ファンタジー

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スペクトラルウィザード

「スペクトラルウィザード 最強の魔法をめぐる冒険」模造クリスタル 評価:3点|他者を支配する魔法の正体【文学的ファンタジー漫画】

「ミッションちゃんの冒険」というweb漫画で有名になり、現在は「金魚王国の崩壊」などのweb漫画を連載する漫画家、模造クリスタル氏の商業出版作品。前作「スペクトラルウィザード」の続編となっております。「スペクトラルウィザード」の感想はこちら。中編×3と掌編×2という構成だった前作とはうって変わって、今回は一本の長編+エピローグ的な掌編という構成。副題の通り「最強の魔法」を巡る騎士団と魔術師たちの争いが描かれます。陰謀渦巻き、敵味方が入り乱れ、裏切りに次ぐ裏切りが起こる展開でハラハラドキドキさせる展開はエンタメ作品として見事。加えて、物語の裏側に流れる他者との関係性についての示唆が作品に深みを与えています。あらすじ危険な魔術書の研究により魔術師ギルドがテロ組織として認定され、騎士団によって多くの魔術師が逮捕・処刑されてから幾年。魔術師ギルドは解散を余儀なくされ、離散した魔術師たちも危険人物として追われている。そんな中、魔術師のスペクトラルウィザードは騎士団とも関係を持ちながら日々を過ごしていた。一時は自暴自棄になって世界を破壊する魔導書のデータを奪おうとしたこともあったが、その後は改心し...
蓬莱トリビュート

【中華ファンタジー】漫画 「蓬莱トリビュート」 鮫島円人 星2つ

1. 蓬莱トリビュート漫画中心の出版社、リイド社が運営するweb漫画サイト「トーチ」に連載されていた作品。現在も続編として「蓬莱 エクステンド」が連載されているようです。内容は中国の古典を漫画化したというもので、2~30ページかそれに満たないくらいの短編が10話収録されています。いにしえの時代の物語らしい、独特の展開と早すぎるくらいのテンポが特徴です。2. あらすじ・第3話 狐の掟墓守の男はある日、狐が犬の集団に襲われているのを発見し、狐を救助する。その晩、男の家を訪れてきたのは美しい娘。「今日はどうも助けて頂いて」。男はこの娘と恋仲になるのだが......。・第5話 異類の娘【虎】官僚としての赴任先に向かう申屠澄は道中、猛吹雪に襲われる。飛び込んだ人家で申を迎えたのは半獣半人の夫婦とその美しい娘。一晩で娘と親交を深めた申は娘を連れて行ってもよいかと夫婦に頼むのだが......。3. 感想ハッピーエンドから後味の悪い話、切ない話までバリエーションが豊富で、中国古典由来ということもあり獣人が多く出てくるのが面白いですね。現代的な画風で可愛く描かれているのも親しみが湧くポイントです。テンポ...
☆☆☆(映画/アニメ)

「天気の子」新海誠 評価:3点|美麗な音楽と情景描写、ハイテンポな物語が見どころの青春ファンタジー【アニメ映画】

「君の名は。」で記録的な大ヒットを獲得し、アニメーション映画監督としての名声を一気に高めた新海誠監督3年ぶりの新作。今月(2019年7月)に封切られたばかりの作品ですが、既に「君の名は。」を超える速度で興行収入を伸ばしているという情報まであるほどで、映画ファンの新海誠監督に対する期待の高さが伺えるところです。凡庸な少年と天気を自在に操ることのできる少女のボーイ・ミーツ・ガール物語という触れ込みでしたが、公開初日に大雨からの晴れという天気が実際に起こったりと、まさに現代日本を覆う異常気象の片鱗とマッチした点でも天命に恵まれた作品になりました。当ブログでも「君の名は。」については2回ほど記事にしており、本作「天気の子」についても公開を楽しみにしておりました。また、同監督の作品では2013年公開の「言の葉の庭」も記事にしております。そんな「天気の子」ですが、感想としてはストーリーが中の上、キャラクターの魅力は中の中から中の下といったところでしょうか。ただ、演出やテンポといった面では相当優れていたほかうえ、他の側面においても要素要素を見れば魅力的な点も多々あり、それゆえ評価3点(平均を超える作...
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アナと雪の女王

