1. いなくなれ、群青
新潮社の新レーベル「新潮文庫nex」の看板作品で、「階段島シリーズ」の第一巻という位置づけの本作。また、いわゆる「ライト文芸」的なレーベルだけあって、ライトノベル出身の著者が書いています。
評判も芳しく、売り上げ好調のようですが、私には受け入れかねる内容でした。
2. あらすじ
主人公である七草が暮らす島は名前を「階段島」という。学校も寮もあり、アルバイトもできるこの島だが、何故か外へ出ることはできない。ここは「捨てられた人たち」が集まる場所であり、「失くしたもの」を見つけない限り脱出できないのである。
そんな「階段島」に、ある日「真辺由宇」という少女が現れる。それは七草にとって再会であった。時を同じくして、「階段島」では奇妙な事件が起こる。「連続落書き事件」や、小学二年生という幼さでこの島に来てしまった「大地」。
事件の真相を追い、「大地」を元の世界に還そうとする七草が辿りついた場所とは......。
3. 感想
あらすじを見てもわけがわからないとは思いますが、私の筆力ではこれが限界です。
本作を読んでの感想はとにかく「意味不明」。舞台となっている「階段島」は、「成長していくにつれ不必要になり、身体の主に捨てられた人格」が集まっている場所という設定なのですが、その掴みどころのない空想設定がオチあるいはトリックの要点として使われているのが致命的。
物語の中でその設定の詳細が隅から隅まで説明されれば(それにしても寒い設定ですが)、読者はそれを前提にあれこれ推理したりすることができますが、物語の最後にその妄想ファンタジー設定の中で秘匿されていた要素が現れそれを使ってトリックの理屈をつけられると完全に置いてきぼりです。読者から見て後付けの設定でしか推理できないようなミステリーには何も意味がありません。加えて、明かされる設定は元の世界に帰ることがいかに重要かを示唆するのですが、まさにそれが最後まで明かされないために、元の世界に帰ることの重要さが中盤まででは理解できず、「大地」をなぜ元の世界に帰る活動の何を応援すべきか分からないまま読み進めるという苦行を強いられます。
また、登場人物たちの会話もかなり観念的で薄っぺらく、村上春樹を100倍希釈した雰囲気で話は進んでいきます。加えて、「青春ミステリ」と題されている割に、連続落書き事件の真相はそれほど難解でも衝撃的でもなく、本編の展開に必要だったかというとそうでもありません。(そもそも「青春ミステリ」で売っているのにミステリ的事件が本筋ではない)
様々な要素がごちゃつき、ストーリーになっているかどうかも怪しい状態で、もうちょっとどうにかならなかったのかと思ってしまいます。ですが、こういった「雰囲気」の小説が本作に限らず売れていることも事実。
昨今の流行を学ぶ機会にはなりました。
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