経済・金融・経営・会計・統計

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新書 「リサイクルと世界経済」 小島道一 星2つ

1. リサイクルと世界経済 リサイクルという言葉が人口に膾炙するようになってからずいぶん経ちましたが、資源の制約や環境問題がクローズアップされる中で、その概念は今日においてますます輝きを増しているように感じられます。 そして、より一体化する世界経済の中で、リサイクルという行為もずいぶん前から国際貿易の中で行われるようになっております。日本の中古自動車や中古家電が発展途上国でよく利用されているのは有名な話ですし、紙やプラスチックの再生工場も多くは発展途上国に立地し、先進国から廃棄物を輸入し、原料として使用可能な状態にしてから再び先進国に輸出するというサイクルはもはや当たり前のこととなっているのです。 そのような、国際貿易の中でのリサイクル過程がどのように変化し、どのような問題を孕んでいて、どのように解決しているのかということが本書には記されています。著者はジェトロ・アジア経済研究所の小島道一氏。肩書は研究者ですが、本書の筆致には実務担当者として国際貿易の規制や促進に携わってきた側面が色濃く現れております。 2. 目次 第1章 国境を越えてリユースさ...
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教養書 「ゲーム理論はアート」 松島斉 星2つ

1. ゲーム理論はアート 松島斉東京大学教授によるゲーム理論の紹介本です。体系的な教科書や専門書ではなく、かといってエッセイ的な本や時事問題解説本でもないため「紹介本」としておくのが適切でしょう。近年、社会科学の分野で一大巨頭となりつつあるゲーム理論の考え方が現実とどう関連しているのか、また、ゲーム理論の考え方を現実の状況改善にどう適用しうるのかが事例検討を中心に説明されております。 全体的な印象としては、とても中途半端な本に思われました。ゲーム理論に馴染みのない人にわかりやすく書いていますといった論調にも関わらず碌な説明もなしに専門用語やアカデミックな言い回しが多用され、事例も社会科学に興味のある人しか関心を抱かないだろうというものばかり。かといって体系性や網羅性、専門的な深みがあるかといえばそうではないという本に仕上がっており、ところどころ面白い部分はあったものの、惹きこまれるというよりは購入した義務感で読み進めてしまった本になりました。 2. 目次 第1部 アートとしてのゲーム理論第1章 ゲーム理論はアートである第2章 キュレーションのすすめ第...
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教養書 「法人税入門の入門 2019年版」 辻敢・齊藤幸次 星1つ

1. 法人税入門の入門 「税務研究会出版局」という聞きなれない出版社から刊行されている本書。調べたところ「税務研究会」という会社があるらしく、その業務内容は「税務、経理、会計などの実務情報サービスとして、定期刊行物、書籍、データベースなどを展開」。どうやら税務関係の本を出版する専門出版社のようです。 このような本を手に取った理由を申し上げますと、以前に「日本の税金 第3版」を読んだ際にその中で法人税のことが少しだけ取り上げられておりまして、仕事柄、法人税の知識が必要な場面があるにも関わらず体系的に勉強したことがないなと手に取ってみた次第です。 しかし、結果としては大幅な期待外れに終わりました。 2. 目次 第1章 法人税の基礎第2章 収益の税務第3章 費用の税務第4章 税額計算と申告・納付第5章 連結納税制度第6章 グループ法人単体課税制度 3. 感想 ある程度経理の知識があり、なおかつ税務にも興味があってその入門本を探している、という場合、本書を手に取ることはお薦めいたしません。まさにその2点にこそ本書の欠点が凝縮され...
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新書 「日本の税金 第3版」 三木義一 星3つ

1. 日本の税金 2019年10月1日から消費税が10%に引き上げられ、同時に軽減税率も導入されました。 最近ではレジで持ち帰りだと宣言して軽減税率の恩恵を受けながら、実際にはイートインスペースで店内飲食する「イートイン脱税」が問題になるなど、前途多難の様相です。 もちろん、「イートイン脱税」は悪いことですが、「制度設計が人々の行動に及ぼす影響」としては典型的で実感しやすい例にもなっておりまして、これを機に政治・政策分野における「制度設計」の対してもっと関心が集まって欲しいと思うところであります。 さて、上述のようにわたしたちの生活に多大な影響を与える「税金」ですが、こういった個別の問題から派生して、そもそも、いったいどのような税金が日本には存在しているのか、そして、それらはどのような制度設計が為されていて、その制度設計はどのような理念に基づくものなのか、ということに興味が湧いてきた方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そこで、今回紹介するのが本書になっております。題名通り日本において施行されている税金について概括的に説明した書籍になっておりまして、2...
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新書 「平成の通信簿」 吉野太喜 星2つ その4

1. 平成の通信簿 その4 「語り」ではなくデータをもとに平成時代を振り返り、日本を取り巻く事情につき数値でその変遷を示そうという本書。本記事はその感想の「その4」になります。「その3」はこちら。 「その4」で取り上げるのは第4章、「身体・健康から見る30年」。高齢化、医療費、体格及び身体能力、そして死に方といった、成熟社会・高齢化社会で課題となっている諸事項が取り上げられています。 2. 目次 1. 世界の中の日本2. 経済・労働からみる30年3. 家計・暮らしから見る30年4. 身体・健康から見る30年 3. 感想:身体・健康からみる30年 第4章で紹介されるデータのうち、今回取り上げるのは「24. 高齢化」「25. 医療費」「26 身体」「27. 死」になります。 逼迫している一方で繊細な問題のため、普段は目をつぶりがちな日本の課題。それがデータとして赤裸々に表れている章になっています。 「24. 高齢化」と「25. 医療費」では、平成年間における寿命と高齢化率の伸長度合い、そして増え続ける医療費...
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新書 「平成の通信簿」 吉野太喜 星2つ その3