「アナと雪の女王」クリス・バック 評価:4点|巧みな比喩表現で語られる「真の愛」【ディズニー映画】

2013年に公開されたディズニー映画。世界中で大ヒットした超有名作です。日本でも興行収入歴代3位となる255億円を記録しており、2019年現在でさえ本映画の名前を知らないという人の方が少ないでしょう。 松たか子さんが歌った劇中歌の"Let it go"(の日本語訳版)もブームになりました。私は今更ながらに初視聴してみたのですが、評判に違わずいい映画だったというのが正直な感想。シンプルに「愛」や「勇気」についての物語として観ても面白いですし、これまでのディズニー、あるいは旧い社会の固定観念を振り払うためのメタ社会的な物語としても深みがあります。表面をさらっても楽しむことができ、それでいて真理や深遠さも備えている。そんな作品の一つです。あらすじ舞台はアレンデール王国、主人公は二人の王女アナとエルサ。姉であるエルサは幼少の頃から氷の魔法に長け、その魔法を使ってアナと一緒に遊ぶことが多かった。しかしある日、エルサは誤って氷の魔法をアナに命中させてしまい、アナは意識不明の重体となってしまう。トロールによる治療でアナは回復した一方、エルサはアナを傷つけてしまったことを悔い、暴走する自分の魔法力を自...
ミヒャエル・エンデ

「はてしない物語」ミヒャエル・エンデ 評価:2点|いじめられっ子の成長を描くファンタジー冒険物語【海外児童文学】

ドイツの児童文学者ミヒャエル・エンデの作品。「モモ」と共に彼の代表作として扱われることが多い著作です。児童文学といえど単行本で600ページを越える大作で、岩波少年文庫版では対象が「中学以上」となっている読み応えのある大作。「ネバーエンディング・ストーリー」という題で映画化もされています。感想としては、読み手を選ぶ作品だなという印象を受けました。幻想的なファンタジー世界の造形は見事ですし、恵まれない環境で育った少年が力を手に入れて慢心し、やがてその慢心から身を滅ぼしかけるものの、それを克服して最後は真理に到達する、という物語も王道なりに楽しめます。ただ、こうした「ヨーロッパ的ファンタジー世界」を受け入れる心持ちが最初からある人以外には展開が唐突で突拍子もなく思えるでしょうし、主人公の性格も万民に受け入れられる人物かといえばそうではないと感じました。あらすじバスチアン・バルタザール・ブックスは読書好きの小学生。しかし、勉強も運動もからきしダメなうえデブでX脚なのでクラスメイトにいじめられている。母親は既に亡くなり、そのことがきっかけで父親とのあいだにも溝が出来ていた。そんなバスチアンはある...
ペンギン・ハイウェイ

【真夏のファンタジィ冒険譚】映画「ペンギン・ハイウェイ」石田祐康 評価:1点【アニメ映画】

人気小説家である森見登美彦さんの同名小説を映画化した作品。「台風のノルダ」(文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞受賞、2016年地上波放送)や「陽なたのアオシグレ」(第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査委員会推薦作品)で頭角を現してきた新進気鋭の石田祐康氏が監督を務めています。制作も2011年設立のスタジオコロリドが手がけるなど、インディーズ色の濃い布陣。こういった映画が大手から配給され、上映館数もそれなりに確保できるのは近年のアニメ映画ブームによるところが大きいのでしょう。そんな本作、全体的な感想としてはイマイチだったというのが正直なところです。とはいえ、そもそもジブリや人気版権もの(ポケモン、ドラえもん、コナン、クレしん、アンパンマン)ではないアニメ映画なんてこんなものである、といったところでしょうか。あらすじアオヤマ君は非常に研究熱心な小学4年生。気になったことは何でもノートに書き留め、観察と探求を怠らない。そんなアオヤマ君にも気になる人がいて、それは同級生のハマモトさん、ではなく、近所の歯科医院に勤める「お姉さん」。歯科医院に通うアオヤマくんとの仲は、喫茶...
スペクトラルウィザード

