1953年の公開以来、世界的名作としてその名を轟かせているビッグタイトル。
オードリー・ヘプバーンの初主演映画としても有名で、この作品でいきなりアカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得しています。
他にも、最優秀衣装デザイン賞や最優秀原案賞を獲得するなど、大きなセンセーションをもたらした作品です。
いま観るとベタにも見えるストーリーなのですが、それは本作が新しい「ベタ」をつくりだした作品だから。
「『ローマの休日』的物語」という王道を編み出した元祖作品であり、そのベタさは称賛に値すべきなのです。
そして、物語だけでなく役者たちの演技も超一流。
常に視線を釘づけにされ、画面から目が離せなくなってしまいます。
色褪せない新しいスタンダードを築いた輝かしい古典作品。
必見の一作と言えるでしょう。
あらすじ
ヨーロッパ某国の王女アンは公務でのヨーロッパ周遊中にローマを訪れていた。
分単位のスケジュールと、決まりきった形式的対応を迫られる生活に辟易するアン。
ローマ滞在初日の夜、我慢ならなくなったアンは、監視の目をくぐり抜けて街へと脱出する。
そんなアンに街中で出会ったのは、新聞記者であるジョー・ブラッドレイ。
ジョーは当初、アンを単なる家出娘だと思い込んでいた。
しかし、彼女が脱走王女であることを知るや否や、新聞記者という立場を隠して彼女と一日を共にし、そのいきさつをスクープ記事として高値で売ることを画策する。
狙い通りローマの街をアンに案内することになったジョー。
友人であるカメラマン、アーヴィングにその様子をこっそり撮影させるなど、スクープ記事に向けた地歩は着々と固まっているように思われた。
二人が本当の恋に落ちる、その瞬間までは......。
感想
激務に耐えかねた王侯貴族が監視の目を盗んで脱出し、街に出て庶民と出会い自由を謳歌する。
しかし、最後には自分本来の立場へと還ってゆく。
庶民と街で楽しんだ想い出と、そこから得た、王侯貴族としての生活では決して得られない「大切なこと」を胸に秘めて。
そんな王道ストーリーを「最初に」作り出したのがこの作品。
多数の作品でオマージュやパロディが為され、現代の物語創作の中で確固たる地位を得ているパターンは本作から始まったのです。
もちろん、「王侯貴族の不自由さ」という概念はいまや一般庶民にも理解が及ぶものです。
天皇家の子供たちを見てもそうですが、幼い頃から公務に駆り出されてはメディアに囲まれ、不用意なことは一切言えずに決められた台詞を押し付けられる。
学校も将来の進路も自分ではない誰かが全てを決めており、泥臭い部活動に毎日を延々と捧げ続けることなど絶対にできない。
学校での友人関係も「皇族」としての前提あってのもの。
そんな青春に、本音では辟易している。
王侯貴族の子息たちがそんな想いを抱いているかもしれないと言われれば、それなりに納得できます。
自由な現代社会を生きる我々の視点から見れば、王侯貴族の子息たちは「可哀想」ですらあるのです。
しかし、ほんの何十年前まではそうではありませんでした。
豊かな家庭、十分な教育環境、権力のある安定した地位、きらびやかな生活。
それは王侯貴族やビジネス的成功を収めた最上流の富裕層にしか許されないことであり、庶民の生活は悲惨なもの。
ろくに学校に通えないどころか、飢饉や疫病のたびに数%~数十%の人間が平然と死んでいくような日々。
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