小説作家名「あ」行

安部公房

小説 「他人の顔」 安部公房 星2つ

1. 他人の顔 ノーベル文学賞の有力候補だったと言われているほか、芥川賞、谷崎潤一郎賞、さらにはフランス最優秀外国文学賞を受賞するなど、国内外で評価が高かった小説家、安部公房の作品。「砂の女」「燃え尽きた地図」と並んで「失踪三部作」の一つに位置付けられています。「砂の女」は本ブログでもレビュー済み。名作です。 圧倒的感動に打ちのめされるという経験をさせてくれた「砂の女」と同系列の作品という評価に期待を寄せて読んだ本作。悪くはありませんでしたが、その高い期待に応えてくれたわけではありませんでした。 「砂の女」と同様、都市化・資本主義化していく社会の中で人々の自己認識や他者との関わり方が変化していくというテーマそのものは面白かったのですが、「砂の女」が見せてくれたような冒険的スリルやあっと驚く終盤のどんでん返しがなく、主人公の思弁的で哲学的なモノローグがあまりにも多すぎたという印象。もう少し「物語」としての起伏や展開による面白さがあれば良かったのにと思わされました。 2. あらすじ 主人公の「ぼく」は高分子化学研究所の所長代理として研究に...
☆☆(小説)

小説 「都市と星」 アーサー・C・クラーク 星2つ

1. 都市と星 「2001年宇宙の旅」や「幼年期の終わり」で知られるSFの巨匠、アーサー・C・クラークの作品。1956年に出版された作品ですが、2009年に新訳版が出るなどいまでも根強い人気を誇っております。 そんな本作、SFの人気作品というだけあってSF的な設定や世界観は魅力的で面白いと感じましたが、肝心のストーリーがやや冗長で起伏に欠けていると思いました。序盤では閉じられた世界から新しい世界に主人公が踏み込むまでが長すぎ、終盤では主人公が宇宙に旅立ってその現況を眺めるという展開にしてしまったことで風呂敷が広がり過ぎて展開が拙速かつ大味になっています。 2. あらすじ 物語の舞台は遥か未来の地球。ダイアスパーという都市では人間生活の全てをコンピュータが管理しており、生誕や死さえもその例外ではない。人間のデータは全て「メモリーバンク」に記録されており、人間は両親の身体からではなく「メモリーバンク」から生まれ、そして死にたくなったときには再び「メモリーバンク」へと還り、時間をおいて新しい肉体を得て生まれ変わるというサイクルを繰り返していた。人間の一生は主...
青木祐子

小説 「これは経費で落ちません ~経理部の森若さん~」 青木祐子 星1つ

1. これは経費で落ちません いわゆる「ライト文芸」や「キャラ文芸」と呼ばれるジャンルの作品で、「働く女性(都市部の事務員)」が主人公と、流行りの要素を詰め込んだ作品。シリーズは現在(2019年9月)時点で6巻まで刊行されており、累計70万部突破と出版不況の中で気を吐く人気作品です。NHKでドラマ化もされており、2019年7月から放送されています。 しかしながら、私個人としてはあまり楽しめませんでした。いかにもフィクションな「キャラクター」で埋め尽くされる現実感のない職場が舞台で、「経理部」や「経費」という表題の要素もおまけ程度で掘り下げられることもなく、いわゆる「日常の謎」をさらに薄めたような、起伏も何もあったもんじゃない程度の出来事ばかりで物語は進行します。リアリティがないのに日常ものという長所が見出しづらい作品で、なぜヒットしているのか理解しがたいというのが正直な感想です。 2. あらすじ 主人公、 森若沙名子(もりわか さなこ)は 20代後半 。「天天コーポレーション」の経理部に勤めている。部長を含め4人の経理部の中では3番目の年次だが、その的...
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☆(小説)

小説 「砂の城」 遠藤周作 星1つ

1. 砂の城 「海と毒薬」や「沈黙」で有名な、戦後日本文学を代表する作家の一人、遠藤周作の作品。解説でも「軽小説である」と言及されている通り、遠藤周作の名声を押し上げた文学作品たちとは一線を画す、すらすらと呼んでいける青春小説です。 このように紹介するのも、多分に時代性のある大衆文学過ぎまして現代の小説として通用するとは言い難く、小説の構成上も難ありと思った次第。やはり遠藤周作は重厚な文学作品でこそ本領を発揮するのでしょう。 砂の城 (新潮文庫 (え-1-12)) posted with ヨメレバ 遠藤 周作 新潮社 1979-12-27 Amazon Kindle 楽天ブックス
日日日

