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政治
【住宅政策の手軽な概説書】新書「住宅政策のどこが問題か」平山洋介 評価:4点【政治学】
目次第1章 住宅所有と社会変化第2章 持ち家社会のグローバル化第3章 住まいの「梯子」第4章 住宅セーフティネット感想あまり注目されない分野である住宅政策に光を当てた新書。住宅政策という個別の政策分野への理解が深まるだけでなく、戦後日本における経済政策の全体的な特徴や、これから日本が進むべき道も見えてくる良書です。第1章では、日本の住宅政策の概要が分析されます。日本の住宅政策の特徴が、就職→結婚→出産(夫が働き妻が専業主婦)という「標準」ライフコースを想定し、そのコースに当てはまる人を優遇していることが述べられます。若年層や新婚世帯向けの公団住宅の供給、住宅ローン減税のような家族の持ち家取得援助などがその具体的な政策です。「標準」ライフコースを辿る人々を小規模賃貸から大規模持ち家へという住宅の「梯子」を上っていく単線コースに誘導する仕組みが整えられてきたわけです。日本全体の所得の伸びとともに、新中間層となった人々がその梯子に殺到していったのが戦後の流れではありますが、そういった「標準」ライフコースを歩めなかった人々が住宅政策から取り残され、住宅確保において不利な立場に置かれ続けているこ...
【社会学】「孤独なボウリング」 ロバート・パットナム 星4つ
1.孤独なボウリング「社会関係資本」という概念に光をあて、様々な分野に影響を与えた本です。著者のパットナム教授はこの本で一躍スター研究者となりました。ご近所づきあいや会合などの社会的紐帯の減少という、誰もが個人としては感じていることを米国全体というスケールで分析し、その原因、そして影響を社会的・政治的なものに結びつけた大著。もはやどの分野でも無視できなくなった「社会関係資本」をアカデミック界に知らしめた作品として、非常に読みごたえがありました。2. 感想本書は5部構成となっており、そのうちメインとなるのは第2部から第4部までです。 第2部では、社会関係資本の濃淡が20世紀のあいだにどのように推移してきたかが膨大なデータとともに語られます。政治参加・市民参加・宗教参加・職場でのつながり・慈善活動・インターネット。わたしたちをとりまくあらゆる「繋がり」が分析の対象となりますが、驚くことに、どの分野を分析しても結論はただ一つに収斂していきます。それはすなはち、米国における「社会関係資本」が、20世紀初頭に増加→大恐慌期に一時的減少→第二次世界大戦~60年代まで増加→十数年の停滞→現在まで続く...
「教育行政の政府間関係」青木栄一 評価:2点|教育行政において地方政府が中央政府に隷属しているという通説に対する挑戦【政治学】
現在、東北大学で准教授を務めておられる著者の博士論文に改稿を加えたもので、中央政府―地方政府の関係性から教育行政においてどのように政策決定がなされているかを研究した本です。私にとって新たな発見もありましたが、全体的に著者の主張の重要性が十分に論証されていたとは言い難いと感じました。概要先行研究において、教育行政は中央政府(=文部省)が機関委任事務や国庫負担金といった制度を通じて地方政府(=都道府県、市町村)を統制してきたと考えられてきた。しかし、実際には地方政府にも一定の自律性と裁量があり、独自政策を実行する余地がある。それゆえ、中央政府も、そういった地方政府独自の取り組みや、地方政府による様々な要望を加味したうえで政策を決定している。そのため、地方政府も教育行政の政策形成に影響を及ぼしており、また、中央政府と地方政府の力関係は一方的なものではなく、双方向的に影響を与え合う類のものとなっている。目次第Ⅰ部 制度分析第1章 第Ⅰ部の課題設定第2章 戦後日本における公立学校施設整備政策の変遷第3章 国庫支出金制度の変容――時系列分析第4章 市町村公立学校施設整備事業の財政統計分析第5章 財...