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【小説を売る工夫の数々】教養書「拝啓、本が売ません」額賀澪 評価:2点【ビジネス書】

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拝啓、本が売れません
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その意味で、額賀澪さんという作家個人に対しては良いアドバイスをしているのでしょう。

しかし、「拝啓、本が売れません」というタイトルに惹かれて本書を買った人々が求めていたものはそれではなく、なぜ紙や電子媒体に文字が羅列されているこの「本」という存在が現代社会で売れていないのかということ、産業としての出版業界/文芸業界の敗因と勝ち筋は何なのかということのはずです。

書籍全体の売上が1990年代の全盛期から一貫して減り続けている(2019年は何十年ぶりかの前年対比増だったらしいですが、本書の刊行は2018年なのでまさに地獄の底で出版されたはずです)という現実に対して、個々の努力ではなく産業全体でどう抵抗していくかという点に一切言及がなかったのは残念でした。

一般論的には敗因が2つあって、動画投稿サイトやスマートフォンゲームといった競合コンテンツの興隆、そしてセカンダリーマーケット(古くは新古書店、現在はフリマアプリ)の充実といったところでしょう。

前者については具体的な対案があるわけでもないですが、ブックフェアを乱発したり装丁に妙なこだわりを出していくのは何か違う気がします。

妙な機能を色々つけた挙句負けていった日本の家電メーカーやしょぼい観光を旗印にした町おこしのような悪あがきと同じであって、決して興隆してきた新コンテンツに対抗できるような着眼点ではないのだと思います。

結局、家電は値段が安くて機能がそこそこかつシンプルデザインな中韓台勢に席巻されましたし、いまやそういったアジア系メーカーがフルラインナップを揃えているうえ高級機の機能やデザインでも独自の優位性を発揮していますよね。

観光だって東京・京都・大阪と北海道のスキーリゾートという、そもそもの魅力が高い地域こそ外国人観光客誘致で(コロナ以前は)儲けていましたし。

コロナ以後も観光資源のない地域の逆転は無理でしょう。神は細部に宿るのかもしれませんが、中心部なしに細部は存在し得ないのです。

そして、後者については再販売価格維持の見直しが必要というのが正直なところでしょう。

同じ商品が値引き価格で売っていたらそちらに飛びつく消費者が多いという摂理を覆すことは困難です。

ただ、電子書籍市場の拡大は光明かもしれませんね。

電子書籍には作者や出版社の懐にお金が入らないような(合法の)セカンダリーマーケットは存在しませんから。

市場に放った紙の本がフリマアプリで出品され将来的な競争相手になってしまうのとは構図がまるで違います。

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結論

あまりタイトルを過信せず、額賀澪さんの軽い日常系エッセイという気持ちで手に取るのが妥当でしょう。

なお、私が「感想」の後半部で述べたような内容は独立した持論であり、本書にはこれを示唆する内容も掲載されておりません。

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(日本語)単行本(ソフトカバー) – 2018/3/20

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