小説 「ゆめにっき」 日日日 星1つ

1. ゆめにっき 2004年に公開された知る人ぞ知るフリーゲーム、「ゆめにっき」のノベライズ版です。 原作はネット上で無料公開されており、いまでも遊ぶことができます。また、小説版である本作をはじめメディアミックスも盛んであり、漫画版やイメージ音楽、各種グッズも販売されているほか、最近では原作リメイクのゲームも発売されたようです。 私も原作ファンであり、個人開発のフリーゲームながら根強い人気があるのは嬉しいのですが、この小説版に限っては残念だというのが正直な感想です。あの「ゆめにっき」が誇る、他の娯楽作品にない特徴をあまりにも簡単に捨て去ってしまっています。 ゆめにっき (VG文庫) posted with ヨメレバ 日日日 PHP研究所 2015-11-05 Amazon Kindle 楽天ブックス 楽天kobo
小川洋子

小説 「猫を抱いて象と泳ぐ」 小川洋子 星2つ

1. 猫を抱いて象と泳ぐ 不思議な世界観と優しく繊細な文体で人気を博す純文学作家、小川洋子さんの作品。小川さんの個性が前面に押し出されており、ファンの間で評価が高いことも頷けます。 しかし、そこが却って普遍性を損なっているような、万民への説得力に欠けているような作品だったと思います。 2. あらすじ 生まれつき唇の上下がくっついていたために、手術により切開し、脛の皮膚を唇に移植した少年。そのため、少年の唇には成長と共に産毛が生えてくるようになってきていた。 学校にも上手く馴染めない少年を惹きつけたのはチェスという競技。廃バスの中で生活するマスターにチェスを教わり、少年はぐんぐんと腕前を上げていく。 そんな少年を変えたのはマスターの死だった。肥満しきった不健康な身体でバスの中を狭苦しそうに生活していたマスター。それは、少年が幼少期に出会ったインディラという象を思い出させる。デパートの屋上で見世物となっていたインディラは成長とともに身体が大きくなり、デパートの屋上から降ろすことができなくなってしまっていたのだ。 少年は「大きくなること」に絶望し、身体の成長を止め...
☆☆(小説)

小説 「万延元年のフットボール」 大江健三郎 星2つ

1. 万延元年のフットボール ノーベル文学賞作家、大江健三郎の代表作として挙げられることが多い作品。同賞を受賞したきっかけになった作品とも言われています。 文体や比喩表現、人物造形は独特で、確かに意味深長な文学作品ではあるのでしょう。しかし、表面上の物語、目に見える物語があまりにも面白くなさすぎます。 万延元年のフットボール (講談社文芸文庫) posted with ヨメレバ 大江 健三郎 講談社 1988-04-04 Amazon Kindle 楽天ブックス 楽天kobo
☆☆(小説)

小説 「嵐が丘」 エミリー・ブロンテ 星2つ

1. 嵐が丘 英国の著名な作家、ブロンテ三姉妹の二番目、エミリー・ブロンテの小説です。サマセット・モームの「世界の十大小説」にも選ばれる歴史的名作だそうです。 とはいえ、大いに楽しめたかと言われればそうではありません。二つの家系の愛憎劇は序盤こそスリリングに思えるものの、ただ愛憎劇が繰り返されるだけの単調さは飽きが来るのも早いです。 嵐が丘(上) (岩波文庫) posted with ヨメレバ エミリー・ブロンテ 岩波書店 2004-02-17 Amazon Kindle 楽天ブックス 楽天kobo
☆☆☆(小説)

小説 「O・ヘンリ短編集(三)」 O・ヘンリ 星3つ

1. O・ヘンリ短編集(三) ウィットに富んだ物語で読者をひきつけるアメリカの作家、O・ヘンリの作品集その3です。その2の感想はこちら。 前2巻に比べるとやや威力は落ちるものの、それでも作品から漂う風格と哀愁にはただならぬものがあります。 O・ヘンリ短編集 (3) (新潮文庫) posted with ヨメレバ O・ヘンリ 新潮社 1969-04-14 Amazon Kindle
☆☆☆(小説)

