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「堀さんと宮村くん」HERO 評価:3点|抑制的な作風が笑いと切なさを誘う、天然色系青春恋愛漫画【ラブコメ】

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堀さんと宮村くん
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凡庸な高校生活を過ごしてしまった人間にとって、これほどまでに「やればできたのにやらなかった」後悔を掻き立てるような高校生活への姿勢はないのではないでしょうか。

また、彼氏の「弱い」ところまで含めて好き、というのはどちらかというと少年漫画的な描写なのですが、恋愛の様相や男性陣のどこに惚れるのか、という観点は少女漫画に近く、バランスが取れているなと唸ってしまいます。

綾崎レミはどちらかというと幼い感じの言動をするキャラとして描かれるのですが、仙谷の「弱さ」に対する独自の視点などを語るときは大人びていて、同級生たちと同じように高校生活を楽しみながら、同級生たちよりも一歩上の人生感覚を持っているキャラなんだと気づかされるなど、キャラクターの深堀りや含蓄の深さもあるところが本作の魅力になっております。

そんな、お互いに安定した恋愛感情を抱く仙谷と綾崎に対して、あやふやな、恋愛感情とも言えない何かを持て余しているのが石川透(いしかわ とおる)と吉川由紀(よしかわ ゆき)。

しかし、この二人はそれなりにモテる人物として描写されており、まさにモテるがゆえに、いつも誰かから好意を向けられているがゆえに、自分が誰かを「好き」という感情がよく分からないという、強者の悩みを抱えています。

誰かから告白されたりすると、それが結構頻繁にあるような時期があると、「好き」に対して疑心暗鬼になってしまう。そんな心理の側に立つキャラクターがこの二人なのでしょう。

そして、石川に対する片想いを叶えられないまま卒業してしまうのが、仙谷や綾崎と同じ生徒会メンバーである河野桜(こうの さくら)。

彼女の行動はいかにも「恋愛慣れしていない」人間のそれであり、この不器用さにも多くの人が感じ入ることができるはずです。

キャラクターの幅が広く、それでいてテンプレート的なキャラクターがあまり出てこない点に作者が持つ引き出しの多さを感じます。

さて、ヒロイン&ヒーローである堀さんと宮村くんに話を戻しますと、この二人の恋愛も非常に面白いんですよね。

青春恋愛漫画では両親の存在が希薄化しがちなところ、本作では堀さんと宮村くんの家族が重要なキャラクターとして描写されます。お互いがお互いの家族に認められて行って、だんだん一つの家族になっていくような、そんな距離の縮め方をする様子が感情を揺さぶるのです。

情熱的な恋愛でもなく、悲劇的な恋愛でもなく、爛れた関係でもない、二人の間の「信頼」が徐々に強くなっていくという恋愛進展の描き方。

こんな「恋愛」も確かに憧れだなと思わせてくれます。

背景すらほとんどない、シンプルな絵柄だからこそ「ストーリー」と「キャラクター」、そして「掛け合い」で魅せる作品。

思い出補正も多分にあるかもしれませんが、時代を捉えたweb漫画の寵児と呼ぶに遜色ない質を持った作品です。

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