青春小説

宮本輝

「青が散る」宮本輝 評価:5点|テニスと恋愛、勝利と敗北、情熱と哀愁、青春の全てを表現した最高傑作【青春純文学】

1970年代から令和の現在にかけて第一線で活躍し続ける純文学作家、宮本輝さんの作品。 1970~80年代には「泥の河」で太宰治賞、「螢側」で芥川賞、「優駿」で吉川英治文学賞を獲得し、2010年代にも「骸骨ビルの庭」で司馬遼太郎賞、「流転の海」で毎日芸術賞を獲得しており、その勢いは留まるところを知りません。 その功績が認められ、2010年には紫綬褒章、2020年には旭日小綬章を授与されるなど、格の違う文化的功労者という立場を確固たるものにしています。 そんな宮本輝さんの作品の中でも、本作は無冠の作品。 松田聖子さんの「青いフォトグラフ」を主題歌にドラマ化がされており、人気作であることは間違いないのですが、宮本さんの代表作と呼ぶ人はすくないでしょう。 しかしながら、私の個人的な読書経験史上において、本作は一、二を争う名作として燦然と輝いております。 新設大学の一期生として入学した主人公を中心とした、せつなくて情熱的な青春群像劇。 「青春小説」というカテゴリにおいて、日本の小説史上1番の面白さと趣深さを持っていると言っても過言ではない作品です。 ...
三島由紀夫

「仮面の告白」三島由紀夫 評価:2点|同性愛者であることの苦悩と官能が青年の人生を蝕んでいく【古典純文学】

「潮騒」や「金閣寺」等の作品で知られ、戦後を代表する作家の一人として挙げられることが多い三島由紀夫の著した小説。 三島由紀夫を文壇の寵児へと押し上げた記念碑的作品であり、代表作を一つ選ぶとすれば本作か「金閣寺」になるというくらいの有名作品です。 同性愛を描いた刺激的な作品ということで、私もその革新性に期待して読んでみたのですが、いまとなっては凡庸だなというのが率直な感想。 小難しい書きぶりは良くいえば芸術的で妖艶なのでしょうが、個人的には無駄に装飾的なように思われましたし、自分自身が同性愛者であることを主人公が徐々に理解しながら苦悩する、という筋書きにもそれほど衝撃を受けませんでした。 つまらないわけではないですが、今日において特段に持て囃されるべき作品かと言われれば、それは違うという印象です。 あらすじ 病弱な身体に生まれた「私」は、祖母によって外遊びを禁じられ、祖母の眼鏡に適った女友達とばかり遊ぶ幼少期を過ごすことになる。 そんな「私」はしかし、幼い頃から女性に惹かれることがなく、魅力を感じるのは専ら逞しい男性の肢体ばかりであった。 ...
小説特集

【エンタメ小説】有名エンタメ小説低評価批評集【閲覧注意】

評価1点(最低評価) ・珍妙な登場人物たちの謎言動記録 ・寒々しい恋人描写と軽薄なSF展開 ・中学生の気持ちを分かっているつもりの作者 ・お前はいったい何を言いたいんだ? ・猫みたいな彼女が理想なんて気色悪いよ ・心を操ることができたらミステリは成立しない ・冗長で稚拙で安っぽくて何もない青春 ・高校生男女が出逢えば物語になるわけではない ・儚くて繊細な少女を描いたつもり
☆☆☆☆(小説)

【青春夜間歩行】小説「夜のピクニック」恩田陸 評価:4点【青春小説】

長期間に渡って小説界の第一線で活躍する作家、恩田陸さんの作品。 2016年に「蜂蜜と遠雷」で直木賞を獲るまでは本作が筆頭の代表作として挙げられることが多かったように思います。 第2回本屋大賞を受賞してから爆発的に売れ始め、まさに発掘された名作となった作品。 その内容は、高校生三年生たちが80kmの夜間歩行に挑むというだけの物語。 しかし、その過程で繰り広げられるささやかな心理的すれ違いについての描写が超一級品という、特異な魅力を持った作品です。 輝きと後ろめたさの両方を伴う、未熟な友情・恋愛の機微に誰もが郷愁を感じるのではないでしょうか。 派手な展開ではなく、耽美で繊細な心理描写と叙情的な夜間歩行の風景描写で魅せる作品。 あまり小説を読んだことがない人でも、無類の小説好きでも感動できる小説です。 あらすじ 甲田貴子(こうだ たかこ)が通う学校には「歩行祭」という特別な行事がある。 3年生全員が体育用のジャージを身に纏い、夜を徹して80kmもの道のりを歩くという行事。 当日、友人である遊佐美和子(ゆさ みわこ)...
小説特集

