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数学ガール

【数学ガール】数学要素も恋愛要素も中途半端な失敗作 評価:1点【原作:結城浩 作画:日坂水柯】

数学をテーマにした小説「数学ガール」の漫画版。原作者はプログラミングの実用書で有名な結城浩さん、作画は後に「白衣のカノジョ」を手がけることになる日坂水柯さんとなっております。原作の購入も検討したのですが、「数学の面白さを伝える」がメインで文芸的な特徴が薄いのであれば漫画版でも同じだろうと考え、漫画版を購入いたしました。しかし、これが大失敗。(もしかすると原作もこうなのかもしれませんが)数学については理数系に詳しくない人間を楽しませようという意図が一切ないような説明しかされないうえ、恋愛を軸とした物語にも数学が深く関わるわけではなく、かといってラブストーリーは非常に陳腐。一般向け数学本としても漫画としても平凡の水準にさえ達していない作品でした。あらすじ高校生の「僕」は数学好きで、中学時代は放課後にひとりで数式を展開するほどだった。そんな「僕」にも、高校では数学仲間ができた。同学年のミルカさんと後輩のテトラちゃん。ミルカさんは「僕」よりも数学に長けており、いつも「僕」に問題を出す側。逆に、テトラちゃんは「僕」に数学を教わっている。「僕」はミルカさんと、あるいはテトラちゃんと、今日も放課後の...
経済・金融・経営・会計・統計

「リサイクルと世界経済」小島道一 評価:2点|国際貿易の中におけるリサイクルの立ち位置【経済学】

リサイクルという言葉が人口に膾炙するようになってからずいぶん経ちましたが、資源の制約や環境問題がクローズアップされる中で、その概念は今日においてますます輝きを増しているように感じられます。そして、より一体化する世界経済の中で、リサイクルという行為もずいぶん前から国際貿易の中で行われるようになっております。日本の中古自動車や中古家電が発展途上国で利用されているのは有名な話ですし、紙やプラスチックの再生工場も多くは発展途上国に立地しています。先進国から廃棄物を輸入し、原料として使用可能な状態にしてから再び先進国に輸出するというサイクルはもはや当たり前のこととなっているのです。そのような、国際貿易の中でのリサイクル過程がどのように変化し、どのような問題を孕んでいて、どのように解決しているのかということが本書には記されています。著者はジェトロ・アジア経済研究所の小島道一氏。肩書は研究者ですが、本書の筆致には実務担当者として国際貿易の規制や促進に携わってきた側面が色濃く現れております。目次第1章 国境を越えてリユースされる中古品第2章 国境を越えてリサイクルされる再生資源第3章 中古品や再生資源...
パウロ・コエーリョ

小説 「アルケミスト」 パウロ・コエーリョ 星2つ

1. アルケミストブラジル出身の作家、パウロ・コエーリョの代表作で、累計発行部数が1億部を超えるという世界的な大ベストセラーです。原著は1993年発行で、日本語版は1997年の発行。当時、書店で大プッシュされていたことを記憶している人もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな偉大な作品に対してやや傲慢な態度になってしまうかもしれませんが、個人的には凡作であると感じました。抽象的で浮ついた言葉がそれっぽい雰囲気を醸し出しているだけで心を動かすような本当の内容というものが存在せず、物語そのものはいたって普通。読んで不快になることはありませんが、読破した直後の気分としては「ふーん」で終わってしまった作品です。2. あらすじスペインのアンダルシア地方を拠点に活動する羊飼いの少年サンチャゴはある日、セイラムの王様メルキゼデックだと名乗る老人と出会う。王様は少年が飼っている羊の十分の一を対価に、宝物が眠る場所を教えてくれるという。悩んだ末、少年が羊を連れて王様のもとへ再びやって来ると、宝物はエジプトのピラミッドにあるのだと王様は言い、少年にウリムとトムミムという二つの石を渡すのだった。ピラミッドへ...
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ティファニーで朝食を

