物語論・創作論

砂時計

【物語論】00年代の恋愛漫画「砂時計」から感じる現代の少女漫画から失われたリアリティについて

2000年代前半に雑誌連載され、人気を博した「砂時計」という恋愛漫画があります。 植草杏(うえくさ あん)が小学生のときに東京から島根へと転向して同学年の北村大悟(きたむら だいご)と出会う場面から始まり、社会人になってから杏と大悟が結婚するまでの経緯が描かれる漫画です。 北村夫妻は結婚後島根県で暮らすことになり、杏は介護の現場で、大悟は小学校教員として働きます。 差別や偏見、倫理や道徳の問題に踏み込むような言動かもしれませんが、現実問題として、少女漫画(あるいは恋愛漫画)のヒロインが最終的に介護職員になるのはかなり珍しいのではないでしょうか。 大悟と結婚する以前、杏は東京でも働いていたのですが、そのときも派遣の事務職員として働いていました。 経済的に成功している、という類の職業ではありませんし、いわゆるヒロインが就きそうなキラキラした職業でもありません。 一方、大悟の小学校教員という職業はどうでしょうか。 それなりに社会的地位が認めらている職業ではありますが、決して高給ではありませんし、近年はブラックな労働環境について報道される...
エンタメ

【創作論】「1518! イチゴーイチハチ!」の設定から考える、現代の学園漫画において生徒の多様性を描く困難

「1518! イチゴーイチハチ!」という漫画が好きです。 王道の青春学園漫画であり、真摯に楽しく高校生活を謳歌する登場人物たちの姿に胸をうたれる作品になっております。 そんな「1518! イチゴーイチハチ!」の舞台になっているのが「松栢学院大付属武蔵第一高校」という埼玉県の私立高校。コースが偏差値順に「選抜」「特進」「情報」の3つに別れており、それぞれのコース内でクラスが組まれています。「情報」にはスポーツ推薦で入学した生徒も多いため、スポーツコースと茶化されたりもするという設定。 本作は生徒会活動を中心に描いた作品ですので、それぞれのコースから集まった生徒会役員たちが友情を深めていく物語になっております。 読んでいるあいだは夢中になって気づかなかったのですが、あらためてこの設定を眺めると、上手く考えたなと思います。 現実問題として、都市部であればあるほど一つの高校には同質な生徒が集まりやすい傾向があります。 普通科の高校は偏差値ごとに階層が細かく区切られているため、知能や家庭環境の似通った生徒が集まりやすくなっており、工業や商業、情報系や芸術系と...
楽曲紹介

【中森明菜】「セカンド・ラブ」という曲の歌詞に感動した話【昭和歌謡】

1980年代アイドルの筆頭といえば松田聖子さんが挙げられると思いますが、松田聖子さんと双璧を成した存在として中森明菜さんも非常に有名です。 私は1980年代を生きたことがないので当時の感覚ついては造詣がないのですが、人気では常に松田聖子さんに次ぐ二番手であり、松田聖子さんが光ならば、中森明菜さんは影というような、まるで漫画の設定かと思われるような対称性を持つ二人だったようです。 そんな中森明菜さんのサードシングルにして代表曲が「セカンド・ラブ」という曲です。 歌詞の冒頭、私が感動した箇所を引用しましょう。 恋も二度目なら 少しは上手に愛のメッセージ 伝えたい たったこれだけのフレーズなのですが、恋愛について歌った女性歌手の曲としては非常に斬新な表現になっています。 通常、恋愛について歌った曲は2種類に分けられます。 一つ目は、積極性や性愛に対する奔放さを前面に押し出した曲です。 女性が男性に対して積極的にアプローチをかける様子だったり、世間の目や抑圧的な価値観に反抗してでも性的な事柄への素直な欲求を表明する自分、というものが表現されます...
小説特集

【創作小説】ブログ外活動のご案内【YouTube】

小説投稿サイト、YouTube、およびTwitterで活動しています。 それぞれのリンクは以下の通りです。 創作小説 ・アルファポリス ・カクヨム ・小説家になろう ・新人賞への小説投稿実績 ・暮らしの小説大賞最終選考落選・メフィスト賞座談会掲載・小説すばる新人賞三次選考落選・電撃大賞二次選考落選・ステキブンゲイ二次選考落選 Twitter 当ブログを訪問頂きありがとうございます 応援クリックお願いします!
創作論・物語論

教養書 「千の顔を持つ英雄」 ジョーゼフ・キャンベル 星3つ

1. 千の顔を持つ英雄 哲学者・神話学者として有名なジョーゼフ・キャンベル教授の代表的著作で、ジョージ・ルーカス監督が本作を参考にして映画「スター・ウォーズ」シリーズを製作したと述べていることでも有名です。 世界各地の神話に見られる「英雄の旅」。一見、それぞれの神話は全く異なる物語や意味を提示しているようで、その実、そこには共通の構造や意味があり、それこそ過去の人々が神話を構築して後世に伝えようとしたある種の「真理」だという画期的な神話解釈で脚光を浴び、今日まで創作者のバイブルとして扱われています。 2. 目次 プロローグ モノミスー神話の原型第一部 英雄の旅第二部 宇宙創成の円環エピローグ 神話と社会 3. 感想 神話での「英雄の旅」における典型的な展開が短く説明されたのち、それを立証するために大量の古今東西神話エピソードが紹介されるという流れで基本的には話が進んでいきます。 とはいえ、さすが「哲学者・神話学者」という著者の肩書だけあって、決して読みやすい本ではありません。 紹介される神話のエピソードはほとんどが断片的なもので...
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