【大人の童話】小説 「モモ」 ミヒャエル・エンデ 星2つ

モモ
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エンデはドイツの作家ですが、70年年代や80年代における日本の学校教育をどことなく想起させますね。

このあたりが本作の日本における人気の理由なのかもしれません。

行き過ぎた管理教育が子供たちから自由な発想や柔軟性を奪ってしまい、人間として本当に大切な価値観の育成を妨げてしまう。

これ自体は使い古された議論ですが、結局のところ、管理教育は「役に立つ」という意味でも失敗してしまったのではないかと、いまになって思います。

1990年代から現在まで続く日本経済の停滞は結局、70年代や80年代の社会を前提として、そのときの社会に適合する人材を育てた結果、「70年代や80年代以降」の社会に移行する下地を失ってしまったという側面も大きいのでしょう。

要は、当時の社会にとって「役に立つ」人材を育むことには成功したけれど、それは当時の社会を上手く回していくために「役に立つ」人材だっただけで、当然ながら、当時の社会を革新するような人材ではなかった。

だから、大なり小なり「当時の社会」を崩しつつ革新していった諸外国に比べて経済さえ成長していない。

そういう状況に陥ってしまっているのではないでしょうか。

ここで私が言うところの「人材」は、ごく一部の時代の寵児たちだけを指しているのではありません。

組織/会社の兵隊にならざるを得ない多くの凡人たちも含んでいます。

同じ兵隊になるにしろ、旧弊な組織やリーダーのもとで役に立つような兵隊ではなく、新進気鋭の組織やリーダーのもとで役に立つ「新しい兵隊」を養成することで、下からも革新を補助していくべきだったのでしょう。

「古い兵隊」と「新しい兵隊」の違いというのは、もちろん、ITリテラシーや英語という技能も重要ですが、もっと根本的な、新しいリーダーの考え方をさほど抵抗なく受け入れられる価値観/マインドの部分なのだと思います。

「現在の社会」に過剰適応した人材ばかり育てることで、リーダーにしろ兵隊にしろ「新しい社会」をつくる人間が不足し、結果的には全員が「役に立たない」人間になって金銭的にも心の余裕的にも貧乏になっていく。

このスパイラルになんとか歯止めを掛けたいですね。

そういう意味では、いまさら「IT」とか「英語」とか「コミュニケーション能力」とか言っていることにもやや危機感を覚えます。

これって「いまの社会で役に立ち」始めてからもうずいぶんと時間が経っていて「いまなら役に立つ」ことだと既に確定しきったことですよね。

そうなると、いま教育を受けている子供たちが社会に出るころには時代遅れになっているスキルや価値観かもしれません。

あるいは、学校で教えられた「IT」「英語」「コミュニケーション能力」に凝り固まってしまって、その次の価値観を受け入れがたくなってしまうかもしれません。

学校で教えられたような「IT」「英語」「コミュニケーション能力」を克己して、新しい時代に重要となる「X」「Y」「Z」を切り拓くことができる人材が次の時代をつくる。

それは再び、外国の手によって為されてしまうのかもしれません。

そういう意味では「探求心」や「自立心」って本当に大事だなと思います。

新しいことを追い求め、権威に盲従するのではなく自分自身で考えて行動する。

結局、「X」「Y」「Z」を創り出したり、そこまではできなくても「X」「Y」「Z」に早めに気づいて学んだり、それもできなくたって、少なくとも「X」「Y」「Z」な社会を滑らかに受け入れたりする。

それを可能にするのが「探求心」や「自立心」なのでしょうし、個人個人としても、そうやって「次の社会」に適合できる方が幸せですよね。

そんな「探求心」や「自立心」を涵養する手段こそ、子供ならではの自由な遊びであり、それは「教育施設」とは遠く離れた場所にある概念なのでしょう。

「探求心」や「自立心」を奪われ、幸福な時間を過ごすコツを習得できないまま「教育施設」において即物的で近視眼的な「役に立つ」ことばかりを押し込められる子供たちの惨状。

その様子を童話の中で描いたエンデの鑑識眼は確かなものだとしか言いようがありません。

さて、ここまでは本作の面白い要素を深掘りしてきましたが、それでも本作が星2つである理由を述べますと、それは端的に、上述したような部分以外がつまらないからです。

いくつかのエピソードや比喩は面白いのですが、エンタメ的な物語としては進行が遅く冗長で、エキサイティングだったりシリアスだったりする要素に欠けます。

序盤は登場人物紹介に何章ものページ数を費やし、ようやく物語が動き出すのは第6章から。

そして、物語の中では一応の盛り上がりどころであるモモと灰色の男たちとの追跡/逃亡劇や対決も実に単調で面白みに欠けます。

物語を楽しむための小説として読むというよりは、一種の社会評論として枢要な部分だけを集中して読み、むしろ物語部分は読み飛ばしていくくらいが本書の良い読み方なのでしょう。

うまい比喩を使った社会批評としては良いものですが、物語としての良い部分はなく、両要素の折衷として星2つ(平均的な作品)といたします。

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ミヒャエル・エンデ (著, イラスト), 大島 かおり (翻訳)

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