「イニシエーション・ラブ」乾くるみ 評価:2点|1980年代の世相を背景に大胆なトリックで衝撃のラストを演出した人気作【恋愛ミステリ小説】

2004年に発売された小説で、2005年版の「本格ミステリ・ベスト10」の第6位、「このミステリーがすごい!」の12位にランクインするなど、ミステリ小説としての評価が高い作品です。

売上としてはミリオンセラーを記録し、2015年には映画化されるなど、非常に息の長いロングセラーの人気作となっており、著者である乾くるみさんの代表作だといえるでしょう。

そんな本作を読んでみた感想ですが、宣伝文句の「最後2行の衝撃」が面白いことは確かである一方、それまでの経過は凡庸な恋愛小説のそれであり、やはりミステリ小説を推理しながら読んでいける人向けの作品だと感じました。

ミステリ小説を読むと、謎が解ける瞬間は面白いけれどそれまではイマイチという感想を抱くことが多いので、あまりミステリ小説の読書に向いていない人間なのではないかと思う今日この頃です。

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あらすじ

静岡大学に通う内気な大学生、鈴木夕樹すずきゆうきが主人公。

ある日の合コンで鈴木は成岡繭子なるおかまゆこという女性に一目惚れする。

紆余曲折あって成岡と付き合うことになり、深い関係を築くことに成功した鈴木。

時は巡り、地元静岡の企業に就職した鈴木だが、幸か不幸か同期で二人しか選ばれない東京赴任者に選抜されてしまう。

東京に行っても繭子との関係を続けたいと想い、そのための努力もする鈴木だったが、東京の職場でも良い出会いがあり......。

感想

本ブログにしてはあらすじが非常に淡白なのですが、記事冒頭でも述べた通り物語としては「最後の二行」以外にこれといった見せ場のない作品ですので、ダイジェスト的に書こうとすると強調すべき文脈がなくて困ってしまいます。

物語は大きく前半部(Side-A)と後半部(Side-B)に分かれており、前半部は大学生の鈴木と成岡が合コンで出会い、デートを重ねながら身体の関係も持つようになり、最後は聖夜のレストランデートで締めという構成。

初デートにスーツで来る鈴木という極端な非モテ陰キャぶりはやり過ぎではないかとも思うのですが、1980年代を舞台にした小説ということで、その時代を生きていない身としては、この時代の非モテ男性はこれくらいしてしまうのかなと、あまりリアリティラインの感覚に確信がないまま読んでいました。

合コンで出会った処女感のある読書好きな女性に非モテ陰キャ男子大学生がアプローチして見事童貞を卒業するという流れはいかにも2000年代の2chスレまとめでありそうな展開で、当然、面白くなくはないのですが、ベタだなという印象を受けました。

後半部は社会人鈴木の物語であり、東京から足繁く静岡に通って繭子との関係を保とうとする一方、毎週末静岡に帰るような生活に疲労感も覚えており、そんな中で鈴木が東京の職場でも良い女性と出会うという話になっております。

恋愛の顛末は予想通りといえば予想通りの展開ですが、その中で描かれる鈴木の職場での振る舞いや恋愛における態度などが「最後2行の衝撃」への布石となっている点に本書の特長があります。

前半部と同じく後半部も1980年代を舞台にしているということで、物語の背景や小道具として用いられている1980年代の事件や有名人、有名作品もヒントになっていたようですが、これはその時代を生きた人にしか分からないでしょう。

私自身も後からネタバレを読んでなるほどそんなことがあったのかと思った次第です。

なお、後半部で描かれる様々なエピソードも若手社会人あるあるばかりで、決して描き方が酷いとかそういうことはないのですが、何しろ盛り上がりどころが特にないという点が純粋に残念ではあります。

ミステリのトリックになっている点以外はすらすらと読むことができ、ミステリのトリックにはびっくりして、それで読書終了ですという作品。

悪くはないのですが、どうにもインパクトに欠ける印象で、ミステリ的なトリックが凄かった、というだけで小説に対して高評価を付けられる読者にはお薦めなのでしょうが、物語としての山あり谷あり感であったり社会や人生を上手く描いている感が欲しいという読者には物足りない作品でしょう。

本ブログではどうしても物語面を重視してしまうので、評価としては2点(平均かそれ以下の、凡庸な作品)となります。

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