受験国語の参考書は必然的に近現代社会分析の解説になる、というわけである。本記事では本書の教養書としての側面を重視し、紹介されている論説文の中から印象に残ったものを取り上げて感想を述べていく。目次序章 たった一つの方法第一章 世界を覆うシステムー近代第二章 あれかこれかー二元論第三章 視線の戯れー自己第四章 鑑だけが知っているー身体第五章 彼らには自分の顔が見えないー大衆第六章 その価値は誰が決めるのかー情報第七章 引き裂かれた言葉...
【最優先事項以外は不要】教養書「エッセンシャル思考」グレッグ・マキューン 評価:3点【自己啓発】
シリコンバレーでコンサルティング会社を営むグレッグ・マキューン氏の著書。2014年の発売(邦訳版)ながらながらいまだに増刷が続くロングセラーとなっております。非常に有名な書籍ですので、ビジネス書や自己啓発本に興味がある方ならば一度くらいは耳にしたことがあるタイトルなのではないでしょうか。そんなタイトルに違わず、本当に重要なこと、エッセンシャルな事柄に人生の時間を使えという内容となっております。そう表現いたしますと、凡庸な本なのでは、と思われるかもしれませんが、多種多様な事例と軽妙で説得的な語り口、さらに、いかにして「エッセンシャル思考」を実行していくかという具体的な思考法が記述されている点に本書の妙味があります。手軽に読めるうえ、文字通りエッセンスが凝縮された本になっておりますので、「エッセンシャルな事柄に人生の時間を使う」ためには具体的どのような思考・行動をするべきなのかという視点を得るために読んでみる価値があるのはもちろん、「大事なことだけに集中する」「些末なことを切り捨てる」という大胆な生き方が重要だと頭では分かっているけれど、心では躊躇いを感じている、そんな人が読むと背中を押し...
「ブルシット・ジョブ」デヴィッド・クレーバー 評価:3点|無意味な仕事ばかりが増大していく背景を社会学的に分析 【社会学】
イェール大学准教授やロンドン大学教授を歴任した社会人類学者、デヴィッド・グレーバー氏の著書。社会人類学者としてはもちろん左派アナキストの活動家としても知られている人物であり、“Occupy Wall Street ”[ウォール街を占拠せよ](※)運動でも主導的な役割を果たしたことで一躍有名になりました。※リーマンショックの直後、金融機関の救済にのみ奔走し、若者の高い失業率等に対して有効な対策を打てなかったアメリカ政府に対する抗議運動。本書の他にも「負債論──貨幣と暴力の5000年」や「官僚制のユートピア──テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則」といった著作があり、刺激的な理論を通じてアカデミズムと現実社会を積極的に繋ごうとしていた学者でもあります。そんなグレーバー教授が2018年に著したのが、本作「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」。原題は“Bullshit Jobs”のみですが、邦題では「クソどうでもいい仕事の理論」という副題が付されています。さて、この「クソどうでもいい仕事」ですが、事務職の労働者であれば誰もがピンとくる一節なのではないでしょうか。あまりにも...
「幸福論」バートランド・ラッセル 評価:3点|様々な自己啓発本の種本になっている「幸福」についての古典的佳作【生き方】
数学、論理学、哲学、そして文学の世界で多大な功績を残したイギリスの学者、バートランド・ラッセルの著作。1950年のノーベル文学賞を受賞するほどの文筆家であったラッセルが著す「幸福論」は、ヒルティ及びアランの「幸福論」と並ぶ三大幸福論の一つとして知られています。その内容は、この「幸福論」こそが様々な自己啓発論の源流になっているのだなと思わせられるものでした。目新しくはないものの、現代でも様々な本で言及される「人生を幸福に生きるコツ」の最大公約数が網羅されており、やや難解な英文翻訳調の文章に対して抵抗がなければ、安っぽい自己啓発書を読むよりも本書を一読する方が良いと思われます。また、賢者の誉れ高いラッセルらしく、自己啓発の域を超えた社会論的な側面も記述されています。ラッセルという賢人が世の中をどのように見ていたのか、世の中がどのように変化していくと考えていたのかという思索を覗き見られるという利点も備えた作品になっております。目次・第1部 不幸の原因第1章 何が人びとを不幸にするのか第2章 バイロン風の不幸第3章 競争第4章 退屈と興奮第5章 疲れ第6章 ねたみ第7章 罪の意識第8章 被害妄...