映画 「ティファニーで朝食を」 監督:ブレイク・エドワーズ 星2つ

1. ティファニーで朝食をオードリー・ヘップバーン主演の有名な古典映画で、1961年に公開されています。監督のブレイク・エドワーズは映画「ピンク・パンサー」シリーズを手がけた人物。原作小説の著者であるトルーマン・カポーティは村上春樹が影響を受けた作家として知られています。内容は王道のロマンティックラブストーリーですが、個人的にはそのカテゴリにおける凡作以上の作品にはなっていないと感じました。 1961年という時代を考えれば、 田舎出身の美人娼婦と無名作家の都会的で悪戯な恋愛模様という物語はもしかすると当時画期的で、「都会のはぐれもの同士の恋愛」という枠組みをつくったのかもしれません。しかし、さすがに展開が一本調子すぎて退屈な部分がありますし、かっこよさの演出もベタすぎて(もちろん、この古典こそがベタさ(=現在のスタンダード)の先駆者だったのかもしれませんが)今日の視聴においてとりわけ良いと感じることはできないでしょう。2. あらすじホリー・ゴライトリーはニューヨークのアパートに住み、娼婦として生計を立てていた。しかし、いくら稼いでも浪費ばかりで少しもお金は貯まらず、大金持ちとの結婚で玉...
☆☆(漫画)

漫画 「ピンポン」 松本大洋 星2つ

1. ピンポン1996年から1997年までビッグコミックスピリッツで連載された卓球漫画です。長年にわたり根強い人気を誇る作品で、メディアミックスでは2002年に実写映画化、2014年にアニメ化、書籍としても2002年に新装版が発売、2012年に文庫版が発売、そして2014年にアニメ化記念の大判が発売されるなど、近年においてもその勢いは衰えておりません。著者の松本大洋さんも漫画好きのあいだでは知られた存在で、本作のほかに「鉄コン筋クリート」が代表作として挙げられることが多いです。そんな作品なのですが、個人的には巷の高評価ほどの作品には感じられませんでした。確かに、独特な絵のタッチが醸し出す迫力のある試合風景は良いと感じましたが、なんといっても物語がいまいちなうえ、極端すぎるキャラクター造形がせっかくのリアリティ的良さを削いでいます。2. あらすじ主人公は"スマイル"こと月本誠(つきもと まこと)と"ペコ"こと星野裕(ほしの ゆたか)。二人は幼馴染であり、県立片瀬高校の1年生として同じ卓球部に所属している。しかし、練習嫌いのペコは部活をサボって遊んでいることが多く、スマイルも持ち前の無気力...
☆☆(教養書)

新書 「江戸東京の明治維新」 横山百合子 星2つ

1. 江戸東京の明治維新帯の煽り文は「150年前の胸に刺さる現実」。明治維新といえば通常、政府高官として新しい日本をつくりあげていく明治の元勲たちに焦点が当たるか、もしくは、幕府側の将軍とその側近であったり、最後まで佐幕派として戦った武士たちに焦点が当たるかの2択になってしまいがちなところ、本書は旧江戸・新東京に生きた庶民たちの生活について説明しようとしているという点で差異化が図られております。著者は国立歴史民俗博物館教授の横山百合子さん。東大の学部を卒業後、社会科教員として勤めた後に博士課程を経て大学教員としてのキャリアを歩み始めたという人物です。本筋からは逸れますが、リカレント教育の重要性が盛んに言及される中で、今後、日本でもこのような経歴を持つ人が増えるといいな感じます。そして肝心の中身ですが、題材は新鮮だけれどもやや散漫というイメージ。庶民の生活変化の全体像をとらえるというよりは事例集という形式になっており、下級武士の誰それはこう生きた、遊女の誰それはこう生きた、賤民の誰それはこう生きたというような記述が続きます。その生き様の書かれ方は具体的で面白いのですが、それこそ下級武士・...
武田綾乃

小説 「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編」 武田綾乃 星2つ

1. 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章全国大会金賞を目指す公立高校、北宇治高等学校吹奏楽部で起こる様々な事件を描いた青春小説シリーズの2年生編。その後編になります。前編の記事はこちら。また、言うまでもなく本書は京都アニメーションが手掛けるアニメ版の原作として(の方が)有名でしょう。私もアニメ版から入った口です。アニメの感想はこちら。映画「リズと青い鳥」で描かれたみぞれと希美の関係性についての物語はそこそこ良かったものの、それ以外の群像劇はどこで面白くさせようとしているのか分からないくらいイマイチでした。2. あらすじ低音パートの後輩たちが起こした諍いを何とか諫め、パートをまとめ上げることに成功した黄前久美子(おうまえ くみこ)だったが、部全体としての音楽の出来には不安が残っている北宇治高校吹奏楽部。低音パートでは3年生である中川夏紀(なかがわ なつき)の実力不足は明らかで、トランペットパートでは1年生ながらにして実力十分、特に高音が得意な小日向夢(こひなた ゆめ)が何故か高音で音楽全体をリードするファーストというポジションではなく音楽を底から支える役割のサード...
☆☆(漫画)

