青春小説

スポンサーリンク
小説特集

【エンタメ小説】おすすめエンタメ小説ランキングベスト10【オールタイムベスト】

本ブログで紹介したエンタメ小説の中からベスト10を選んで掲載しています。「エンタメ小説」の定義は難しいところでありますが、本記事では、肩の力を抜いて楽しめる作品でありながら、同時に深い感動も味わえる作品を選ぶという方針でランキングをつくりました。第10位 「時をかける少女」筒井康隆【学園SF時間移動ジャンルを生み出した読み継がれる古典】・あらすじある日、中学3年生の芳山よしやま和子かずこは、同級生の深町ふかまち一夫かずお・浅倉あさくら吾朗ごろうと一緒に理科室の掃除をしていた。掃除を終え、隣の理科実験室に用具をしまおうとすると、理科実験室から奇妙な物音が聞こえてくることに和子は気づく。恐る恐る理科実験室の扉を開ける和子。しかし、和子が明けた瞬間に中にいた人物は別の扉から逃亡したようで、残っていたのは液体の入った試験管だけ。しかも、試験管の一つは割れて液体が床にこぼれている。そして、液体から微かにラベンダーの香りがすることに気づいた瞬間、和子は失神してその場に倒れ込んでしまう。そんな不思議な体験をした和子は、その数日後、悲劇に襲われる。登校中、信号無視のトラックが和子に突っこんできたのだ。...
谷川流

「涼宮ハルヒの直観」谷川流 評価:1点|9年半ぶりに出版されたシリーズ最新作は深い失望を伴うミステリ風の駄作【ライトノベル】

ライトノベル界隈において、「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズは2000年代(ゼロ年代)を代表する伝説のビッグタイトルとして知られています。その9年半ぶりの新刊が本作、「涼宮ハルヒの直観」です。前作までの僅か11作品で累計2000万部以上の発行部数を誇り、恐らく、1巻当たりの発行部数では全ライトノベルNo.1でしょう。2006年にアニメ化された際には社会現象にもなり、90年代の「新世紀エヴァンゲリオン」と対比されながら、「エヴァ世代」「ハルヒ世代」と区分されることもあるほどの影響をサブカルチャー界隈にもたらしました。まさに時代/世代を代表する作品なのです。そんなシリーズの、文字通り満を持して発売された本作ですが、正直のところ、内容はかなり肩透かしであり、失望いたしました。語るのも悔しい作品ですが、読了したからには感想を書きたいと思います。収録作品・あてずっぽナンバーズ(p3-35)・七不思議オーバータイム(p36-127)・鶴屋さんの挑戦(p128-411)あらすじ(唯一の長編作品である「鶴屋さんの挑戦」のあらすじです)夏もほど近い、新緑の季節。いつも通り部室でたむろするSOS団のもとに一通の...
創作論・物語論

【小説を売る工夫の数々】教養書「拝啓、本が売ません」額賀澪 評価:2点【ビジネス書】

タイトルからは内容が判りづらい本なのですが、発行部数の伸びない作家が編集者と一緒に「本を売る」ことを得意とする人々にインタビューをして回るというもの。そのインタビュー記録とそこから著者が得た気づきが載っている、いわばインタビュー集&著者エッセイのような本です。そんな本を書く著者のプロフィールなのですが、こんな人が「本が売れない」ことに悩むなんてという経歴を持つ作家さんです。私立の中高一貫校から日芸(日本大学芸術学部)の文芸学科に進学。卒業後の就職先は広告代理店で、在職中に若くして松本清張賞と小学館文庫小説賞という二つの新人賞を別々の作品で受賞してデビュー。翌年発売した「タスキメシ」は高校の課題図書に選ばれるという、まさに文芸の王道を進んできた人物。高校在学中にも全国高等学校文芸コンクール小説部門で優秀賞を受賞しているなど、まさに「野良育ちとは違う」感のある小説家だといえるでしょう。しかし、こんな黄金ルートを歩んできた作家でも「拝啓、本が売れません」を書かなければならないほどの窮地にあることが本書の序盤で明らかになります。それでは、どうやったら「本」が売れるのか調べましょう、という流れで...
夏目漱石

「こころ」夏目漱石 評価:3点|若き日の恋愛譚を題材に世代間の価値観相克を描いたベストセラー小説【古典純文学】

日本文学を代表する作家、夏目漱石のそのまた代表作といってもよいでしょう。長年の高校教科書掲載作品としても有名で、書籍を手に取って読んでみたことがないという人でも教科書掲載部分の内容くらいはなんとなく覚えているのではないでしょうか。また、累計発行部数は700万部を超えており、日本で最も売れている小説であることから、書籍として手に取り通読したことがあるという人もそれなりにいるのだと思います。そんな本書は恋愛の三角関係が物語後半の枢要を占めることもあり、殊更に恋愛小説面を強調したプロモーションがかけられることも多いように感じられます。しかし、本書の主題は「時代の趨勢と人々の『こころ』」であり、漱石自身もそれを意識して書いたという解釈が通説となっております。派手なアクションシーンや意外などんでん返しなどがあるわけではなく、ぐいぐい感情を揺さぶられるというわけではありませんが、手堅い面白さのある作品です。あらすじ東京帝国大学の学生である「私」は夏休みに訪れていた鎌倉の海岸で「先生」と出会う。ひょんなことから「先生」との交流を始めた「私」だったが、「先生」にはどこか謎めいたところがあり「私」には「...
トマス・H・クック

