「戦争と平和」「アンナ・カレーリナ」等の作品で有名なロシアの文豪トルストイが著した寓話。
富を求めることや暴力による解決に疑義を呈し、素朴な信仰に基づく生活がよいという直截なメッセージが印象的な作品です。
しかし、物語の内容があまりにも単純な勧善懲悪に過ぎ、もうすこし工夫がないと楽しみようがないと思ってしまう作品でした。
あらすじ
とある国のとある場所には、軍人の長男セミョーン、商人の次男タラース、ばかの三男イワン、啞の妹マルタがいた。
ある日、悪魔が遣わした二匹の小悪魔のために、セミョーンとタラースは軍隊と財産を失い、イワンのもとへ身を寄せることになった。
一方、イワンに遣わされた小悪魔は、腹痛中でも農作業を続けるイワンの真面目さに太刀打ちできずたイワンを不幸にしてしまう目論見が破綻。
それどころか、三匹の悪魔はイワンの純真さのために捕らえられ、イワンに贈り物をして消えていく。
兄たちはイワンにその贈り物を使って軍隊や財産をつくるように要求し、そのおかげで王様となる。
しかし、イワンだけは農民として朴訥とした生活を送るのだった。
やがて、イワンたちが住む国の王女が病気だという噂が立ち......。
感想
純朴で底抜けの優しさと素直さを持つイワンが、その純粋さゆえに欲深い兄たちよりも最終的には豊かな生活を送るようになる。
それでも、彼は真面目な勤労者であることをやめない。
そういった内容の寓話です。
しかし、テーマ性は崇高なのですが、物語としてはイマイチであることが否めません。
悪魔の設定は雑ですし、展開も唐突なものばかり。
トルストイという作者自身は深い思想を持っているのかもしれませんが、こんな脚本で物語を展開していては、その百分の一も伝わらないでしょう。
ただ、ロシアの民話はこんな感じなんだなぁということが理解できるという点には見どころがあるかもしれません。
勧善懲悪、真面目礼賛の民話はどの国にもありますが、舞台装置として信仰や悪魔が出てくるのは正教の国であるロシアらしさがあります。
トルストイがとても好き、あるいはロシアの文化に民話から触れたいという人にだけはオススメできます。
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