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【大企業病研究】日本の大企業が新卒一括採用を続ける理由について

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新卒一括採用
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就活シーズン真っ只中ということで、2022卒の大学生たちはセミナーや面談・面接に飛び回っているのではないでしょうか。

といっても、コロナ禍の中ではオンライン面接等が主流になりつつあるという話も聞きますので、今年はステイホームな就活になっているのかもしれませんね。

さて、そんな「就活」ですが、大量の新卒者を大学卒業直後の4月1日に一斉入社させる「新卒一括採用」というシステムが日本独特であることはよく知られています。

この新卒一括採用制度には根強い批判もあるのですが、本稿では、なぜこの新卒一括採用制度が惰性のように延々と続けられるのかという理由について考察していきます。

結論から述べますと、それは「新卒一括採用による失敗が経営者の視界に入りづらいから」です。

新卒一括採用された若者たちはまず、最も下っ端の人員として各部署に配属されます。

このとき、あまり芳しくない新卒者が採用され、ある部署に配属されたとしても、その悪影響は経営者に対して自動的に秘匿されます。

なぜなら、その職場の管理職・中堅層は、業務のパフォーマンスを落とさないよう、その新卒者の落ち度を補おうとするからです。

新卒者が大きなミスをしていたとしても、業務のレポートライン上、管理職から見ればそれは中堅層の失敗になるので、中堅層は必死になってカバーを行います。

仮に中堅層がカバーを怠ったり、そのカバー能力が低かった場合、管理職がカバーの役割を負います。

なぜなら、管理職の更に上層、例えば部門長から見た場合、たとえ真因が新卒者のミスであっても、レポートライン上、管理職の失敗であるように認識されるからです。

こういったカバーの連鎖により、経営者にレポートされる頃には新卒者の落ち度が修繕され、全く認識できないくらいに薄まっているのです。

こうした理由により、新卒採用失敗の影響はまず短期的に経営陣の目から覆い隠されます。

そして、中期的にもその影響は秘匿されてしまいます。

なぜなら、新卒者たちの中でもまだマシな人材が中核的な業務を担うようになり、使えない人材は閑職に追いやられていくからです。

使える人材を中核的なポジションに、ダメな人材は閑職に。

新卒一括採用を行っているような大企業にお勤めの方々にならば理解できるでしょうが、こうした人員配置は年次が5年未満の場合であってもガンガン適用されていきます。

この結果、経営にほとんど影響せず、そのために経営陣と関わることのないような場所に使えない人材が幽閉されていき、使える人材だけが馬車馬のように働いて経営陣の視界へと露出していきます。

そういった相対的な有能人材が中核部署で昇進していくので、ある年の新卒採用における失敗は中期的にも秘匿されます。

こういった措置が毎年のように繰り返された挙げ句、超長期的とまで形容できる時間が経過したあと、ようやく「採用失敗人材」の姿が経営者の視界に入るようになります。

惰性で芳しくない採用を続け、場当たり的に横置きしてきた「元」使えない新卒者にして「現」使えない中堅・ベテラン層がどうしようもないくらい溢れてくると、そういった人材が半中核的な部署にまで侵食してくるようになります(有能人材の比率が低くなってくるため、それなりに重要な部署ですら有能人材で埋められなくなっていく)。

ここでようやく。経営者から見た業務のパフォーマンスが低下することを通じて経営者の目にも(それこそ何十年前の)失敗が明らかになります。

中核的な業務の質が低下していくため、会社の業績が傾き、経営者がリストラに乗り出すことで人材の刷新が図られるわけです。

現在、三菱重工や日本製鉄といった大企業が苦難に直面しておりますが、単に付加価値の高い業種の変遷(重厚長大→軽薄短小→IT)という要因だけでなく、この失敗人材滞留サイクルの終期にあるということもその背景にあるのではないでしょうか。

そうでなければ、大型旅客機ビジネスに手を出して失敗したり、製鉄所の再編が著しく遅れたりするような、明らかな経営判断ミスが起こるはずもなく、もっと的確に流行業種の変遷に対応していたはずです。

(三菱重工であれば社会インフラ系の強化、日本製鉄であれば高付加価値品種への集中など)

さて、ここまでは暗黙のうちに経営者という項を定数として扱ってきましたが、経営者も変数であり、代替わりをしていきます。

新卒採用に失敗している場合「相対的に有能な人材」の絶対的能力も低下しているので、経営者に就任する人物の質もゆっくりと低下していくという作用があります。

そういった企業の典型は、シャープであり東芝でしょう。

あまりに無能なので、重要な決断ができず、不正会計に手を染めるわけです。

最後は下がりきった株価を見た外資等に買収され、新しい株主主導で経営者ごと刷新されてしまいます。

そして面白いのが、リストラを繰り返してさえ、新卒採用はまだ止められないことです。

その理由は、経営危機の際に構造上リストラされる社員の属性にあります。

経営危機に陥った日本企業は、まず中高年に対して早期退職を促します。

なぜでしょうか。

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