「スペクトラルウィザード」模造クリスタル 評価:3点|人生の悲哀と一匙の希望が感動を生むオフビートな魔術師物語【ファンタジー漫画】

「ミッションちゃんの冒険」というweb漫画で有名になり、現在は「金魚王国の崩壊」などのweb漫画を連載するサークル、模造クリスタルの商業化作品。「金魚王国の崩壊」のファンなので手に取ってみたのですが、そこそこ良かったというのが総評です。魔術師ギルド解散後というファンタジー設定で世界観全体を包みながら、「自分らしさ」「居場所」「関係性」といった現代的なテーマを暗に示した物語が展開されるのが面白い点です。模造クリスタルの特徴である独特のテンポや不思議な世界観を楽しめるのであれば買ってみてもよいのではないでしょうか。あらすじ危険な魔術書の研究により魔術師ギルドがテロ組織として認定され、科学技術集団である騎士団によって多くの魔術師が逮捕・処刑された。魔術師ギルドは解散を余儀なくされ、離散した魔術師たちも危険人物として追われている。そんな中、魔術師の生き残りであるスペクトラルウィザードは孤独な日々を過ごしていた。身体を「ゴースト化」する魔術により騎士団からの逃亡はたやすいものの、指名手配されている手前、孤独を言葉でしか知らなかった頃の生活には戻れない。そんなある日、魔導書のコピーが見つかったとい...
天人唐草

【幻想怪奇譚】漫画「天人唐草」山岸凉子 評価:1点【漫画短編集】

「日出処の天子」等の作品がある山岸凉子さんの自選作品集。表題作にもなっている「天人唐草」は彼女の代表作に数えられることが多いようです。ただ、少女漫画界の古豪的な地位にある著者の作品ということでしたが、私には合いませんでした。読解力が足りないからか、起伏のない凡庸なストーリーラインに投げっぱなしのオチが付いているだけのように感じてしまいます。あらすじ幼いころから厳格で旧い価値観の父に育てられてきた岡村響子。その教育のせいもあって自分を過度に抑制するようになってしまい、学生時代、そして社会人になっても男性とうまくコミュニケーションをとることができない。そしてついに、職場で憧れていた男性が自分とは真逆の気質をもつ女性と結婚してしまう。そんな響子のもとに、父親が倒れたとの一報が飛び込んでくる。慌てて父のもとへ向かう響子。しかし、呼ばれた先で響子が目にしたのは、あの表面上は厳格だった父の意外な素顔だった......。(表題作「天人唐草」)その他4つの短編を収録。感想全体的に「ベタ」過ぎるか「あり得なさ」過ぎる話しかないんですよね。表題作の「天人唐草」は厳格過ぎる父に育てられた女性の話ですが、父の...
小川洋子

小説 「猫を抱いて象と泳ぐ」 小川洋子 星2つ

1. 猫を抱いて象と泳ぐ不思議な世界観と優しく繊細な文体で人気を博す純文学作家、小川洋子さんの作品。小川さんの個性が前面に押し出されており、ファンの間で評価が高いことも頷けます。しかし、そこが却って普遍性を損なっているような、万民への説得力に欠けているような作品だったと思います。2. あらすじ生まれつき唇の上下がくっついていたために、手術により切開し、脛の皮膚を唇に移植した少年。そのため、少年の唇には成長と共に産毛が生えてくるようになってきていた。学校にも上手く馴染めない少年を惹きつけたのはチェスという競技。廃バスの中で生活するマスターにチェスを教わり、少年はぐんぐんと腕前を上げていく。そんな少年を変えたのはマスターの死だった。肥満しきった不健康な身体でバスの中を狭苦しそうに生活していたマスター。それは、少年が幼少期に出会ったインディラという象を思い出させる。デパートの屋上で見世物となっていたインディラは成長とともに身体が大きくなり、デパートの屋上から降ろすことができなくなってしまっていたのだ。少年は「大きくなること」に絶望し、身体の成長を止めてしまう。それは、チェス盤の下に籠って思考...
夜は短し歩けよ乙女