漫画 「藤子・F・不二雄 異色短編集」 藤子・F・不二雄 星2つ

1. 藤子・F・不二雄 異色短編集「ドラえもん」や「パーマン」、「エスパー魔美」といった人気作品で知られる藤子・F・不二雄。ハードではないSF設定を中心に日本の漫画界を作り上げてきたレジェンドはブラックな短編の書き手としても漫画好きに知られておりまして、選りすぐりの作品が纏められた商品としてこの「藤子・F・不二雄 異色短編集」が小学館から発売されております。ただ、いまになって読むとやや古臭い印象は拭えません。1970~1980年代に発表された作品が多いのですが、いくつかの作品を除いては特に意外性のないブラックユーモアという感想を抱いてしまいます。もちろん、当時は斬新だったのでしょうし、こういった作品群を基礎に今日の発展した物語構築が存在するからこそ稚拙に感じるのかもしれませんが、いまなお輝きを失っていない作品たちという評価にまでは至らないだろうと思いました。2. あらすじ〇定年退食息子夫婦と穏やかに暮らす老人。健康増進効果があるといって「塩コーヒー」を好み、少し遠い区役所にも健康を意識して徒歩で向かう。無邪気に遊ぶ子供たちを見る視線も温かい。ただ、食事を摂る量は極端に少なく、どうやらい...
経済・金融・経営・会計・統計

【経済学】 「ゲーム理論はアート」 松島斉 星2つ

1. ゲーム理論はアート松島斉東京大学教授によるゲーム理論の紹介本です。体系的な教科書や専門書ではなく、かといってエッセイ的な本や時事問題解説本でもないため、「紹介本」としておくのが適切でしょう。近年、社会科学の分野で一大巨頭となりつつあるゲーム理論の考え方が現実とどう関連しているのか、また、ゲーム理論の考え方を現実の状況改善にどう適用しうるのかが事例検討を中心に説明されております。そんな本書ですが、全体的にとても中途半端な本に思われました。ゲーム理論に馴染みのない人にもわかりやすく書いていますといった論調にも関わらず、碌な説明もなしに専門用語やアカデミックな言い回しが多用され、事例も社会科学に興味のある人しか関心を抱かないだろうというものばかり。かといって、体系性や網羅性、専門的な深みがあるかといえばそうではないという本に仕上がっており、ところどころ面白い部分はあったものの、惹きこまれるというよりは購入した義務感で読み進めてしまった本になりました。2. 目次第1部 アートとしてのゲーム理論第1章 ゲーム理論はアートである第2章 キュレーションのすすめ第3章 ワンコインで貧困を救う第...
夏目漱石

「こころ」夏目漱石 評価:3点|若き日の恋愛譚を題材に世代間の価値観相克を描いたベストセラー小説【古典純文学】

日本文学を代表する作家、夏目漱石のそのまた代表作といってもよいでしょう。長年の高校教科書掲載作品としても有名で、書籍を手に取って読んでみたことがないという人でも教科書掲載部分の内容くらいはなんとなく覚えているのではないでしょうか。また、累計発行部数は700万部を超えており、日本で最も売れている小説であることから、書籍として手に取り通読したことがあるという人もそれなりにいるのだと思います。そんな本書は恋愛の三角関係が物語後半の枢要を占めることもあり、殊更に恋愛小説面を強調したプロモーションがかけられることも多いように感じられます。しかし、本書の主題は「時代の趨勢と人々の『こころ』」であり、漱石自身もそれを意識して書いたという解釈が通説となっております。派手なアクションシーンや意外などんでん返しなどがあるわけではなく、ぐいぐい感情を揺さぶられるというわけではありませんが、手堅い面白さのある作品です。あらすじ東京帝国大学の学生である「私」は夏休みに訪れていた鎌倉の海岸で「先生」と出会う。ひょんなことから「先生」との交流を始めた「私」だったが、「先生」にはどこか謎めいたところがあり「私」には「...
戦場のメリークリスマス

