本ブログで紹介したアニメの中からベスト5を選んで掲載しております。
私の好みもあり、バトルやファンタジー、ハーレムというよりはヒューマンドラマをテーマとした作品が中心となっております。
第5位 「イヴの時間」吉浦康裕
【人間とアンドロイドとの共存を模索する温かな物語】
・あらすじ
ロボットが実用化されて久しく、アンドロイドが実用化されて間もない時代。
アンドロイドは生活に浸透しつつあるものの、一種の「家電」のように見なされ、人間にとって都合の良い奴隷のように扱われていた。
そんなある日、高校生のリクオは、ふとしたきっかけで「イヴの時間」というカフェを発見する。
路地裏に入口があり、看板も出していない「イヴの時間」に足を踏み入れたリクオは、「イヴの時間」のカウンター前に置かれているボードに書かれた文章を読んで仰天する。
そこに記載されていた「イヴの時間」の特別なルール。
それは「人間とアンドロイドを区別しない」こと。
実際、「イヴの時間」では、アンドロイドたちが人間のように振舞っている。
感情を見せず機械的に動き、人間に奉仕する存在だったはずのアンドロイド。
そんなアンドロイドたちが、ある者は和気藹々と、ある者は静かに、自分の時間を楽しんでいる。
あり得ない事態に戸惑うリクオだが、様々なアンドロイドとの交流を通じ、リクオのアンドロイドに対する見方は劇的に変化していく。
しかし、そんな「イヴの時間」には、反ロボット団体である「倫理委員会」の魔の手が迫っていて......。
・短評
表の世界ではまるで感情を持たないロボットのようにしか振る舞わないアンドロイドたちが、「イヴの時間」ではその感情を吐露し、葛藤を露わにする。
視聴者はリクオの視点を通じてアンドロイドたちの葛藤を覗き見ることで、なるほど、「感情を持つロボット」であるアンドロイドが世の中に浸透する過程というのはこんな感じなのかなと思わさせられる。
この点が本作の魅力であり、感動の源泉となっております。
本作で最初に「おっ」と思わさせられるのは、リクオの家で働くアンドロイドのサミィが「イヴの時間」で発した「似ている」という言葉の真意をリクオが理解する場面。
当初、リクオはこの台詞を「アンドロイドは人間に似ている」という意味で解釈するのですが、サミィが意図していたのは真逆の意味、つまり、「人間ってアンドロイドに似てるよね」ということだったのです。
この皮肉な思想には、アニメを見ながら思わずにやりとしてしまいました。
考えてみれば当たり前ですが、人間は人間を基準にして物事を考えています。
つまり、「猿は人間に似ている」だとか「犬は人間のように賢い」だとか、そういう思考です。
しかし、猿の立場からすれば「人間は猿に似ている」になるでしょうし、犬の立場からすれば「人間は犬のように賢い」になるでしょう。
アンドロイドも同じというわけです。
そして、サミィの行動からは、サミィが以下のように考えているということが読み取れます。
「人間はアンドロイドにとてもよく似ているけれど、どこか違う。人間をもっと理解して、もっと喜ばせたい」
サミィの「心優しさ」に思わずくすっときてしまうのではないでしょうか。
本作にはこうした、「心優しいアンドロイドたちが人間に寄り添おうと頑張る」を起点にした面白さが散りばめられておりまして、アンドロイド同士の恋人が登場したり、試運転中の育児アンドロイドが登場してその葛藤を垣間見ることができたり、アンドロイド不信を拭い去ったリクオがアンドロイド関連の事件によって捨て去ったピアノという夢を再び取り戻したりと、ほろりとなってしまう場面が多い作品です。
アンドロイドが人間生活に浸透する「過渡期」を意外だけれど納得できる観点から描いており、そういった微妙な時代ならではの繊細なドラマに心揺さぶられます。
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