「夜は短し歩けよ乙女」湯浅政明 評価:3点|夜の京都を舞台にした不思議で楽しい幻想恋愛エンターテイメント【アニメ映画】

森見登美彦さんの人気小説を原作に、湯浅政明監督が映画化。「夜明け告げるルーのうた」でアヌシー賞を受賞された監督です。小気味よいファンタジー展開に加え締りの良いラストシーンは印象に残ります。エンターテイメントとしてはこういう作品がもっと世に出て欲しいですね。あらすじ冴えない大学生である「私」は美しき後輩、黒髪の乙女に恋をしていた。そんな「私」が乙女との距離を埋めるために執っていた作戦、その名も「ナカメ作戦」。「ナるべくカのじょのメにとまる」の略であり、要は付け回して偶然を装いすれ違うだけの行動である。サークルOB・OGの結婚式の二次会に参加している今日も、二次会で乙女に近づくチャンス。しかし、乙女の行先はいつも気まぐれ。夜の先斗町で飲み歩いたり、幼き日に読んだ絵本を探して古本市を訪ねてみたり、文化祭のゲリラ演劇で代役ヒロインを務めたり、風邪のお見舞いに京都じゅうを駆け巡ったり。そんな乙女に(勝手に)振り回される「私」と、幻想的なほどに可愛らしい「乙女」。そして、主人公を取り巻く愉快な大学生と大人たちが織り成す、一夜限りのファンタジックエンターテイメント。感想湯浅監督らしい、現在の日本にお...
RWBY

【RWBY】日本アニメへのリスペクトに溢れるアメリカ産バトルアクションファンタジー 評価:3点【モンティ・オウム】

Volume1(第1期)の感想1. RWBY volume1Rooster Teethというアメリカのアニメーション制作会社による3DCGアニメ。2017年7月から日本の地上波でもダイジェスト版が放送されており、10月には映画も公開されます。日本風のキャラクター造形とアメリカタッチな掛け合い、そして華麗なアクションの組み合わせが妙味となって視聴者を楽しませてくれるアニメーション作品でした。RWBY Volume1<通常版> posted with カエレバ早見沙織 ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント 2015-12-09Amazon楽天市場 
メアリと魔女の花

アニメ映画 「メアリと魔女の花」 監督:米林昌弘 星2つ

1. メアリと魔女の花スタジオジブリ出身で、新しくスタジオポノックを立ち上げた米林昌弘監督の作品。ジブリでは「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」を監督しています。スタジオポノックの初作品ですが、巷で言われているジェネリックジブリという評判通りの、無難でそこそこ楽しめる作品でした。メアリと魔女の花 posted with カエレバ杉咲花 ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 2018-03-20Amazon楽天市場
時雨沢恵一

【リリアとトレイズ】期待はずれだった「銃と戦闘機の冒険活劇」の続編 評価:1点【時雨沢恵一】

・リリアとトレイズⅠ&Ⅱ1. そして二人は旅行に行った「一つの大陸の物語」シリーズの第2幕にあたり、第1幕である「アリソン」の続編になります。「アリソン」のレビューはこちら活躍するのは「アリソン」で主人公だったアリソンとウィルの子供世代。「アリソン」が「世界を救うアドベンチャー」だったのに対して、「リリアとトレイズ」は突発的に起こるテロと対決する内容がメインのため、物語全体がスケールダウンしてしまった印象です。加えて、「アリソン」では主人公の二人が共に孤児院育ちの幼馴染であり、「孤児院出身の二人が知恵と勇気と自ら身につけた能力で困難を突破する」という部分が魅力だったところ、「リリアとトレイズ」では「豊かな階層出身の二人が両親から授けられた特殊技能を振るって問題を解決する」になってしまったのが痛いところ。ワクワクドキドキを呼ぶような作品にはなっていませんでした。2. あらすじ大きな海に一つの大陸が浮かぶ世界。その大陸では、山脈と大河を挟んで二つの国が対峙していた。東側がロクシアーヌク連邦。通称ロクシェ。西側がベゼル・イルトア王国連合。通称スー・ベー・イル。長年の対立状態にあった両国だが、...
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