教養書 「岩波講座 日本経済の歴史 1中世」 中林真幸他 星3つ

岩波講座 日本経済の歴史 1中世
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1. 岩波講座 日本経済の歴史 1中世

定評ある叢書シリーズの一つ、岩波講座の新しいシリーズです。中世以降の日本経済の歩みが最新の知見をふんだんに盛り込んで紹介されています。

中世はあまり関心のある分野ではなかったのですが、それでも興味深い事象を多く知ることができました。

2. 目次

本書の目次は以下の通り

序章
・第1節 成長とマクロ経済
・第2節 政府の役割
・第3節 所得と資産の分配

第1章 人口の都市化と就業構造
・第1節 問題の所在
・第2節 人口史における中世
・第3節 都市の発展
・第4節 就業構造の変化
・第5節 17世紀へ

第2章 鋳造の自由と金融の自由
・第1節 中世貨幣
・第2節 中世の金融

第3章 農民の定住化と土地の証券化
・第1節 中世の農業構造
・第2節 中世における不動産価格の決定構造
・第3節 15~16世紀における土地売買の保証

第4章 中世の諸産業
・第1節 醸造業
・第2節 製紙業
・第3節 繊維業
・第4節 鉱業
・第5節 鉄砲・弾薬業
・第6節 近世への展望

第5章 中世の交易
・第1節 中世社会構造の性質
・第2節 貿易の諸相
・第3節 国内商業の展開
・第4節 交易の場と商品
・第5節 近世都市へ

3. 感想

全節の感想を書いていてはそれこそ日本経済の歴史を網羅してしまいますので、印象に残ったことを中心に書いていきたいと思います。

一つ目は荘園における管理体制。農業生産力が未発達の段階では、荘園の所有者が直接農民を使役して年貢を取り立てますが、段々と生産力が上がってくると、中間に代理人のような階層が現れ、徴税体制が重層化していきます。経済が発展すればするほど一つのビジネスや会社の中でも階層化が生まれる。当たり前といえば当たり前なのですが、それが荘園でも見られたというところに経済原理の普遍性を感じます。

二つ目は貨幣鋳造の歴史。江戸時代に寛永通宝が流通し始めるまで、中華王朝の貨幣が主に流通していたということは驚きでした。また、西日本と東日本で主として流通している貨幣が異なり、西は宋銭、東は明銭だったことなど、経済が分断されていたことは興味深かったです。東西を行き来する商人の工夫や、その統一の過程なども書かれています。

三つ目は金融と農民の暮らしです。中世は金融が盛んであり、農民は農閑期に借りて農繁期(収穫期)にお金を返すことで一年の収支の安定化を図っていたそうです。そして、不作などで借金が返せなくなると徳政一揆を起こし、権力者がこれに応じて徳政令を発する。この一連の流れが経済の大きな循環になっていたというのは意外でした。それにしても、借金の返済に人身売買が盛んに行なわれていた、というのはいかにも中世です。

他にも面白い点は多くありましたが、やはり上述のように直感を覆すような事実の個人的発見こそこういった本を読む成果として楽しめることでしょう。

歴史を叙述するだけの本に星4以上の面白さとはなりませんが、次巻が楽しみなシリーズです。

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