加えて、こういった類のファンタジーの「お約束」なのかもしれませんが、登場人物たちのわざとらしい話ぶりも気持ち悪いです。
自分で自分に問いかけて自分の感情を説明する(心の中の台詞ではなく、実際に口に出す台詞で)という描写はあまりに不自然ですし、抽象的で意味深長な問答も冗長です。
ほかにも冗長で不自然な場面が多く、超えるべき試練の設定説明に十数ページかけて、試練の突破には数ページしか要さない場面(アトレーユが3つの門を突破するシーン)の冗長さは堪えましたし、アトレーユが戦友である名馬アルタクスを見捨てる場面の不自然さが最後まで心のしこりとして残りました。
馬でありながら親友でもあるアルタクスが沼に沈みかけている場面で、万能のお守り「アウリン」を持っているにも関わらず、「アウリン」自分の身体から外してアルタクスの首にかけてやることができないというのは、勇敢で誠実であるはずのアトレーユの人物造形からするとかなり不自然です。
他にも、星僧院で学校に行っていた記憶を失うという流れはそれまでの展開からの必然性が感じられませんし、そこにわざわざサイールとアトレーユを連れて行った理由も最後まで不明でした。
また、「生命の水」の直前でアトレーユとフッフールが現れるのも無理があり、しかも、最後までバスチアンは主体的に行動せずアトレーユの手引きで元の世界に帰るという展開は少年バスチアンの成長物語である本作の終幕に相応しくないでしょう。
ただ、それ以上に違和感があったのは、物語全体において様々な設定やキャラクターが何の事前説明や伏線もなしに唐突に出現することです。
もちろん、未知のファンタジー世界を旅するわけですから、偶然の出会いなどもあってしかるべきですが、それでも、その時その時で場面にとってあまりに都合の良い新キャラクターばかりが登場すのではしらけてしまいます。
とはいえ、後半(特に下巻の最後半分)の疾走感はなかなかのものですし、欲望にまみれた望みを叶えるたびに大切な記憶を失っていく、という設定は大人に対しても訴求力もあり面白いと感じました。
先の展開が気になる場面もところどころあり、評価1点(平均以下の作品)はつけられないな、と思わせる力はあります。
いじめられっこ主人公、やりすぎなほどのファンタジー設定、これらが好きと言う方ならば「ハマる」可能性も十分にあるでしょう。
万民に勧められるわけではありませんが、昔ながらの、読書好きでちょっと内気な(根暗?)な少年少女に送るファンタジー小説というあたりが妥当な評価だと感じました。
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