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海がきこえる

「海がきこえる」望月智充 評価:2点|スタジオジブリの若手スタッフたちによって製作された爽やかな青春映画【アニメ映画】

1993年に公開されたスタジオジブリのアニメ映画。監督が宮崎父子でもなければ高畑功でもないというジブリ映画の例外的な作品となっております。というのも、本作が若手スタッフに全てを任せて製作させてみるというジブリ内での企画により出来上がったという背景があります。原作は当時全盛を誇っていた集英社コバルト文庫のスター作家、氷室冴子さんの同名小説であり、確かに、男性作家が青春恋愛物語を描く際に生じがちな少女に対するギトギトした視点がなく、それでいて(友情と恋愛以外では)家族の問題に焦点を当てているという、典型的な女性作家らしい作品だったなと感じました。とはいえ、全体的な評価としては凡作という判断であります。確かにこれといった欠点は見当たらないのですが、かといって推せるポイントもなく、なんとも薄味な作品だったというのが率直な感想です。あらすじ舞台は高知県に存在する中高一貫の私立高校。高校二年生の二学期、主人公である杜崎もりさき拓たくが在籍するクラスに一人の少女が転校してくる。彼女の名前は武藤むとう里伽子りかこといい、田舎街には珍しい、東京からの転校生だった。成績優秀で運動神経抜群、容姿端麗な美少女...
アイの歌声を聴かせて

「アイの歌声を聴かせて」吉浦康裕 評価:2点|AI搭載の転校生がもたらす波乱万丈の青春学園物語【アニメ映画】

2021年10月29日に公開されたアニメ映画で、監督は吉浦康裕さん。「イブの時間」「アルモニ」「さかさまのパテマ」等の作品を手掛けた監督で、国内の映画祭では文化庁メディア芸術祭では複数回入賞しており、アニメ映画界隈では知られた存在です。そんな吉浦さんにとって久方ぶりの長編作品となる本作ですが、その内容は「イブの時間」 と同じく、吉浦さんのライフワークともいえる「AIとの共存」と「高校生学園もの」を掛け合わせた作品。序盤の展開こそAIという要素を活かした面白い側面も見られましたが、全体としては凡庸な青春学園物語だったという印象があり、ぎりぎり佳作とは言えない凡作だと感じました。あらすじ舞台は世界的な巨大企業「星間エレクトロニクス」のAI実験都市である景部市。極めて同質性の高い企業城下町となっており、市立景部高校に通う生徒の親はたいてい星間の関連企業に勤めているというほど。農業ではロボット田植え機が活躍し、市内を走るバスは無人運転など、AI実験都市らしい光景が日常に溶け込んでいる。そんな景部市に住む高校生、天野悟美(あまの さとみ)の母親も星間エレクトロニクスに勤めており、エリート研究員が...
作品の感想

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」石立太一 評価:2点|戦争しか知らない少女は「愛してる」の意味を知りたい【ファンタジーアニメ】

第5回京都アニメーション大賞を獲得した同名小説を原作とする深夜アニメです。2019年及び2020年には映画も公開されており、2021年には金曜ロードショーでも放映されるなど、深夜アニメとしてはかなりの大ヒットを記録した作品となっております。また、2019年の映画は本作の制作会社である「京都アニメーション」が死者36名を出す放火事件からの復帰後第一作にもあたり、特にアニメファンのあいだでは無事公開されたというだけでも感動はひとしおだったようです。「京都アニメーション」といえば、古くは「涼宮ハルヒの憂鬱」や「けいおん」、最近では「響け!ユーフォニアム」といったヒット作を手掛けた会社として知られており、本作の美麗な作画にはその実力が存分に発揮されているといえるでしょう。そんな本作ですが「戦争しか知らなかった元少女兵が代筆屋としての職務を通じて人間らしい心情を理解し獲得していく」という物語の大枠そのものは個人的にも好みで、20世紀前半のヨーロッパ風な世界を舞台にしている点も気に入っています。ただ、一つ一つの物語(本作は一話完結形式です)の脚本や、キャラクターの性格はまさに深夜アニメのステレオタ...
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いまを生きる

「いまを生きる」ピーター・ウィアー 評価:4点|型破りな教師が示す自分らしい人生のつくりかた【アメリカ映画】

1989年のアメリカ映画で、第62回アカデミー賞で脚本賞を受賞した作品でもあります。厳格な進学校に赴任してきた型破りな教師の授業から、生徒たちが「人はどう生きるべきか」の本質を学び、実践していくという内容。テーマの普遍性から今日でも人気の衰えない作品であり、元サッカー日本代表で現在はJ1ガンバ大阪の監督を務めている宮本恒靖さんが座右の銘に「いまを生きる」を採用するなど、まさに多くの人々の生き方に影響を与えた作品になっております。いまとなっては古典となった本作をこの令和の時代に鑑賞してみたのですが、やはり感動はひとしおでした。規則や形式に囚われず、物事を様々な側面から捉え、なにより自分のやりたいことを大切にしながら生きる。そんなメッセージが激動のドラマ的展開によって鮮烈に表現された、まさに「映画」の見本となるような作品です。あらすじ舞台は全寮制の名門進学校ウェルトン・アカデミー。「伝統」「名誉」「規律」「美徳」の四柱をモットーとする厳格なこの学校に、一人の英語教師が赴任してくる。彼の名前はジョン・キーティング。型に嵌った受験勉強対策授業ばかりが行われているウェルトンにおいて、キーティング...
☆☆(映画/アニメ)