【戦場と友情】映画 「戦場のメリークリスマス」 監督:大島渚 星4つ

1. 戦場のメリークリスマス第2次世界大戦下の日本軍俘虜収容所を舞台に、日本軍の士官・下士官と俘虜となっている英軍士官との奇妙な友情を描いた作品。1983年公開で、カンヌ国際映画祭のパルム・ドール最有力という下馬評ながら受賞を逃してしまったエピソードでも有名です。それでも、海外では英国アカデミー賞の作曲賞を受賞。国内でも毎日映画コンクールや日本アカデミー賞といった賞を獲得しており、いまなお名作日本映画として記憶されている作品の一つです。戦時下の太平洋という舞台の特殊性から日英豪NZ合作となっていることもさることながら、本作の特徴といえばまずもってその特殊なキャスティングにあるでしょう。主演格の4人のうち3人が本職の役者ではないのです。その3人というのが、当時ミュージシャンとして有名だったデヴィッド・ボウイ、イエローマジックオーケストラというバンドのメンバーとして活躍していた坂本龍一、ツービートという漫才コンビの片割れとして活躍していたビートたけし。その名前を見るだけでも極めて異色の配役であることが理解できます。他にも、ロックシンガーとして有名な内田裕也、フォークシンガーとして有名なジョ...
茄子

「茄子」黒田硫黄 評価:2点|気だるげな雰囲気の中で描かれる奇妙な日常が不思議な感情を揺り起こす【漫画短編集】

「月刊アフタヌーン」で2000年から2002年にかけて連載されていた作品。タイトルが「茄子」だけというなんとも不思議な漫画ですが、名は体をしっかりと表しており、野菜の「茄子」が出てくるのであればどんな物語でもよい、という制約のもとで書かれた短編集となっております。こういった短編集を出すくらいですから、著者の黒田硫黄さんはいくつか著作がありながらもそれほどメジャーな漫画家ではありません。それでも「セクシーボイスアンドロボ」くらいは聞き覚えのある人もいるのではないでしょうか。第6回文化庁メディア芸術祭のマンガ部門で文部科学大臣賞を受賞しており、松山ケンイチさん主演でテレビドラマ化もされています。本作の内容に話を戻しますと、ありがちなマイナー漫画だなぁという印象。全体的に気たるげな雰囲気が漂い、ちょっと変わった人たちがちょっと変わった行動をする様子が淡々と描かれるという作品です。私としては可もなく不可もなくですが、漫画好きでなければつまらないと思ってしまうかもしれない、というのが全体的な感想ですね。あらすじ〇3人(前後編)田舎でのんびりと茄子農家を営む男性のもとに、ある日、二人の子供が訪れて...
経済・金融・経営・会計・統計

「法人税入門の入門 2019年版」辻敢・齊藤幸次 評価:1点|帯に短く襷に長く、実用的でもなければ本質的でもない専門書【税法】

「税務研究会出版局」という聞きなれない出版社から刊行されている書籍。調べたところ「税務研究会」という会社があるらしく、その業務内容は「税務、経理、会計などの実務情報サービスとして、定期刊行物、書籍、データベースなどを展開」。どうやら税務関係の本を出版する専門出版社のようです。このような本を手に取った理由を申し上げますと、以前に「日本の税金 第3版」を読んだ際にその中で法人税のことが少しだけ取り上げられておりまして、仕事柄、法人税の知識が必要な場面があるにも関わらず体系的に勉強したことがないなと手に取ってみた次第です。しかし、結果としては大幅な期待外れに終わりました。目次第1章 法人税の基礎第2章 収益の税務第3章 費用の税務第4章 税額計算と申告・納付第5章 連結納税制度第6章 グループ法人単体課税制度感想ある程度経理の知識があり、なおかつ税務にも興味があってその入門本を探している。そのような場合、本書を手に取ることはお薦めいたしません。まさにその2点にこそ、本書の欠点が凝縮されているからです。第1の欠点は、「会計」に加えて「税務」も知りたいと思って手に取ったにも関わらず、個々の論点や...
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