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【承認欲求からの脱却】教養書「嫌われる勇気」岸見一郎他 評価:4点【自己啓発】

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嫌われる勇気
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 第五夜 「いま、ここ」を真剣に生きる

最終章にふさわしく、幸福に生きるための究極のコツが第五夜では説明されます。

キーワードは「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」そして「『いま、ここ』にスポットライトを当てること」です。

まずは「自己受容」ですが、これは特別ではない自分を受け入れることだと本書は述べます。

自分が保有している要素のうち「変えられるもの」と「変えられないもの」を区別し、「変えられないもの」についてはそれを虚心坦懐に受け入れ、「変えられるもの」を向上させていくことに努めるという態度です。

似た言葉に「自己肯定」がありますが、本書では「自己受容」は「自己肯定」と異なるものであると定義しています。

つまり、「自己肯定」とは自分が保有する全要素を無理矢理にでもポジティブに評価して捉えることであり、そこには60点を100点だと見なすような嘘が含まれていると本書は主張します。

「自己肯定(感)」こそ重要だという巷の風潮に対して真っ向から反対していく主張ですから、この部分は本書の独自性が顕著に現れた刺激的な部分であると思います。

確かに「自己肯定(感)」や「個性の尊重」という美名のもと、個々人の特性を何でもかんでも褒め称えようという風潮が最近はありますよね。

その中には、どう考えても美点というより欠点である特性に対して無理矢理な理屈をつけて賛美している例もあるように思われます。

無理矢理に自分を褒め称えている姿は(無理筋な賛美であることを指摘しづらい風潮も相まって)まともな他者の視点から見るとげんなりするものでしょうし、何より自分自身にとっても辛い嘘になっているはずです。

劣っている点は劣っている点として受け入れる、そんな姿勢のほうが醜悪な「自己肯定(感)」よりもよほど美しいと言えるでしょう。

次に「他者信頼」ですが、これは他者を無条件に信頼することだと述べられます。

またもや過激ともいえる発想ですよね。

対人関係において性善説に立ちすぎると、騙されてしまったり必要以上に傷ついてしまうことも多いのではないかという疑問が浮かびます。

しかし、アドラー心理学の世界においては「相手が自分に対して何をしてくるか」を重要視すべきではないとされているのです。

すなわち、「見返りがあるから〇〇する」「裏切らないだろうから〇〇する」という発想は、相手の態度に自分の行動が縛られているという点において自律的でもなければ自由でもなく、善い生き方でもない。

重要なのは、自分が相手に対して何をするのかということを通じて、自分の人生を幸福に構築していくことだと本書は述べます。

三番目の「他者貢献」ですが、これはその名前の通り、他者に貢献するような行動をすることであると述べられています。

そしてもちろん、動機が「承認欲求」であってはいけません。

自分が他者に対して行うことを通じて、自分自身が主観的に他者や共同体への貢献度合いを感じて自己効用感(自分には能力があり、それを役立てられているという感情)を持つこと、それこそが自立した人間が感じる幸福なのです。

そして、そんな幸福感を得たならば、もう「特別でありたい」という感情はなくなるだろうと本書は述べます。

そのような幸福感に浸っている人間は、わざわざ他者に対して自己の優越性を示すことで上辺の幸福感を得る必要がないからです。

そんな人生を送るための心理的なコツとして、本書は全体の最後で「『いま、ここ』にスポットライトを当てること」を推奨します。

過去や現在にとらわれず、「いま、ここ」においてやるべきこと、やりたいことに集中することが幸福感を得る秘訣なのだと言います。

夢中になれるものに集中して「いま」を楽しむこと、というのは成功者と呼ばれる人たちがよく口にする言葉ですが、アドラー心理学も最後にはこの境地に達するのだと、なんとなく感動してしまいました。

結論

全体的な感想として、とても面白い本だと思いました。

読み終える頃には、様々な自己啓発本の「種本」としてアドラー心理学が存在するのだという主張が非常に説得的であると感じられるようになりましたし、「他人の顔色を伺わずに、自分の幸福を追求しろ。ただし、幸福を追求する最上の手段は『他者貢献』なのだ」という理論にも大部分納得できます。

自分の幸福を考えるとき、その手段として他者と良い関係を築きたいと思う人は多いと思います。

それを目指そうと思えば「他者に依存しないようにしながら他者に貢献する」という結論が自然と生まれてくるのではないでしょうか。

憎悪や羨望、承認欲求といった「他者」を中心軸とした感情を振り払い、自分の感情を自分で満たすために「他者貢献」を行う。

なかなか難しいことに思われますが、その境地こそ幸福の極地であり、そこに至る道を歩き続けるべきなのだという理想はなかなか強烈に胸を揺さぶる理論だと感じます。

まだ読んでいないという人には、是非、おすすめしたい本です。

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