アニメ映画 「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」 監督:石立太一 星2つ

1. 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン京都アニメーションが手掛ける同名テレビアニメシリーズの映画版で、2020年9月18日に公開されました。既に100万人近い動員数と10億円以上の興行収入を記録しており、十分に大ヒットだと言えるでしょう。しかし、個人的にはやや凡庸な映画だったという印象を受けました。もちろん、美麗なアニメーションや音楽は流石の高品質だったのですが、欠点として、戦争描写の非現実性や、物語の最終目的が「愛している」の意味を知るという点が鼻につきます。手紙の代筆を通じて家族や恋人を繋ぐ役割を果たす代筆屋の物語、という比較的リアル路線の部分が感動への訴求点となっている作品だったので、なおさら、時おり露呈するいかにも「深夜アニメ」や「ラノベ」的側面が本作の足をかなり引っ張っているように思えたのです。2. あらすじ4年間に渡る大陸戦争が終結してから幾何かの時間が経過し、世界には久方ぶりの平和が訪れていた。ライデンシャフトリヒ国の首都ライデンに住む18歳の少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンもそんな平和を享受して暮らす人物の一人である。戦時には陸軍の女子少年兵として従軍し、...
アナと雪の女王

「アナと雪の女王」クリス・バック 評価:4点|巧みな比喩表現で語られる「真の愛」【ディズニー映画】

2013年に公開されたディズニー映画。世界中で大ヒットした超有名作です。日本でも興行収入歴代3位となる255億円を記録しており、2019年現在でさえ本映画の名前を知らないという人の方が少ないでしょう。 松たか子さんが歌った劇中歌の"Let it go"(の日本語訳版)もブームになりました。私は今更ながらに初視聴してみたのですが、評判に違わずいい映画だったというのが正直な感想。シンプルに「愛」や「勇気」についての物語として観ても面白いですし、これまでのディズニー、あるいは旧い社会の固定観念を振り払うためのメタ社会的な物語としても深みがあります。表面をさらっても楽しむことができ、それでいて真理や深遠さも備えている。そんな作品の一つです。あらすじ舞台はアレンデール王国、主人公は二人の王女アナとエルサ。姉であるエルサは幼少の頃から氷の魔法に長け、その魔法を使ってアナと一緒に遊ぶことが多かった。しかしある日、エルサは誤って氷の魔法をアナに命中させてしまい、アナは意識不明の重体となってしまう。トロールによる治療でアナは回復した一方、エルサはアナを傷つけてしまったことを悔い、暴走する自分の魔法力を自...
☆☆☆(映画/アニメ)

アニメ映画 「王立宇宙軍 オネアミスの翼」 監督:山賀博之 星3つ

1. 王立宇宙軍 オネアミスの翼「ふしぎの海のナディア」や「新世紀エヴァンゲリオン」で知られるアニメ制作会社、ガイナックスが最初に制作した作品。というより、ガイナックス自体が本作の制作を目的に立ち上げられたのですが、本作により莫大な借金を背負ってしまったことからその返済のために経営を続けることになったというのが事の顛末。上述した2作品も禍を転じて福と為す形で生まれたと思うと感慨深いですね。キャラクターデザイン:貞本義行、作画監督:庵野秀明、美術監督:小倉宏昌、音楽監督:坂本龍一と後のレジェンド達が一つの作品に結集しているということも1987年という年代の為せた業でしょう。評価としては「『良い』未満にはなり得ない作品だが、」というあたり。生き方に惑う青年が馬鹿にされながらも宇宙を目指すという王道のストーリーながら、下手に主人公に媚びるようなヒロインや取り巻きを出していないのがいいですね。日常を普通に過ごしていると近視眼的な享楽を求めがちなところ、ただ漫然と生きていてよいのかということに主人公が気づき、たとえ無為なことに思えても人生というものに情熱を燃やし始める。そこは上手く描かれていると...
☆☆☆(映画/アニメ)

アニメ 「おジャ魔女どれみ」 原作:東堂いづみ 星3つ

1. おジャ魔女どれみ1999年から2003年まで放映されていた子供向けのアニメシリーズです。現在は「プリキュア」シリーズに引き継がれている、テレビ朝日の日曜朝のアニメ番組ですね。グッズの売り上げも凄まじく、大きなセンセーションを巻き起こしたことは、この番組を視聴していた世代やその親世代には懐かしい思い出なのではないでしょうか。後継の「プリキュア」シリーズが15周年を迎えるにあたり、また、今年放映中の「HUGっと!プリキュア」では社会派な作風に寄せてきたこともあり、あらためてこの「おジャ魔女どれみ」という作品を再視聴するいい機会なのではないかと思います。おジャ魔女どれみ(1) posted with カエレバ千葉千恵巳 東映ビデオ 2000-10-21Amazon楽天市場
赤線地帯

