第4章ではGATTやバーゼル条約でリサイクル品の国際貿易がどのように規制されているのかを説明されているのですが、この章はさすがに書いていることが細かすぎて退屈です。
ブラジルの更正タイヤ輸入禁止措置を巡る国際紛争の処理過程、有害廃棄物受け入れ拒否にまつわる国際規制の実効性不足問題など、実際に起こった事件をもとに国際規制の様相が描かれるのですが、条文をやたらに細かく書きつつ、それらの文言の定義や適用範囲の違いによって各国が小競り合いをしている様子を示されたところで「だから?」の一言に尽きます。
貿易についての国際紛争解決はもちろん、著者の日常にとっては重大事なのでしょうが、結局、一般市民にとっては何がどう重要なのかが分からないという現象に陥ってしまっています。
第5章は国際リサイクルについての日本の取り組みが紹介されるのですが、この章は第4章に輪をかけて一般市民に馴染みがなく、新書に求めていないレベルの小さくて細かい論点ばかりが並ぶので非常に退屈です。
世界のあんな国やこんな国との間でこういう取り決めが結ばれたとか結ばれないという話が延々と続くのですが、やはり、それがどれほど重要なのか、そういった取り決めが日本や世界全体にどれほどのインパクトをもたらすのかが示されないため、読んでいてどうしても他人事に思えますし、全く感情が揺さぶられません。
結論
わざわざこの本を買っておいて恐縮なのですが、全体的に論点が異様に小さく、どれほど我々の世界にとって重要だったりするのかが分からない節が多すぎます。
もちろん、個々の国際交渉において実務担当者は苦労しているのでしょうが、実務担当者が苦労する点と読者が興味のある点のあいだにあるズレが著者には理解できていないように感じられました。
前半で述べられている国際リサイクル状況解説はまだ、中古自動車や家電、再生資源という、馴染みがあって想像しやすく、なんとなく重要性が分かることに焦点が当たっているので読めるのですが、特に後半部で述べられている国際規制や国際交渉の仔細はさすがに一般向けではないですね。
そしてもちろん、学術出版ほど内容が充実しているわけではないので、非常に中途半端で空虚な内容になっております。
失望するほど、あるいは義憤を感じるほど酷い出来ではなく、新しい観点の発見もあったので評価1点は避けますが、全体として面白く読めるという本ではないでしょう。
この分野に特段の興味があるというのならば手に取っても良いという程度ではないでしょうか。
ただその場合、もっと良い専門書がありそうなものですが。
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