小説 「O・ヘンリ短編集(二)」 O・ヘンリ 星3つ

1. O・ヘンリ短編集(二) 著名なアメリカの短編作家、O・ヘンリの作品集その2です。その1の感想はこちら。 温かく切ない作風は相変わらず良いものです。特にこの(二)には彼の最高傑作である「賢者の贈り物」が収録されており、それだけでも読む価値があります。 二十世紀初頭のアメリカを旅する気分にさせてくれる小説です。 O・ヘンリ短編集 (2) (新潮文庫) posted with ヨメレバ O・ヘンリ 新潮社 1969-03-07 Amazon Kindle  
☆☆(小説)

小説 「桐島、部活やめるってよ」 星2つ 朝井リョウ

1. 桐島、部活やめるってよ 新進気鋭の若手小説家、朝井リョウさんのデビュー作です。 今時の若者の心理を生々しくかつ繊細に描いた作品として話題になり、 また、その印象的なタイトルは多くのパロディを生み出しました。実写映画もされ、日本アカデミー賞の最優秀作品賞に選ばれるなど好評を博しています。 前評判通り、スクールカーストの描き方と「桐島が出てこない」という構造の巧さには心打たれましたが、ややストーリー性に欠け、同時代性を意識するあまり普遍性を犠牲にし過ぎた側面があると思われました。 桐島、部活やめるってよ (集英社文庫) posted with ヨメレバ 朝井 リョウ 集英社 2012-04-20 Amazon Kindle 楽天ブックス 楽天kobo
☆☆☆(小説)

小説 「O・ヘンリ短編集(一)」 O・ヘンリ 星3つ

1. O・ヘンリ短編集(一) 19世紀に活躍した短編の名手、O・ヘンリの作品集です。 アメリカの都会に生きる人々の哀愁と情緒あふれる生活がシニカルさと人情味をもって描かれている、そんな作品たちでした。 O・ヘンリ短編集 (1) (新潮文庫) posted with ヨメレバ O・ヘンリ 新潮社 1969-03-07 Amazon Kindle  
☆☆☆(小説)

小説 「六番目の小夜子」 恩田陸 星3つ

1. 六番目の小夜子 第3回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となり、恩田陸さんのデビュー作となった本作。 学園小説の名手である恩田陸さんの原点というべき作品です。 「明るくハッピーな話」「後味の悪い背徳的な話」「悲しく切ない話」。近年の小説はそういった小説そのものの「キャラ付け」が求められています。 しかし、そのどれにも属さず、しかし、心に訴えかけるものがある。小説の「テンプレ化」が進む時代の直前に書かれた名作です。 六番目の小夜子 (新潮文庫) posted with ヨメレバ 恩田 陸 新潮社 2001-01-30 Amazon Kindle 楽天ブックス 楽天kobo
☆☆(小説)

小説 「ネバーランド」 恩田陸 星2つ

1. ネバーランド 「夜のピクニック」で第2回本屋大賞を受賞し、それ以外にも数々の名作がある恩田陸さんの作品。 「夜のピクニック」同様、高校生の濃密な青春を描いた本作ですが、独特の暗さと明るさが共存した作風を楽しむことはできました。 ただ、やや現実感を無視した、かつテンプレートな設定が食傷気味ではあります。 ネバーランド (集英社文庫) posted with ヨメレバ 恩田 陸 集英社 2003-05-20 Amazon Kindle 楽天ブックス 楽天kobo
☆☆(小説)

小説 「光の帝国 常野物語」 恩田陸 星2つ

1. 光の帝国 常野物語 多くの人気作を世に送り出してきた恩田陸さん。彼女の初期の作品で、伝承のような雰囲気を持つ落ち着いたファンタジーです。 ややホラー気味の不思議な話を独特の語りで書くという恩田さんの十八番。それを体現した作品ではあり、一つ一つの発想は面白いと思うのですが、やや散漫な印象も受けた作品であります。 光の帝国―常野物語 (集英社文庫) posted with ヨメレバ 恩田 陸 集英社 2000-09-01 Amazon Kindle 楽天ブックス 楽天kobo
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