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「THE FIRST SLAM DUNK」井上雄彦 評価:4点|令和に舞い降りたスポーツアニメーションの傑作、最新の3DCGで蘇った伝説的バスケットボール漫画【アニメ映画】

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THE FIRST SLAM DUNK
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しかし、本作においてはもっとリアル寄りの、この言葉が適切なかは分かりませんが、ドキュメンタルなスポーツの質感がアニメーションによって巧妙に表現されております。

メディアによる意図的な盛り上げ(実況や解説の声やBGM、映像的な演出など)がなければ、スポーツって見ている側にとって意外と地味だったりしますよね。

一方、スポーツに対して真剣に取り組んだことのある方々には分かって頂けると思うのですが、めちゃくちゃ激しいんですよね、実際にやってみると。

しかも、真剣に取り組むほど、普段の練習やチーム内の人間関係も含めて、そしてもちろん、試合での激しい肉体や心理の動きも含めて、非常に「熱い」んですよ。

そういったスポーツの「熱さ」を、過度な表現(特殊なエフェクト)などを用いることによってではなく、肉体同士のぶつかり合いや、ボールやシューズが体育館の床を叩いたり擦ったりする音、視線や思考の動きの表現で魅せているところに、製作陣のスポーツに対する真摯で正統派な「熱さ」を感じることができます。

原作もそうなのですが、この「SLAM DUNK」という作品は、必殺技だとか正義ぶった御託で何かを表現する作品ではないんですよね。

ひたすらに努力して身体と精神を鍛え上げて試合に臨む、その中で生じる、男同士の有言無言の友情やそれに類する関係性、決して馴れ合わず、それでいて「チームスポーツ」を行うという、何かに真剣になった人間たち特有の、そういった人々だけが共有できるはずの、あの感覚。

それを漫画上で表現できてしまったことに原作の強みがあり、まさにこの映画もその強みを存分に引き出した作品だと言えるでしょう。

少し話が広がりますが、この「スポーツ」という分野はアニメーション表現が独占的に活躍できる分野だと思うんですよね。

以前、「ユーリ!!! on Ice」や「響け! ユーフォニアム2」についての記事を書いた際にも少し触れたのですが、

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やはり実写作品でスポーツや音楽のシーンを出そうとすると、演者の方々の能力不足が顕著に出てしまうという弊害があります。

俳優さんたちはそれぞれの作品で描かれる競技のプロでもなければ有力なアマチュア選手ですらないため、どうしても、試合のシーンは簡略化して表現したり、何らかの「やったことにする」描写である種の誤魔化しを行う必要があります。

それに対して、アニメーションはどうでしょうか。

もちろん、旧時代の作画では人間にやらせた方がマシだったでしょう。

しかし、時代は変わり、技術は進歩し、アニメーションに求められる「質」の種類も変わりました。

人体のリアリティがある細密な動きを演出できるようになった今日、競技に使用する道具の質感さえも本物らしく再現できるようになった今日、何らかの競技に焦点を当てて映像作品をつくるのであれば、アニメーションこそが第一候補に挙げられてしかるべきなのではないでしょうか。

リンクを貼った「ユーリ!!! on Ice」の各話であったり、「響け! ユーフォニアム2」の第5話、そして本作といった、物語を積み上げたうえでの、「大会本番」を余すことなく何十分にもわたって映像化するという構成で感動を誘おうというのならば、アニメーション以外に選択肢を持ちようがないように思われます。

その観点を再認識させ、その可能性の拡がりすら感じさせるような、そんな重厚なスポーツの感動が本作にはありました。

BGMとのシンクロも素晴らしく、それでいて、無音の場面なども効果的に使っており、流川と桜木が互いの手を叩く名シーンに至るまでの数分間は恐らく、瞬きも息もしていなかったほどです。

それほどの緊張感をまさかアニメーション映画から感じることになるとは、と思うほどの、肉感的迫力のあるアニメーション表現の束が浴びせられる映画です。

さて、アニメーションについてはここまでにしておいて、続いては物語面に視点を移しましょう。

映画冒頭は意外なことに、宮城リョータの幼少期の思い出から始まります。

宮城リョータが沖縄出身であり、家族関係で悲しい過去を持っていた、という情報は原作にもなく、また、本来の主人公である桜木ではなく宮城リョータに焦点を当てるという構成も意外でした。

とはいえ、過去話自体は、漫画としては「よくある話」でありまして、父親や兄(宮城リョータより期待されていたバスケットボール選手だった)の死が彼の人生に正負様々な影響を与えていますよ、という内容です。

なんというか、特に現代日本を舞台にしているのに、軽率に両親や兄弟姉妹を死なせてお涙頂戴な「過酷な境遇」を演出する手法は昔からあまり好きではないんですよね。

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