【米国流の青春ミステリ】「夏草の記憶」トマス・H・クック 評価:2点【アメリカ文学】

日本では「記憶」三部作で有名なアメリカのミステリー作家、トマス・H・クック。「緋色の記憶(原題:The Chatham School Affair)」でエドガー賞を獲得し、アメリカでも一定の評価を得ております。本作「夏草の記憶(原題:Breakheart Hill)」も日本では記憶三部作として売り出された三作品の一角。(原題を見ての通り作品間には何の関連もないのですが、プロモーションのため強引な訳出がされています)その内容はアメリカ風青春ミステリといった嗜好の作品であり、内気な男子高校生ベンの美人転校生ケリーに対する恋愛を軸に話が進みますので、まるでよくある日本の文芸作品を読んでいるかのような錯覚に陥ります。もちろん、青春モノとしてだけではなくミステリとしても日本国内で評価されておりまして、2000年の「このミステリーがすごい! 海外編」では3位に入っております。そんな「夏草の記憶」ですが、普通だったというのが端的な感想です。決定的な悪い点はなく、良い点は微妙にある作品。3点(平均以上の作品・佳作)と2点(平均的な作品)で迷ったのですが、やはりベタすぎる点がきにかかり、2点としました。...
辻村深月

「オーダーメイド殺人クラブ」辻村深月 評価:2点|女子中学生が抱く思春期ならではの葛藤と奇妙な「殺人」依頼【青春小説】

メフィスト賞からデビューし、吉川英治文学新人賞、直木賞と、エンタメ作家成功の王道を驀進する辻村深月さんの作品。集英社のナツイチ(夏の百冊)にも選ばれている、定評のある小説です。ただ、タイトルのインパクトから想像していたよりも地味な話でありまして、中学生のありがちな葛藤や悩みの話に過ぎなかったのではないか、というのが正直な感想です。あらすじ主人公、小林アンは中学二年生。母親譲りの恵まれた容貌の助けもありクラスの中心的グループに所属しているが、実は猟奇的な事柄に興味があり、町の本屋にある怪我をした人形の写真集「臨床少女」が彼女の愛読書。恋愛がらみの人間関係で急に態度が変わる友人たちや、甘ったるくて何も考えていない母親との生活にうんざりしていたアン。ある日、河原で地味なクラスメイトの徳川勝利がビニール袋を蹴っている姿を目撃する。彼が去ったことを見届けた後、ビニール袋を掴むアン。その中身は「肉」のようなものだった。自分と同じ嗜好を持つ徳川に惹かれ、アンは彼に接近する。そして、アンは徳川にアン自身の殺害を依頼するのだった......。 感想物語の筋は大きく二つあり、アンが友人である芹香や倖との関...
綿矢りさ

「蹴りたい背中」綿矢りさ 評価:4点|スクールカーストを題材に青春の焦燥を描いた現代学園小説の古典【青春純文学】

高校在学中にデビューし、史上最年少で芥川賞を獲った超有名女性作家、綿矢りささん。その芥川賞の受賞作が、印象深いタイトルの本作品です。感想を一言で表しますと、「常にクライマックス」。名作を読み終えるときの、あのふわふわした興奮。最後まで読みたい、でも終わらないでという気持ちが常に胸の内から湧きおこってきます。青春時代に、少しでも疎外感や孤独を感じた、あるいは、そのようなことについて思考を巡らせたことのある人にはぜひ手に取ってもらいたい作品です。あらすじ「今日は実験だから、適当に座って五人で一班つくれ」そんな号令が飛ぶと、「余り物」になってしまう高校一年生。名前は長谷川初実、通称ハツ。そしてハツのクラスにはもう一人「余り物」がいる。オリチャンというアイドルのファンである「にな川」だ。いや、にな川のオリチャンに対する執着は「ファン」を超えている。ハツがそう評するくらい、にな川は熱狂的だ。「オリちゃんと喋ったことがある」ハツがそう言ったことをきっかけに、ハツはにな川の家に誘われるのだが......。他人と交わって「薄まる」ことを拒絶するハツと、交わらないことにさえなにも感じていないにな川。孤独...
秋山瑞人

「イリヤの空、UFOの夏」秋山瑞人 評価:5点|ひと夏の出会いと別れ、熱くて爽やかで切なくて物悲しい青春小説の傑作【ライトノベル】

夏になったら必ず読み返す、素晴らしい作品です。ボーイ・ミーツ・ガール、ひと夏の思い出、そしてUFOとくれば心をくすぐられる名作の匂いしかしないのですが、まさにその期待を裏切らない、ライトノベルが生み出した金字塔の一つと言えるでしょう。あらすじ夏休み最終日、「めちゃくちゃ気持ちいいんだぜ」と誰かが言っていたことを思い出した浅羽直之は自分が通う中学校のプールに忍び込む。しかし、そこには先客がいた。ご丁寧にもスクール水着に水泳帽という姿でプールサイドにいた少女は泳ぎ方を知らず、浅羽は水泳を教えることになる。「いりや、かな」と名乗ったその少女は、なんと翌日、「伊里野加奈」として園原市立園原中学校へ転校してきたのだ。もちろん、単なる転校生のはずがなく、その少女には大きな秘密があって......。緊迫する世界情勢と、「北」への爆撃再開。個性豊かなクラスメイト達と、学校非公認の新聞部。ちょっと「おかしな」現代を舞台に、ひと夏の冒険が始まる。感想全四巻で完結しており、第1巻~第3巻の途中までは、転校してきたちょっと変わり者の美少女、伊里野加奈が起こす騒動を中心にしたコメディタッチの連作中編が続き、第3...
スポンサーリンク