「赤線地帯」溝口健二 評価:1点|かつて存在した合法売春地域を舞台に娼婦たちの人生を描く【社会派映画】

1956年公開のモノクロ映画。監督はヴェネツィア国際映画祭で2度のサン・マルコ銀獅子賞に輝いた往年の巨匠、溝口健二さんです。いまはなき「赤線地帯」のリアリティを上手く描いているという点では(とはいえ、私は赤線がなくなった後の生まれなので本当にリアルなのかは分かりませんが)良いと思いましたが、フィクションゆえ、映画ゆえの物語性にあまりにも欠ける作品だと感じました。2. あらすじ物語は吉原(=赤線地帯)のとある売春宿「夢の里」。売春防止法が国会で審議され、赤線地帯の存続が脅かされているなか、今日も「夢の里」では娼婦たちが客の相手をしていた。この時代も娼婦は堅気の商売だとは見なされておらず、彼女たちはそれぞれ、暗い事情を負ってこの場所で働いていた。ハナエには病気で働けない夫と小さな子どもがおり、彼女が家計を支えている。ゆめ子は身体を売りながら女手一つで一人息子を育てたが、その一人息子とは疎遠になっている。やすみは客に結婚詐欺を仕掛けて金を貯め、この生活からの脱出を夢見ている。ミッキーは家出娘であり、親に頼れないために「夢の里」で稼いでいた。そんななか、普通の結婚生活に憧れるより江が堅気の男性...
☆(映画/アニメ)

映画 「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」 監督:岩井俊二 星1つ

1. 打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?以前に記事を書いたアニメーション映画の原作です。岩井俊二監督の名声を一気に押し上げた作品で、現在でも映画ファンには人気があるようです。綺麗な映画ではあるのですが、ストーリーがあやふやで、玄人向けすぎる作品という印象でした。打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? posted with カエレバREMEDIOS ビデオメーカー 1999-08-07Amazon楽天市場
☆☆☆(映画/アニメ)

アニメ映画 「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」 監督:押井守 星3つ

1. うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーアニメ界・SF界では知る人ぞ知る名作。このように申し上げるとその界隈には怒られそうですが、世間的認知度はそんなものでしょう。内容としても、まさに先駆的・実験的というべき作品で、面白いかどうかはともかく、「ここから始まったんだ......」という気持ちにさせられる映画でした。うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーposted with カエレバ平野文 (C)1984東宝(C)高橋留美子/小学館 2015-07-01Amazon楽天市場
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」 新房昭之 評価:1点|青春恋愛SF要素をそれっぽく詰め合わせただけの意味不明作品【アニメ映画】

1993年に岩井俊二監督が手掛けた同名テレビドラマを原作としたアニメ映画。広瀬すず、菅田将暉、松たか子と、有名女優・俳優が声優として起用されています。宣伝を含め、出版社やテレビ局が本腰を入れて予算を投入したのは分かるのですが、結果的に意味不明という評価を受けても仕方がない作品になってしまったと思います。あらすじとある海辺の町に暮らす中学一年生、島田典道(しまだ のりみち)。夏休みの登校日、クラスメイトの男子達は「花火は横から見たら丸いのか、平べったいのか」という話題で盛り上がっていた。そう、この日はお祭りで打ち上げ花火が上がる日でもあった。そんな中、典道はクラスメイトの女子である及川なずな(おいかわ なずな)から「かけおち」に誘われる。しかし、これは典道が導いた結果だった。当初、なずなは典道の友人である安曇祐介(あずみ ゆうすけ)を誘っていたのだが、典道は手に入れた「もしも」の力で運命を変えたのである。母親の再婚に伴う引っ越しに抵抗したいなずな。典道となずなは逃避行のなかで何度も両親や友人に捕まってしまうが、そのたびに「もしも」を使ってやり直す。そして、やり直すたびに歪になり、現実感を...
イヴの時間

【近未来SF】アニメ 「イヴの時間」 監督:吉浦康裕 星3つ

1.イヴの時間人間とアンドロイドが共存する近未来を舞台にしたアニメで、「アルモニ」を手がけた吉浦康裕さんが監督を務めております。インターネット上のみで配信された作品となっており、全6話で、最終話以外は15分、最終話だけ30分という「テレビ」アニメではあまり見ない構成になっております。そんなマイナーな出所の作品ながら界隈では評価が高く、第9回東京アニメアワード優秀賞OVA部門を受賞し、第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の審査員推薦作品にも選ばれた作品です。その人気の高さから2010年には劇場版も製作され、公式DVD及びBlue-rayも発売されました。Blue-rayの海外版についてはクラウドファンディングが成功し、8か国語の字幕に加え、英語吹替版も製作されるなど、飛躍を果たした作品だといえるでしょう。私としても、「アンドロイドたちが人間の心を理解しようと葛藤する」というなかなか珍しい切り口に感心し、また、その切なく柔らかい物語に感動した次第です。 2. あらすじロボットが実用化されて久しく、アンドロイドが実用化されて間もない時代。アンドロイドは生活に浸透しつつあるものの、一...
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