アニメ映画 「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」 監督:石立太一 星2つ

ヴァイオレット・エヴァーガーデン
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1. 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

京都アニメーションが手掛ける同名テレビアニメシリーズの映画版で、2020年9月18日に公開されました。既に100万人近い動員数と10億円以上の興行収入を記録しており、十分に大ヒットだと言えるでしょう。

しかし、個人的にはやや凡庸な映画だったという印象を受けました。

もちろん、美麗なアニメーションや音楽は流石の高品質だったのですが、欠点として、戦争描写の非現実性や、物語の最終目的が「愛している」の意味を知るという点が鼻につきます。

手紙の代筆を通じて家族や恋人を繋ぐ役割を果たす代筆屋の物語、という比較的リアル路線の部分が感動への訴求点となっている作品だったので、なおさら、時おり露呈するいかにも「深夜アニメ」や「ラノベ」的側面が本作の足をかなり引っ張っているように思えたのです。

石川由依 (出演), 子安武人 (出演), 石立太一 (監督) 形式: Blu-ray

2. あらすじ

4年間に渡る大陸戦争が終結してから幾何かの時間が経過し、世界には久方ぶりの平和が訪れていた。

ライデンシャフトリヒ国の首都ライデンに住む18歳の少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンもそんな平和を享受して暮らす人物の一人である。

戦時には陸軍の女子少年兵として従軍し、数々の功績を立てたあと、最後の戦闘で両腕を失ったヴァイオレット。

現在は義手を装着し、C.H.郵便社という私設郵便社に勤めている。

そんなヴァイオレットがC.H.郵便社で担っているのが、「自動手記人形」という役割。ほとんどの国民が文盲であるこの時代において、手紙の代筆を行う職業である。

単に言われたことをそのまま書き写すのではなく、差出人の真意に寄り添いながらより良い手紙を一緒に紡いでいく。

そんな姿勢で仕事に取り組むヴァイオレットの評判はいつしか国中に知れ渡るようになっており、非常に有名で人気の「自動手記人形」としてヴァイオレットは忙しい日々を送っていた。

そんなある日、休日出勤のヴァイオレットに代筆依頼の電話がかかってくる。

ヴァイオレットの代筆は何か月も先まで予約が埋まっているうえ、その少年は正規の価格を支払えるだけの金銭も持っていない。

しかし、その少年が抱える事情を悟ったヴァイオレットは、特別価格でその少年の依頼を受けることにする、

一方その頃、郵便社の倉庫を探索していたC.H.郵便社の社長とヴァイオレットの同僚が倉庫内で一通の手紙を発見する。

宛先不明で返送されてきた手紙だったが、その筆跡はギルベルト・ブーゲンビリアの筆跡に酷似していた。

戦後、消息不明になっていたギルベルト少佐。ヴァイオレットにとって戦場での上官であり、「愛している」という言葉をくれた特別な存在。

そんなギルベルト少佐との再会を渇望するヴァイオレットは手紙の送付元へと向かうのだが......。

3. 感想

物語本編よりも遥か先の未来を描いたプロローグ的場面から本作は始まります。

若くして亡くなった曾祖母から祖母へと、祖母の誕生日に毎年届く手紙。その手紙が、「自動手記人形」というかつて存在した職業に就いていた人物によって書かれていることを一人の少女が知り、感慨に耽るというもの。

後から調べたところ「病弱で自らの死が近いことを悟っている母が、毎年娘の誕生日に届くよう50年分の手紙を書いてほしいとヴァイオレットに依頼する」というアニメシリーズのエピソードに由来した場面のようです。

この少女が生きている時代は既に電気が各家庭に通じており、電話だって当たり前に普及している描写があります。電話の普及はもちろんのこと、ある程度教育が行き渡っていて、文盲がほとんどいない時代、もう「自動手記人形(=手紙代筆業)」という職業が消滅してしまった時代と読むことができるでしょう。

このような描写を通じて、本編で描かれる「自動手記人形」という職業が、一時代にだけ存在したいにしえの「風情」ある仕事なのだと強調されるのはなかなか良い出だしだと思いました。

もういまの世界からほとんど消え去ってしまった「手紙」によって想いを伝えるという習慣。長く続いてきたその習慣は、識字率が極めて低い時代にも存在していて、だから、「想いを伝える代行業」としての手紙代筆業も存在していた。

この物語は、そんな代筆業者が「自動手記人形」という特別な名前で呼ばれている時代・世界の物語、というわけです。

なかなか品格のある、より俗な言葉で表現すれば「エモい」滑り出しだと言えるでしょう。

近代的な世界に生きるその少女が、自分の知らない過ぎ去った時代に思いを馳せるという形で本編は始まります。

最初に現れるのは、アニメシリーズを通じて既に有名「自動手記人形」となっているヴァイオレットが式典に参加し、ライデン市長にお礼を言われる場面。

この場にはバイオレットの同僚も居合わせていて、それぞれのキャラクター性が発揮された受け答えがなされることでアニメシリーズ未見者にもだいたいの雰囲気を掴ませてくれます。

さらに、ヴァイオレットが仕事を休んで墓参するという展開が次に待っており、ここで、ヴァイオレットの重要な過去が明かされていきます。

もともと孤児だったヴァイオレットは陸軍に拾われ、ギルベルト少佐のもとで女子少年兵として従軍。大活躍するものの、最後の戦闘でヴァイオレットは両腕を失い、ギルベルト少佐も重傷を負います。

そのとき、瀕死のギルベルト少佐から「愛している」という言葉を貰ったヴァイオレットですが、そこでギルベルト少佐とは生き別れになってしまい、ヴァイオレトはギルベルト少佐の消息を探りつつ、「愛している」という言葉の意味について考え続けているというのが物語の重要ポイントになっています。

その後、病床にある少年から、自分の死後、家族に届けてもらうための手紙執筆をヴァイオレトは請け負います。同時期にギルベルト少佐が書いたと思われる手紙が発見されたことで、ヴァイオレットは依頼人である病床の少年を首都に残しつつ、ギルベルト少佐が住んでいるとされる小さな島に向かいます。

最終的に、少年が最後まで手紙に書けなかった想いの伝達は当時の新発明品である「電話」によって解決され、その一方、ヴァイオレットはギルベルト少佐と感動の再会を果たし、首都ライデンのC.H.郵便社を辞め、島の郵便局で「自動手記人形」として働き始めるという形で物語は終わります。

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