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【政治経済】「平成の通信簿」 吉野太喜 星2つ

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平成の通信簿
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本書ではここまでは書かれていませんが、癌患者の生存率を1%上げる薬をつくるよりも、一般的な薬をより安価に(アフォーダブルに)提供するような工夫がある方がかえって命が救われるのではないかという考え方に一理あるのは確かです。

命の選択をしている、と言われればそうですが、厳しい家計支出を考えれば、一般的な医療を受けたり一般的な薬を処方されたりするのに多額の金銭を支払わなければならない状況も命の選択だといえるでしょう。

私たちが直面する状況を赤裸々に示すデータであると思います。

「26. 身体」と「27. 死」では、日本人の体格や運動能力の平成年間における推移、そして死因の割合の推移などが示されます。

「26. 身体」では運動能力の推移なども面白いデータなのですが、身長の伸びがついに止まったという部分が焦眉の点でしょう。

栄養状況が改善し、遺伝子の限界まで到達したといえばそうなのでしょうが、所得の伸びなどと同様、もはや子供世代が親世代を様々な面で軽々と超えていくことは不可能な社会構造になったことを身体という側面でも感じさせるデータでした。

また、「27. 死」では、死因第一位が悪性新生物(癌)、2位が心疾患であることなどが示されます。

これ自体は特に驚きでもないのですが、本記事では本書にはない別の「死」のデータも紹介したいと思います。

平成29年(2017)人口動態統計(確定数)の概況( https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei17/index.html)における性別にみた死因順位(第10位まで)別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合( https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei17/dl/10_h6.pdf)によると、2017年において悪性新生物により亡くなった人数は373,334人、心疾患により亡くなった人数は204,837人、脳血管疾患で亡くなった人数は109,880人、そして平成29年度衛生行政報告例の概況( https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/17/dl/gaikyo.pdf)によると、平成29年度の人工妊娠中絶件数は164,621件となっています。

中絶された受精卵は「日本人」ではないので死因の統計には含まれませんが、これを含めると死因の3位に割って入るというのはかなり衝撃ではないでしょうか。

少子化解消、人口動態改善を掲げておきながら、これほどの数の中絶を強いなければならない社会構造もまた問題でしょう。

全体的にネガティブな論調になってしまいましたが、統計でみるとやはり平成の「失敗」がどうしても目についてしまいます。

しかし、働き方改革や多様な価値観の包摂、移民の積極的受け入れなど、平成と令和の境目で様々な変化が起き始め、それを政府も推し進める態度を見せています。

平成がより上に登っていくための踊り場だったと、そう思えるような令和時代になることを願うばかりです。

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