【物語 フランス革命】フランス革命時代の主要な出来事を手軽に概観できる新書 評価:3点【安達正勝】
有名事件のあらましや活躍した著名人のエピソードを中心として、フランス革命の経過を「物語」風に語っていく著作。中公新書から出版されている本ですが、学術的な知識や思考を大衆に伝えるための本というよりは、世界史の教科書やwikipediaを詳しくしたような内容になっております。私もフランス革命の知識は高校の世界史止まりであり、「バスチーユ」や「ジャコバン派」、「ロベスピエール」といった穴埋め問題を解くレベルの断片的な文言だけが頭の中にある状態でしたが、本書を読むことで、フランス革命という出来事全体が「物語」として頭の中で繋がっていく感覚を得ることができました。目次序章 フランス革命とは第1章 「古き良き革命」の時代第2章 革命的動乱の時代へ第3章 国王の死第4章 ジャコバン政府の時代第5章 恐怖政治ー革命政府の暗黒面第6章 ナポレオンの登場感想ルイ16世の治世下で始まった財政改革が民衆の怒りに火をつけ、最後は王政を打倒するにまで至ったフランス革命。バスチーユ牢獄襲撃の成功によって深まる大衆の自信、ヴァレンヌ逃亡事件による国王権威の失墜、激化する議会での主導権争いにジロンド派が敗れ、ジャコバン...
教養書 「コラプション なぜ汚職は起こるのか」 レイ・フィスマン他 星3つ
1. コラプション なぜ汚職は起こるのかボストン大学の経済学者レイ・フィスマン教授とカリフォルニア大学の政治学者ミリアム・A・ゴールデン教授による「汚職」についての共著。二人とも異なるアプローチから「汚職」を研究してきたこの道の大家であり、それでいて本書は一般向け(といっても「汚職」の普遍的構造に関心を持つ「一般」向けですが)の著作になっております。学術書ではないことから事例中心の記述となっておりますが、個々の汚職を個人の道徳的資質の問題として矮小化するのではなく、様々な汚職の事例を「均衡」という思考枠組みの中で捉え、学術的な視点から論じていくのはまさに本格派といったところ。度肝を抜かれる面白さとまではいきませんでしたが、この分野に興味がある方にとって知的な興奮をもたらしながらも肩の力を抜いて読める本だといえるでしょう。2. 目次第1章 はじめに第2章 汚職とは何だろう?第3章 汚職がいちばんひどいのはどこだろう?第4章 汚職はどんな影響をもたらすの?第5章 だれがなぜ汚職をするのだろうか?第6章 汚職の文化的基盤とは?第7章 政治制度が汚職に与える影響は?第8章 国はどうやって高汚職...
「戦争の世界史 下巻」ウィリアム・H・マクニール 評価:3点|戦争と軍需産業と政府部門の関係から読み解く世界史【歴史本】
たった一人で通史を描き出した「世界史」という本で有名なマクニール教授が、今度は「戦争」という観点から世界史を描き出した本作。「その2」から続いて下巻の内容を紹介していきます。「戦争の産業化」が始まる1840年代から、「国家総力戦体制」での戦争となる第一次及び第二次世界大戦まで、いよいよ舞台は近代戦争へと移っていきます。・前編「上巻 その2」はこちら。目次・上巻第1章 古代および中世初期の戦争と社会第2章 中国優位の時代 1000~1500年第3章 ヨーロッパにおける戦争というビジネス 1000~1600年第4章 ヨーロッパの戦争のアートの進歩 1600~1750年第5章 ヨーロッパにおける官僚化した暴力は試練のときを迎える 1700~1789年第6章 フランス政治革命とイギリス産業革命が軍事におよぼした影響 1789~1840年・下巻第7章 戦争の産業化の始まり 1840~1884年第8章 軍事・産業間の相互作用の強化 1884~1914年第9章 二十世紀の二つの世界大戦第10章 一九四五年以降の軍備競争と指令経済の時代第7章 戦争の産業化の始まり 1840~1884年第7章では、蒸気...
教養書 「戦争の世界史」その2 ウィリアム・H・マクニール 星3つ
1. 戦争の世界史 その2たった一人で通史を描き出した「世界史」という本で有名なマクニール教授が、今度は「戦争」という観点から世界史を描き出した本作。「その1」から続いてレビューしていきます。2. 目次・上巻第1章 古代および中世初期の戦争と社会第2章 中国優位の時代 1000~1500年第3章 ヨーロッパにおける戦争というビジネス 1000~1600年第4章 ヨーロッパの戦争のアートの進歩 1600~1750年第5章 ヨーロッパにおける官僚化した暴力は試練のときを迎える 1700~1789年第6章 フランス政治革命とイギリス産業革命が軍事におよぼした影響 1789~1840年・下巻第7章 戦争の産業化の始まり 1840~1884年第8章 軍事・産業間の相互作用の強化 1884~1914年第9章 二十世紀の二つの世界大戦第10章 一九四五年以降の軍備競争と指令経済の時代3. 概要第四章では、1600~1750年のあいだに進行したヨーロッパ軍隊の劇的な質的変容が語られます。イタリア諸都市が市民皆兵から傭兵にその軍備の中心を移行して以降、ヨーロッパでは傭兵が戦力の中心になっていきます。やが...
