生まれながらの、あるいは幼少期に能力を発現させたニュータイプであり、それゆえに奇特な人生を歩んでいる。
もし、そういった設定があるのなら、この突飛で奔放な会話や態度にも説得力があるだろうと考えていたのです(原作未読なので本当の設定は分かりませんが)。
それでも、大佐とギギのやりとりは「子供が考えた『大人の世界』を描いた映画」が拭えませんが、アニメという業界全体で観られる幼稚な諸会話に比べれば相当マシで、我慢できるレベルです。
ただ、マフティ―が市街地を襲撃したあたりからの展開や人物間の会話はあまりにも意味不明。
そもそも、首謀であるハサウェイが泊っているホテルにマフティ―の面々が攻撃を加えること自体が意味不明ですし、ハサウェイがそれを指示しているのも理解できません。
自分が泊っている場所よりも上層階に打ち込めば大丈夫、などと言いつつ、実際にはホテル内でも市街地でも死にかけており、あまりにも意味なく自らの命を危険に晒しています。
これでマフティ―のリーダーだというのですから、ちょっと設定には無理があると言わざるを得ないでしょう。
巨大なモビルスーツ(※)が市民を蹂躙していく市街地戦も映像の迫力こそ満点ですが、自分の立てた作戦で爆撃に遭い死にかけながら街を逃げ惑うハサウェイの意味不明行動に思考がついていけず、しかも、モビルスーツ同士の戦いは見づらいアングルと闇夜という条件により「映画を見ているのにどんな戦闘が行われているか分かりづらい」という致命的な描写になってしまっています。
※ガンダム世界に登場する人型の戦闘用巨大ロボット。レーダーや無線通信を妨害する「ミノフスキー粒子」という化学物質が簡単に製造されるようになっており、レーダーや無線通信に頼った兵器は簡単に無効化されてしまう。そのため、追尾機能を持つ兵器は熱源探知のミサイルくらいしかなく、直線的にしか飛ばない実弾やレーザー兵器が主戦となっており、装甲の厚いロボット兵器同士の白兵戦すら実戦でよく見られる光景になっている。
その後、市街地戦を生き延びたハサウェイはマフティーの仲間たちに迎えられ、宇宙に飛び出してからモビルスーツに搭乗してマフティ―殲滅部隊を迎え撃つのですが、この戦闘の経過も宇宙&闇夜の暗がりであまりにも分かりづらくなっており、主人公とそのライバル格パイロットの初対決であるにも関わらず目を凝らして影を追うような状況に陥ってしまいます。
また、マフティ―がテロを起こしている背景や組織の状況説明を殆どなされないため、マフティー側の登場人物たちの言動が極めて曖昧かつ抽象的に聞こえてしまうのも没入感を妨げます。
謎めいた要素が物語の牽引力になるのは間違いありませんが、何もかも謎では、いったい何に対してその場面における興味関心を抱いて鑑賞を続ければよいのかと戸惑ってしまいます。
大人が活躍するリアル調のアクション&サスペンスで万民向け感を出してきた序盤にはファーストガンダム以来の普遍的な(アニメファンやガンダムファンにではなく、幅広い層に届く)ガンダム作品の予感を覚えましたが、実はコアなガンダムファンや原作既読者向けで、マニアックな知識を駆使した「解釈」が必要な作品なのかと失望してしまった次第です。
そのうえ、バトルという面では主役になるはずのモビルスーツ戦が盛り上がりに欠けるのであれば、バトルアクションアニメとしての魅力もだだ下がりです。
そんなわけで、序盤は平均を上回る評価を与えられるものの、中盤~終盤にかけては大きく失速したため、ぎりぎり2点(平均的な作品)という評価にします。
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