【現代純文学】おすすめ現代純文学小説ランキングベスト4【オールタイムベスト】

現代純文学

本ブログで紹介した純文学小説のうち、1980年以降に出版された作品からベスト4を選んで掲載しています。

「純文学」の定義は百家争鳴でありますが、本記事では、社会や人間について深く考えさせられる作品や、人間関係の機微を描いた作品、という緩い定義のもとでランキングを作成いたしました。

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第4位 「いちご同盟」三田誠広

【いのちの価値を知るとき、少年は生まれ変わる】

・あらすじ

主人公は中学三年生の北沢良一(きたざわ りょういち)。

学科の成績は平凡で運動神経もからきしなのだが、ピアノ講師の母親から指導を受けてきたこともあり、ピアノの演奏だけは特技だといえる。

しかし、そのピアノも最近は上手くいっていない。

良一は譜面が要求するリズムを乱してでも感情豊かに弾きたいのだが、譜面に厳格な母親からは突き放されている演奏法であり、自由に演奏させてくれない母親への苛立ちが募っていた。

レッスンを受けている母親ではないピアノ講師や、中学校の音楽教師は自分の自由な演奏を褒めてくれるのだが、高校の音楽科を受験して合格するためには正確さを優先する演奏法を磨かなければならないという点は彼女たちも認めるところ。

普通科を受験したのではクズのような学校しか受からないし、かといって、いまの演奏手法とレベルでは音楽科にだって受かりようもない。

未来に希望が持てない、陰鬱な気分に突き動かされ、良一はしばしば、最近飛び降り自殺した少年の住んでいたアパートに足を運び、彼が踊り場の壁に遺したメッセージを見るのだった。

そんな折、良一は同級生の羽根木徹也(はねき てつや)から「自分が野球の試合で活躍している姿をビデオに撮ってくれ」と頼まれる。

野球部の四番エースであり、女子にもモテる羽根木は良一と全く異なる世界の住人。

良一は驚きながらもこの依頼を承諾する。

羽根木が自身の試合を撮って欲しかった理由、そのビデオを見せたい相手。

それは、不治の病によって入院中の幼馴染、上原直美(うえはら なおみ)だった……。

・短評

高校受験が熾烈を極めていた時代の中学三年生が主人公。

繊細な時期に過酷な「競争」に晒される少年の視点から「生きる」意味を問う青春純文学作品です。

主人公である良一が属するのは「郊外に居住し東京に通勤するサラリーマン一家の核家族」であり、これもまた、当時急激に増加して「典型例」となりつつあった家族の姿。

旧い時代の情緒や共同体性が完全に消え去り、新しい日本人が生まれてくる、その渦中を舞台にした作品だといえるでしょう。

時代の変わり目にあって「思春期」を迎える主人公の心理はもちろん、葛藤に苛まれております。

そんな良一が、羽根木徹也と上原直美との交流を通じてその内面を変化させていく、その過程が本作の見どころとなっております。

「頼む。ただの試合じゃないんだ。こいつには、人の命がかかっている」

羽根木は直美の残り少ない「命」を充実したものにさせようと、こんな台詞を恥ずかしげもなく言い放つくらい、なりふり構わず行動する少年。

直美は半ば自分の死を冷静に受け入れながらも、もう半分の感情では羽根木や良一のような「普通」の中学生として「生きる」存在を羨ましく思っている少女。

他者の「命」さえ輝かせようと必死な羽根木の熱情と、生きたいのに「死」を選ばざるを得ない直美からの羨望。

二人の「生きる姿」から刺激を受け、良一は「生きる」ことに向き合い、心構えや行動を変えていきます。

様々な出来事や他者との交流を通じて、良一の胸に秘めるものがゆっくりと温まっていくような、それでいて決して中だるみせず、読者が良一の精神的成長と歩調を合わせて一緒に進んでいけるような、絶妙なテンポ感には夢中になること間違いありません。

思春期の葛藤とその超克を描く、王道青春純文学の佳作と呼ぶに相応しい作品です。

・感想記事はこちら

「いちご同盟」三田誠広 評価:3点|思春期の繊細な心情とその成長を描いた病室ボーイ・ミーツ・ガール【青春純文学】
1990年に出版された小説で、芥川賞作家である三田誠広さんの代表作でもあります。中学校の国語教科書に掲載されていたほか、集英社のナツイチ(夏の100冊)にも長らく選ばれ続けていたので、タイトルをご存じの方も多いでしょう。近年でも大人気漫画「四月は君の嘘」の作中でオマージュされるなど、長年にわたり根強い人気を誇り、様々な作家に影響を与えている作品となっております。都市郊外に居住する核家族的な生活感が日本の文化的メインストリームとして定着し、そのうえ、熾烈な受験戦争で生徒たちの精神がすり減らされていた1980年代。そんな時代に、自殺という選択肢に対して仄かな憧れを抱く少年と、不治の病で入院しており、死期が近い少女との、ひと夏の淡く切ない交流を描くという内容の小説。長期入院している少女と、身体は健康だが心に悩みを抱える少年のボーイ・ミーツ・ガールという「病室もの」的なジャンルを開拓した小説でもあります。勉強、スポーツ、生きるということ、死ぬということ、人生とは何か。よく言えば普遍的、悪く言えば平凡な要素がテーマとなっており、物語構成と...

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