教養書 「戦争の世界史」その1 ウィリアム・H・マクニール 星3つ
1. 戦争の世界史 その1古来から、人類社会と切っても切り離せない関係にあった「戦争」という営み。本書のサブタイトルである「技術と軍隊と社会」という言葉の通り、「戦争」は人類の生活に絶え間なく影響を与え続け、いまなお私たちの生活と切っても切り離せない関係にあると言えるでしょう。レトルト食品からインターネットまで軍事技術から生まれた製品は数知れず、また、「軍隊式」と呼ばれるような行動様式や規律保持方法は会社や学校と行った私たちの暮らしの中心となる場所に多かれ少なかれ浸透しています。軍隊の階級こそ戦後日本の企業体や雇用方式の源流になったという考え方は、「日本社会のしくみ」でも紹介されておりました。経済という意味でも、防衛関連産業は世界各国において主力産業となっていますし、より時間を戻せば、社会経済の全てが戦争に動員されていた時期だってあるわけです。そもそも、現存する国家(諸集団・諸社会)というものは必ず、これまでの「戦争」を生き残り滅亡を免れてきたわけですから、その歴史や特徴を考えるとき「戦争」という切り口が有効なのは火を見るより明らかでしょう。そんなわけで、本書「戦争の世界史」はタイト...
教養書 「市民政府論」 ジョン・ロック 星3つ
1. 市民政府論日本国憲法が基本的人権の擁護を柱としていること、政府が存在し様々な活動を通じて国民生活を支えていること。これらは中学校の社会の教科書に載っている内容ではありますが、このような言説の中では基本的人権の存在や政府の存在が自明になっており、なぜ、基本的人権は存在する(べきな)のか、なぜ(民主的な)政府が存在する(べきな)のかといったことはなかなか語られません。こういった発想は優等生的ではないのかもしれませんが、なぜ基本的人権や民主的な政府の存在が自明に良いとされているのか、疑問に思ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。本書「市民政府論」はそんな疑問に答える著作の一つとなっております。基本的人権や民主的な政府が当たり前ではなかった時代、その存在を論理的に正当化しようとした人々がおりまして、その代表格の一人が本書の著者であるジョン・ロックになります。なお、「市民政府論」はロックの著作である「統治二論」のうち後編にあたります。現在は岩波文庫から前後編が収録された新訳が出版されておりますので、そちらを手に取るのがいいかもしれません。2. 感想冒頭に述べた通り、「市民政府...
【税制】新書 「日本の税金 第3版」 三木義一 星3つ
1. 日本の税金2019年10月1日から消費税が10%に引き上げられ、軽減税率も同時に導入されました。最近ではレジで持ち帰りだと宣言して軽減税率の恩恵を受けながら、実際にはイートインスペースで店内飲食する「イートイン脱税」が問題になるなど、前途多難の様相です。もちろん、「イートイン脱税」は悪いことですが、「制度設計が人々の行動に及ぼす影響」としては典型的で実感しやすい例にもなっておりまして、これを機に政治・政策分野における「制度設計」の対してもっと関心が集まって欲しいと思うところであります。さて、上述のようにわたしたちの生活に多大な影響を与える「税金」ですが、こういった個別の問題から派生して、そもそも、いったいどのような税金が日本には存在しているのか、そして、それらはどのような制度設計が為されていて、その制度設計はどのような理念に基づくものなのか、ということに興味が湧いてきました。そこで、今回読んでみたのが本書となっております。2003年に初版が発行され、2018年に第3版が発行されているロングセラー。帯には「定番の入門書」と太字で書いてありましたが、まさにその通りなのでしょう。著者は...
教養書 「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと」 シド・フィールド 星3つ
1. 映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと映画脚本の書き方を定式化し、今日においてもその理論は色褪せるどころか「三幕構成」として多くの創作家たちに受け入れられている脚本家、シド・フィールドの著書。映画脚本の指南書として書かれ、著者自身もそのつもりだったものの、映画に関わらず広い意味での物語創作術の古典として知られています。内容はなかなか面白かったですね。言われてみれば当然だけれど確かにそれをやるのとしないのとでは違うだろうなぁという脚本づくりの基礎が述べられており、そもそも脚本の中の要素(主題・登場人物・ストーリーライン)がどうやって生まれてくるのか、それらをどのようなフレームワークに収めればよいのかが書かれています。やや繰り返しが多くて文章が散漫、また、具体例として言及する映画が偏っているという点に難を感じましたが、読後は物語を見る目が少し変わるかもしれません。2. 目次第1章 映画脚本とはなにか第2章 主題(テーマ)を作る第3章 登場人物(キャラクター)を創造する第4章 登場人物(キャラクター)を構築する 第5章 ストーリーと人物設定 第6章 エンディングとオープニングを...