【海外エンタメ小説】おすすめ海外エンタメ小説ランキングベスト3【オールタイムベスト】

本ブログで紹介したエンタメ小説の中からベスト3を選んで掲載しています。 「エンタメ小説」の定義は難しいところでありますが、本記事では、肩の力を抜いて楽しめる作品でありながら、同時に深い感動も味わえる作品を選ぶという方針でランキングをつくりました。 第3位 「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス 【知性を得た元知的障がい者の幸福と苦悩】 ・あらすじ チャーリィ・ゴードンは知的障がい者で、ビークマン大学知的障がい者成人センターに通いながらパン屋で下働きをしている。 読み書きも碌にできない彼だったが、ある日、ビークマン大学の二―マー教授とストラウス博士からある実験への協力を求められる。 それは、チャーリィの知能を劇的に高める手術のドナーになって欲しいというものだった。 手術を受けたチャーリーの知能はゆっくりとだが確実に向上していき、最終的には天才的な知能を得ることに成功する。 しかし、だからこそ、彼には苦難の時間が訪れるのだった。 あまりの知能の違いから人間関係に破綻が生じ始め、社会の欺瞞に気づくたびに葛藤する。 ...
創作論・物語論

【小説を売る工夫の数々】教養書「拝啓、本が売ません」額賀澪 評価:2点【ビジネス書】

タイトルからは内容が判りづらい本なのですが、発行部数の伸びない作家が編集者と一緒に「本を売る」ことを得意とする人々にインタビューをして回るというもの。 そのインタビュー記録とそこから著者が得た気づきが載っている、いわばインタビュー集&著者エッセイのような本です。 そんな本を書く著者のプロフィールなのですが、こんな人が「本が売れない」ことに悩むなんてという経歴を持つ作家さんです。 私立の中高一貫校から日芸(日本大学芸術学部)の文芸学科に進学。 卒業後の就職先は広告代理店で、在職中に若くして松本清張賞と小学館文庫小説賞という二つの新人賞を別々の作品で受賞してデビュー。 翌年発売した「タスキメシ」は高校の課題図書に選ばれるという、まさに文芸の王道を進んできた人物。 高校在学中にも全国高等学校文芸コンクール小説部門で優秀賞を受賞しているなど、まさに「野良育ちとは違う」感のある小説家だといえるでしょう。 しかし、こんな黄金ルートを歩んできた作家でも「拝啓、本が売れません」を書かなければならないほどの窮地にあることが本書の序盤で明らかになります。...
トマス・H・クック

【米国流の青春ミステリ】「夏草の記憶」トマス・H・クック 評価:2点【アメリカ文学】

日本では「記憶」三部作で有名なアメリカのミステリー作家、トマス・H・クック。 「緋色の記憶(原題:The Chatham School Affair)」でエドガー賞を獲得し、アメリカでも一定の評価を得ております。 本作「夏草の記憶(原題:Breakheart Hill)」も日本では記憶三部作として売り出された三作品の一角。 (原題を見ての通り作品間には何の関連もないのですが、プロモーションのため強引な訳出がされています) その内容はアメリカ風青春ミステリといった嗜好の作品であり、内気な男子高校生ベンの美人転校生ケリーに対する恋愛を軸に話が進みますので、まるでよくある日本の文芸作品を読んでいるかのような錯覚に陥ります。 もちろん、青春モノとしてだけではなくミステリとしても日本国内で評価されておりまして、2000年の「このミステリーがすごい! 海外編」では3位に入っております。 そんな「夏草の記憶」ですが、普通だったというのが端的な感想です。 決定的な悪い点はなく、良い点は微妙にある作品。 3点(平均以上の作品・佳作)と2点(平均的な作品)...
辻村深月

「オーダーメイド殺人クラブ」辻村深月 評価:2点|女子中学生が抱く思春期ならではの葛藤と奇妙な「殺人」依頼【青春小説】

メフィスト賞からデビューし、吉川英治文学新人賞、直木賞と、エンタメ作家成功の王道を驀進する辻村深月さんの作品。 集英社のナツイチ(夏の百冊)にも選ばれている、定評のある小説です。 ただ、タイトルのインパクトから想像していたよりも地味な話でありまして、中学生のありがちな葛藤や悩みの話に過ぎなかったのではないか、というのが正直な感想です。 あらすじ 主人公、小林アンは中学二年生。 母親譲りの恵まれた容貌の助けもありクラスの中心的グループに所属しているが、実は猟奇的な事柄に興味があり、町の本屋にある怪我をした人形の写真集「臨床少女」が彼女の愛読書。 恋愛がらみの人間関係で急に態度が変わる友人たちや、甘ったるくて何も考えていない母親との生活にうんざりしていたアン。 ある日、河原で地味なクラスメイトの徳川勝利がビニール袋を蹴っている姿を目撃する。 彼が去ったことを見届けた後、ビニール袋を掴むアン。 その中身は「肉」のようなものだった。 自分と同じ嗜好を持つ徳川に惹かれ、アンは彼に接近する。 そして、アンは徳川にアン自身の殺害を依...
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