漫画 「ご近所物語」 矢沢あい 星2つ

ご近所物語
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1. ご近所物語

「NANA」「天使なんかじゃない」「Paradise Kiss」など多くの代表作を持つ少女漫画家、矢沢あいさんの作品。1990年代の中盤に「りぼん」で連載され、同時期にアニメが放映されていたことから、若手社会人世代にとって懐かしい作品だといえるのではないでしょうか。「天使なんかじゃない」からゲスト出演しているキャラクターがいたり、「Paradise Kiss」が同舞台での数年後の話になっているなど、他の矢沢あい作品とのリンクが楽しめるのも特徴です。「天使なんかじゃない」「Paradise Kiss」に関しては本ブログでも既に記事を書いております。

そんな本作ですが、総合的な評価としては凡作だと感じました。少女漫画の肝である恋愛面、そして、デザイン系の高校を舞台にしているというところから発される夢を追う若者という面。その両面においてやや盛り上がりに欠けてしまった印象です。

2. あらすじ

幸田実果子(こうだ みかこ)は矢沢藝術学院に通う高校一年生。夢はファッションデザイナーとして自分のブランドを立ち上げることで、服のデザインについてはその才能と熱意が学院内でも認められている。

そんな実果子には同学年の幼馴染、山口ツトム(やまぐち つとむ)がいる。同じアパートの別室に住み、幼い頃からつるんできた腐れ縁の彼も矢沢藝術学院の生徒であり、実果子はツトムを含めた友人たちと楽しく学園生活を過ごしていた。

そんな中、ツトムにアプローチを仕掛ける人物が現れたことが実果子の心をかき乱し始める。彼女の名前は中須茉莉子(なかす まりこ)。矢沢藝術学院の二年生でミス・ヤザガクに選ばれた美貌の女性。ツトムと茉莉子の関係に実果子の心を揺れるが、実果子のツトムに対する気持ちは定まらない。

人生の岐路となる学園生活。恋愛に、そしてキャリアのスタートに、実果子や周囲の人々はどのような決意と行動を起こすのか。恋と夢に駆ける王道学園物語。

3. 感想

話の筋としてはかなり普通な少女漫画なんですよね。これまでそこまでは意識していなかった幼馴染の男性にアプローチする女性が現れて主人公が恋心を自覚するとか、そんな主人公の周りでも学園生活の様々なイベントを通じてカップルが生まれたり別れたりするという、ただそれだけの話です。べつにつまらない訳ではないのですが、まぁ、ありがちで凡庸だよねというエピソードが多いという点は否めないでしょう。

加えて、ちょっと普通ラインより弱いなぁと思ってしまったのは実果子がツトムに想いを寄せる理由です。実果子にとってツトムが非常に頼りになる存在であるということなのですが、そのきっかけとなる事件や経緯のほとんどが作中時間(高校での生活)よりも前の、実果子の回想の中で語られる事象であるというのはこの物語を少しつまらなくしていると感じます。もう少しでも、作中で主に描写されている時間帯で、まさに本作の本筋となる部分で二人が惹かれ合う描写があるとそこで興奮できたのにと思います。

また、恋愛面と並ぶもう一つの筋である夢を追うという点もやや浅かったです。主人公の前に立ちはだかる壁や主人公が抱く悩みにちょっと魅力がないんですよね。留学に行くかどうか焦点になったりするのですが、基本的に留学に行かない理由は主人公の勇気不足で、もちろん、現実にはなかなか勇気が出ないことではあるのですが「最終的にはなんだかんだいって留学に行くんだろ。別に行かないことのメリットないし」という安直な展開予想が容易にあてはまる流れだったのは少し残念です。物語を盛り上げる選び難い二択や辛いジレンマが少なく、葛藤の描き方も画面の勢いだけで中身が薄いと感じました。

さらに、そもそも一般人からは共感しがたい境遇の登場人物ばかりが出てきて感情移入が難しいんですよね。誰も彼もお金持ちで顔も良く、芸術系の才能もそれなりにあってという面子になっていて、デザイン系高校の話という点も相まって主人公たちの生活が超人たちの遊びに見えてしまいます。悩みといっても、結局、そういう雲の上の人たちのあいだでの贅沢な悩みでしょと思えてしまうのです。資産(収入)・容貌・技能(才能)の全てに恵まれた人たちのあいだの微細な差ばかりが論じられるばかりでは心が離れていってしまいます。トップを目指す人たちの微細な差を巡る熾烈な争いを描く漫画として盛り上げるような作風も存在はしておりますが、そういった演出が上手くなされているわけではありません。

4. 結論

面白くなくはないが、批難しようと思えばいくらでも批難できる点がある漫画という評価です。やはり矢沢作品では「Paradise Kiss」か「NANA」がお薦めですね。

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