漫画 「足摺り水族館」 panpanya 星2つ

足摺り水族館
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1. 足摺り水族館

同人誌掲載作を集めた作品集ながら「このマンガがすごい! 2014 オトコ編」において第14位にランクインして一部界隈で注目を浴びた作品。著者であるpanpanyaさんは同人活動を中心とされている漫画家でしたが、現在は白泉社発行の漫画雑誌「楽園 Le Paradis」にて作品を連載しております。

感想としては、「このマンガがすごい! 2014 オトコ編」 へのランクインに著者自身が驚いたと述べているように、明らかに万民向けの作品ではありません。独特な絵柄と不思議な世界観が魅力だとするファンもいらっしゃるのでしょうが、一般人にとっては意味不明の一言でしょう。私もどちらかというとマイナー分野好きの人間ですが、この作品はあまり受け付けませんでした。

2. あらすじ

〇足摺り水族館

少女は親戚から貰った本に「足摺り水族館」の入場チケットが挟まっているのを発見する。翌日、チケット裏に記されていた道順を頼りに「足摺り水族館」を目指すのだが、だんだんと不思議な世界に迷い込んでしまい……。

〇イノセントワールド

京都での修学旅行の途中、同級生とはぐれてしまった少女。仕方なく最後の集合場所となっている京都タワーへと向かい、そこで待つという安全策をとることにした。しかし、たどり着いた京都タワーの展望台からは京都タワーのような形をした建物が見える。レジの店員に尋ねたところ、その建物は「第二京都タワー」らしい。好奇心を刺激された少女は「第二京都タワー」に向かうのだが……。

その他12作品を含めた合計14作品を収録。

3. 感想

独特な装丁や「考えるな、感じろ」と言わんばかりの非現実的でふわふわした世界観の絵柄はまさにマイナー漫画のお手本のようです。「イノセントワールド」のあらすじを読んでの通り、現実世界と非現実世界がシームレスに繋がっていて、いつのまにか非現実世界に迷い込み、そこで少女が不思議な体験をするというのが物語のパターンなのですが、その不思議な体験にも特に意味はなく、ただ抽象画をずっと見せられているような気分になります。

本作と相性が合う人はそういった「抽象画感」にこそ夢を見ているようなトリップ感や陶酔感を覚えるのかもしれませんが、個人的にはそこまで惹きこまれる要素もなく、最後まで醒めた目を維持したまま読み終えてしまいました。私も手持ち無沙汰なときや日常のふとした瞬間にこうした類の想像をしてしまうのは分かる(空想の世界に耽るのが好きな子供でした)ほうだという自覚はあるのですが、しかし、だからといってそのような幼い想像の世界ををそのまま描いてしまうのか、それを出版してしまうのかという疑念が頭の中に現われてしまう作品です。物語としての工夫や作品としての工夫(装丁や絵柄以外)で読者を引きこもうという姿勢が感じられず、テーマ性や面白さについての(前衛芸術的にはそんなもの"ない"のが正しいのかもしれませんが)訴求点に欠けています。

全体のざっくりとした感想はそんなところですが、部分部分でくすっとくる点や「そういう世界観が好き」となる場面がなかったわけではありません。「新しい世界」という作品に登場する未来の魚についての解説で、「生きた魚は食用になるのですべて魚工場で養殖されており、海には合成樹脂でできた人工魚しかいない」という設定が語られる場面は好みです。生きた魚の代わりに合成樹脂の人工魚を泳がせることで無理矢理「海を完成させる」なんて、いかにも私たち人間のやりそうなことです。私たち人間はそんな生き物ですよね。

4. 結論

いつもの評価手法ならば星1つですが、マイナー漫画好きとして、空想好きの子供だった人間の性として、不思議な世界観をついつい想像してしまうことへの共感に加点して星2つとします。いかにも同人作品らしい作品を期待しているのであれば購入してみてもよいかもしれません。

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