小説 「ミライ系NEW HORIZONでもう一度英語をやってみる: 大人向け次世代型教科書」 デイビッド・セイン 星2つ

ミライ系NEW HORIZONでもう一度英語をやってみる: 大人向け次世代型教科書
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1. ミライ系NEW HORIZONでもう一度英語をやってみる

あまりこのブログらしくない作品を取り上げます。数年前に一部界隈で耳目を集めた「大人のNEW HORIZON」です。中学英語の教科書として有名な「NEW HORIZON」のキャラクターが大人になった、という設定で物語が展開され、大人の英語学び直しのために販売されたとのことです。

英語のテキストとしても、あるいは、純粋な読み物としても☆1であることは間違いないと思いました。しかし、この手の作品全般に対する希望を感じましたので、☆2とします。

2. あらすじ

中学校生活の途中でアメリカへと引っ越したケンはやがて現地のテレビ局に就職。日本支社へ異動の辞令を受け、日本にやってきた。そんなケンが再会を果たしたのは、若葉中学校の同級生であり、サッカー部の友人であったマイク。彼は日本で英会話教室の先生として働いているのだ。しかし、現在は足を怪我して入院中である。

病室でケンとマイクが談笑していると、そこに入ってきたのは同じく若葉中学校の同級生だったユミ。綺麗になったユミに驚くケンだったが、二人は次第に打ち解けてゆく。

そんなある日、オフィスを出たケンに突然抱きついてきた女性。彼女の名前はルーシー。ケンの高校時代の友人である。彼女は日本に来たばかりで、ケンに日本を案内して欲しいとせがむ。

自分自身も日本が久しぶりであることを憂慮したケンは名案を思いつく。ユミを呼んで、三人で東京観光をしようというものだ。

ユミとルーシー、そしてケン。「大人」になった彼らの関係はどう発展してゆくのだろうか......。

3. 感想

まずまず楽しませてもらいました。物語はベタな恋愛小説(ラノベ寄り)であって特段大きな工夫もなく、かつ、英語のレッスンもあまりに浅く広く、しかも学んでいく順番もいわゆる「教科書順」で、かつてその方法で身につかなかった人には到底英語力を上げるものにはなりません。

しかし、それでも「まずまず楽しめた」のは、あの「教科書のキャラクター」が成長した姿だからです。私の中学校はNEW HORIZONを採用していなかったのですが、それでも「こんなキャラだったなぁ」という、教科書に共通のベタさから想像力を広げることができました。

この、「自分が知っているキャラクターが自分の知っている物語の範疇を超えて活躍するのを楽しむ」という小説や漫画の楽しみ方は特に現代では一般的になりまして、「公式スピンオフ」であるとか、「版権ものの同人誌」であるとかはその代表例であると思います。

その中で、「教科書」の「スピンオフ」というのは強力なコンテンツになりうるのではないでしょうか。なにせ、ほとんどの日本国民が僅か数種類の教科書の中から一つを選ばされて学んでいるわけですから、「共通の物語」の裾野が極端に広いわけです。

趣味の細分化が進んで共通の話題が減っていき(オリンピックですら危ういですよね)、インターネットや交通手段の発展で全国全世界が繋がりながらも、かえって/そのために、クラスタ毎の凝集、クラスタ間の溝の広がりが強くなってしまっている現在。手軽に「共通の物語」を共有できるこのような作品は大きな可能性を秘めていると思います。

大多数の人が所属している「職場」や「家族(親戚含む)」という空間では、まだまだ「共通の話題」が必要とされているのですから。

そんなわけで、この本単体の評価である☆1を超えて、今回は☆2をつけました。決して面白い本というわけではありませんが、興味のある方は手に取ってみてはいかがでしょうか。

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