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「ジョゼと虎と魚たち」タムラコータロー 評価:1点|名作邦画のリメイクアニメは非常に残念な凡庸恋愛映画【アニメ映画】

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ジョゼと虎と仲間たち
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2020年12月25日に公開されたアニメーション作品。

1984年に著された田辺聖子さんの短編小説が原作で、映画通のあいだでは2003年の実写映画版が名作として知られているようです。

とはいえ、印象的なベッドシーンやヒロインが抱える障がいに独特の焦点を当てたことで評判になった実写版とは異なり、アニメ映画はクリスマスに相応しい清らかな純愛ものに仕上がっています。

加えて、主人公とヒロインの声を俳優の中川大志さんと清原果耶さんが務め、お笑い芸人である「見取り図」の二人もチョイ役で参加しているところからも、大衆受けを狙ったのだろうなという感じは拭えません。

そして、そういった大衆受け純愛路線が結果的に奏功していたかと問われれば、かなり失敗していたのではないかと感じました。

著しく退屈というわけではないけれども、どうにも底の浅い凡庸な映画に仕上がってしまっていたというのが感想の大枠です。

監督:タムラコータロー 出演:中川大志, 清原果那, 宮本侑芽
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あらすじ

主人公は男子大学生の恒夫つねお

大学では海洋生物学を専攻しており、趣味は海に潜ること。

メキシコ留学に向けた資金を貯めるため、ダイビングショップでのアルバイトにも励んでいる。

そんな恒夫がダイビングショップから帰る途中、坂道の上から少女を乗せた車椅子が猛烈な勢いで下ってきた。

車椅子から投げ出された若い女性をなんとか抱きしめた恒夫だったが、助けてもらったにも関わらず、その女性の態度は冷たい。

そんな恒夫のもとへやって来たのは年配の女性。

年配の女性は恒夫に礼を言い、夕飯をご馳走するからと恒夫を二人が暮らす家へと上げる。

年配の女性から聞くところによると、若い女性の名前は「くみ子」といい、年配の女性は若い女性の祖母にあたるのだという。

そして、貯金をするためにアルバイトをしていると恒夫が話すと、年配の女性は恒夫にある提案をする。

その内容は、高時給で「くみ子」の面倒を見るアルバイトをしてみないかというもので......。

感想

冒頭でも述べましたが、ベタで浅い恋愛映画という印象でした。

ざっくり言えば、海洋生物学研究のための海外留学という夢を追う恒夫が、足が不自由ゆえに引きこもりがちな生活を送っていた「くみ子」と出会い、彼女を外に連れ出すようになることで「くみ子」の人生が変わっていく、というのが物語の大枠です。

「くみ子」は好きな小説の登場人物になぞらえて自分自身のことをジョゼと呼ばせており、これが映画タイトルの由来となっております。

そして「虎」はジョゼとその祖母にとって恐怖の対象である外の世界の人々を比喩的に表現した文言であり、「魚たち」は恐らくですが、物語の中で増えていくジョゼにとって信頼できる人々のことなのでしょう。

物語の冒頭、ジョゼを乗せた車椅子が坂道を暴走してしまうのも、心ない人に車椅子を押されたからというのがその理由であり、ジョゼが楽しみにしていた祖母との散歩はこれを契機に打ち切られてしまいます。

祖母からすれば、外の世界はそんな心ない人々ばかりで溢れかえっており、足の不自由なジョゼを外に連れ出すなんて危険極まりないというわけです。

ジョゼは散歩に連れ出してもらえないことを不服に思い、一人で外出するのですが、行方不明となったジョゼを探していた恒夫に見つかってしまいます。

しかし、恒夫はジョゼを連れ戻したりしません。

「海を見たい」と懇願するジョゼを海に連れていき、ジョゼは初めて海を肉眼で見て、海水の味を知ります。

台詞回しや登場人物の態度にはやや引っかかるところがありながらも、ここまでは物語としてまずまずという印象でした。

確かに、車椅子を押されて坂道を暴走させられるという危険は足が不自由なジョゼにとって深刻な問題であり、そんな人がいる世間に対して祖母が過敏に反応してしまうのも理解できます。

制御の効かない車椅子に乗せられたまま坂道を猛スピードで下るなんて、想像しただけでも背筋が冷たくなりますし、だからといって、ずっと家に引きこもりっぱなしで全く外に出ない生活というのも息苦しいでしょう。

何気ない外出にも「死」の危険が伴うため、外出もままならない障がい者の女性。

この点はそれなりに生々しい問題提起であり、物語に惹き込んでいく力があります。

散歩を打ち切られて家に引きこもっていると、息苦しくなって、家族に黙って一人で外出してしまう。

そんな心情も十分に共感できます。

ただ、そこからの展開がひたすらに浅いんですよね。

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