小説 「暗いところで待ち合わせ」 乙一 星4つ

暗いところで待ち合わせ
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1. 暗いところで待ち合わせ

人気作家、乙一さんの文庫書き下ろし作品です。

類を見ない斬新な設定と普遍的で温かな感情を共存させたこの作品。私としては乙一さんの最高傑作だと思っています。

2. あらすじ

視力を失い、保険金で日々を静かに暮らすミチル。そんなミチルは、最近、自宅で奇妙な感覚に襲われていた。擦れるような小さな音が頻繁に聞こえ、誰もいないはずの空間から空気の揺らぎを感じる。

一方、とある殺人事件の犯人として追われていたアキヒロは、ミチルの家に逃げ込み、部屋の一角を居場所としていた。偶然が起こした不思議な同居。異なる理由で怯える両者だったが、やがてその関係にも変化が訪れる。

死んだように暮らしているミチルと、孤独に生きてきたアキヒロ。

二人の運命やいかに......。

3. 感想

素晴らしい作品。傑作です。人との関りが苦手、という二人が出会う物語なのですが、まず、その「孤独」描写が秀逸です。

ただ単に「暗いと呼ばれていた」「人を避けがちだった」と描写するだけでなく、馬鹿にされたときの心理や、悔しくやり切れず、怒りを感じながらも何もできない感情。他人に「怯える」とはどういう状態かということが緻密に描かれており、物語に切迫感と現実感を与えています。

さらに、見知らぬ二人が相手に悟られぬよう同居するという設定が、物語をスリリングなものとし、不気味な緊迫感で読者にページをめくらせます。また、「ベタ」な展開には絶対に至らないのが本作品の魅力です。そもそも、視覚障がい者と殺人事件の容疑者という組み合わせが物語の起伏を良い意味でゆがませ、予測不可能にしています。

しかし、それは突飛で奇抜な展開ではなく、現実味があって心にストンと落ちてくる納得の展開なのです。温かさと恐ろしさ、現実と斬新。両立が難しい要素を絶妙な均衡で成立させるのは見事だとしか言いようがありません。読めばきっと、「小説」とはこんなにも楽しく、衝撃的なものなのだと思うことでしょう。

少しステレオタイプな台詞回しのために星1つ減じましたが、気にならない人には気にならないと思います。

小説初心者にも小説好きにもオススメな名作です。

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