他にも、自分以外のVtuberへの丁寧な姿勢や、いつだって視聴者の前では所属企業を擁護するサラリーマン精神(個人事業主ですが、だからこそ仁義を切る精神が垣間見えます)、様々な場面やエピソードから醸し出されるお人よしさ。
誠実キャラでもクズキャラでもない位置にいて、このような「キャラではない真摯な態度」をさらっとやってのけつつ、それでいて最高の「おふさけ」を供給しようとする。
これが「トッププロ」でなくて何なのでしょうか。
彼女の姿からはどこか、「かつてのインターネット」に数多く存在した、馬鹿みたいなエンタメを創作し、それを無料で公開するにもかかわらず自己顕示欲の塊ではなく、それどころかどこまでも大人で度量が広く、創作へのひたむきな想いと他者(自分と意見が違う人たちや非インターネット世界を軸に活動している人たちも含む)に対する真摯な態度と敬意を持っていた栄光なき名クリエイターたちを思い起こされます。
「変なことをしているからカッコいい」。
それは中学二年生の態度に過ぎません。
変なことをしているんだけどカッコいい人。
変なことの中で、かっこよさ、誠実さ、他者に対する敬意を出す難しさに挑戦している人。
それこそが「まっとうな変人」の態度なんだと教えてくれた「かつてのインターネット」の世界観。
そんなレベルのことさえ月ノ美兎は体現してくれている気がします。
第二の魅力は、彼女の労働者/社会人としての「にじさんじ」における経歴にあります。
「にじさんじ」古参の方々にとっては、こちらの魅力を「知っている」ことが密かな誇りになっているのではないでしょうか。
月ノ美兎をはじめとした初期メンバーでさえ絶対に上手くいかないと思っていた「にじさんじ」プロジェクト。
慣れない配信や希望が見えない中で精神を擦り減らしていくライバー達。
月ノ美兎、樋口楓、静凛のいわゆる「JK組」を中心とした支え合い。
月ノ美兎の配信の中でも、当時は「いちから株式会社」が本当につぶれると思っていたことが言及されており(当時はスタッフが3名だったそうです)、また、注目を一気に浴び始めた月ノ美兎自身も病院に通うほど咳が止まらなくなるなど身体に異常をきたしまま配信活動を行っていて、2018年の夏前あたりでは親友であり同僚である樋口楓と引退配信の企画を固めていたほど(この樋口楓も体調不良や家族との揉め事で精神的につらい時期を過ごしていたことが樋口楓の配信でも語られています)だったそうです。
詳しい話は省略しますが、月ノ美兎はまさに、事実上、潰れかけのベンチャー企業の営業隊長として奮闘し、経営を軌道に乗せるための絶対的キーパーソンとしてその役割を見事に果たし、いまでもその最前線で戦っている人物なのです。
彼女の配信から察するに、アルバイトやインターンを除けばこの「にじさんじ」での活動が彼女の社会人デビューとなっています。
そう考えると、彼女が成し遂げたことは、その切り拓いた道の価値はもちろんのこと、年若で経験の浅い人間が仲間と支え合いながら達成したという点でも非凡な偉業だったといえるでしょう。
私も社会人ですが、一度でも社会人として働いたことがある人間ならば彼女の功績の素晴らしさが身に染みるのではないでしょうか。
折れない心、絶え間ない工夫、言い訳なしの真剣勝負。
そんな荒波にいきなり放り込まれ、どんなに精神が傷ついても辛いところなんか見せずに活動を続けて勝利をもぎ取っていったことの尊さ。
もう駄目だと思った瞬間があったかもしれないですし、彼女の中でこれは大失敗で取り返しのつかない敗北だと感じた事件があったかもしれない。
それでも、視聴者の前では笑顔でエンタメを提供し続けた。
それどころか、年上の人間もたくさん所属しているであろう「にじさんじ」をずっと牽引し続けていて、いまでも引っ張っていく存在である。
日本の伝統的大企業には恐らく、新入社員の質に愚痴をこぼす堅物上司たちがたくさんいることでしょう。
その人たちは是非、この月ノ美兎という存在を見せてやりたいものです。
根性と行動力があって、自発性の塊で、仕事的な意味での気配りに長けていて、自分の頭で考える力に溢れているような若者。
下働きから企画、演者までこなせる若者。
そんな若者は、この平成末から令和初の時代にだって存在しています。
そんな優秀な、昔気質な意味でも傑出した若者は、Vtuberとしてこういう場所に機会を見出しているのですよと彼らに伝えたくてたまりません。
そんな優秀な若者がどう他者を惹きつけているか見てください。
それは、とてつもなく真剣なおふざけであり、彼女は有名大学でも体育会でもなく、サブカルチャー文化を出身母体にしているのです。
あの「インターネット」から、「かつてのインターネット」を体現するような人物がトッププロとして出てきて、若者離れした偉業を達成し続けているんだ。
そう心の中で呟けるだけでも、サブカルチャー、あるいは「かつてのインターネット」出身の人間にとっては身も震えるほどの感動があります。
以前、彼女の配信において「何も特典がなくてもメンバー(サブスクリプション方式でVtuberに金銭を支払い、対価として限定公開動画やグッズが貰える仕組み。月ノ美兎は導入していない)になりたい」というコメントに対して「そんな無償の愛があるものか」という旨の驚きを月ノ美兎が発していました。
月ノ美兎に分からなくて私たちだけが分かること、それはただ一つ、この月ノ美兎という存在に私たちがどれだけ励まされているのかというその程度の大きさなのかもしれません。
5. 結論
いやはや、つい長々とした記事を書いてしまいました。
しかし、「インターネット老人会」絡みの「オタク特有の早口」としてはいい線をいっているのではないでしょうか。
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