戦火の中で凌辱され、復讐を誓った少女が身一つで剣術師範に弟子入りする話、と書けばベタだなと思われるでしょうが、そんな「ベタ」をさらりと上手に書いている中編だと言えるでしょう。
こちらもこういった物語では定番の要素ですが、表向きは少女ハルナの復讐劇でありながら、裏のテーマとして、師匠となる疋田文五郎という青年の成長が描かれている点もベタながら好印象です。
名剣士でありながらどこまでも飄々としていて、内から湧き上がる情熱のようなものが持てないでいる様子の文五郎。
しかし、ハルナを指導するうちに自分が県の腕を磨く「目的」について考え始める。
そして、大きな戦が終わった後に彼の胸の中に残ったものとは......。
短い中に適度な起伏があり、緊迫感もある中でほど良い弛緩もある佳作です。
結論
というわけで、最終的な評価は3点(全体のレベルが一定以上、なおかつ胸を揺さぶる要素が一つ以上ある佳作)です。
激賞するというほどでもありませんが、読んで損する作品でもないでしょう。
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