1. 平成の通信簿 その3 「語り」ではなくデータをもとに平成時代を振り返り、日本を取り巻く事情につき数値でその変遷を示そうという本書。本記事はその感想の「その3」になります。「その2」はこちら。 「その3」で取り上げるのは第3章、「家計・暮らしから見る30年」。消費、教育、観光といったお金の使い方や、会議の長さ、メディアの視聴時間といった時間の使い方、そして貧困という家計の苦難が取り上げられています。 2. 目次 1. 世界の中の日本2. 経済・労働からみる30年3. 家計・暮らしから見る30年4. 身体・健康から見る30年 3. 感想:家計・暮らしからみる30年 第3章で紹介されるデータのうち、今回取り上げるのは「18. 教育」「21. 先進国の貧困」「23 メディア」になります。 また、「17 消費」にも必要に応じて言及いたします。 「家計・暮らしから見る30年 」というタイトルの通り、私たちの幸福に直結し、最も身近に感じる分野の統計ですから、示されるデータの生々しさが目立ちます。1日1日の変化をあまり感じない部分...
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新書 「平成の通信簿」 吉野太喜 星2つ その2

1. 平成の通信簿 その2 「語り」ではなくデータをもとに平成時代を振り返り、日本を取り巻く事情につき数値でその変遷を示そうという本書。本記事はその感想の「その2」になります。「その1」はこちら。 「その2」で取り上げるのは第2章、「経済・労働から見る30年」。国際収支の推移や様々な産業の興亡、近年注目の労働生産性などが取り上げられています。 2. 目次 1. 世界の中の日本2. 経済・労働からみる30年3. 家計・暮らしから見る30年4. 身体・健康から見る30年 3. 感想:経済・労働からみる30年 第2章で紹介されるデータのうち、今回取り上げるのは「10. 国際収支」「12 農業」「13 漁業」になります。 世の中には製造業のパフォーマンスだけを見て日本の「国力」を測ろうとする風潮がまだ根強く存在し、日常のニュースやインターネットの論調なんかも製造業中心の説明になりがちですが、それだけに、製造業以外に焦点を当てたこれらのデータからは平成日本を振り返るための興味深い示唆が得られます。 「10. 国際収支」 では、貿易...
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新書 「平成の通信簿」 吉野太喜 星2つ その1

1. 平成の通信簿 その1 元号が平成から令和に変わり、様々な「平成総括本」は出版されている今日。本書もそのバリエーションの一つですが、「識者が平成を語る」という形式ではなく、様々なデータをもとに平成という時代において日本がどう変化したのかを数値で見ようという変わり種。最近のベストセラーの一つである「FACTFULNESS」を意識していると著者自身が本書の中で著している通り、二重の意味で流行を追った本です。 感想としては、面白いが薄いといったところでしょうか。なるほど、平成元年から今までというとちょうどバブル崩壊直前からの移り変わりが示されていてなかなか鮮烈なものが多くなります。普通の本でそんなことをすれば恣意的な切り取りとされるのでしょうが、あくまで平成振り返り本ならばそれで正しいわけです。高度経済成長を経験したことで「強い日本」の幻想をいまでも持っている人々や、逆にバブル崩壊以降に生まれて「化け物じみ(ているように見え)た日本」を知らない世代にはいい刺激になるスコープなのだと思います。 ただ、普段から社会問題に興味がある人ならば、見たことがあったり直感通りのデー...
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教養書 「制度・制度変化・経済成果」 ダグラス・C・ノース 星3つ

1. 制度・制度変化・経済成果 1993年のノーベル経済学賞受賞者、ダグラス・C・ノースの著書で、原著は1990年刊行ですから当時の業績を纏めた内容となっております。難解な言い回しも目立ちますが(堅い訳だからかもしれませんが)、「制度」を軸に新古典派経済学に対して大きな影響を与えた現代の古典として面白く読むことができます。 2. 目次 第Ⅰ部 制度第Ⅱ部 制度変化第Ⅲ部 経済成果 3. 感想 本書全体が問いかけることとしてまず出てくるのが、当時隆盛を誇っていた新古典派経済学(の競争と淘汰を強調する部分)に対する、「それではなぜ、『既に競争は終わっていないのか』」という語りかけです。 確かに、わたしたちの身の回りでも、あるいは様々な国の経済体制を知識として学んでいく中でも、そこには決して効率的な制度ばかりがあるわけではなく、むしろ、非効率的な制度が多く残存していることに気づきます。 なぜ、競争圧力は非効率的な制度の除去を導かないのか、導くとしても、なぜ素早くないのか。なぜ僅かな経済停滞国しか経済発展国のモデルを見習って効率的な制度を導入...
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新書 「中国経済講義」 梶谷懐 星3つ 第6章・終章

1. 中国経済講義 前稿である「第4章・第5章」の続きです。前稿はこちら。 2. 目次 序章 中国の経済統計は信頼できるか第1章 金融リスクを乗り越えられるか第2章 不動産バブルを止められるか第3章 経済格差のゆくえ第4章 農民工はどこへ行くのか第5章 国有企業改革のゆくえ第6章 共産党体制での成長は持続可能か終章 国際社会のなかの中国と日中経済関係 本記事で感想を述べるのは第6章と終章です。 第6章 共産党体制での成長は持続可能か 大きく出たなぁというタイトルですが、中国崩壊論の極北はここに辿り着きますよね。とにかく、共産党独裁体制が持続するはずもなく、崩壊時のカタストロフィに中国経済は耐えられない、という理論です。 本書でも、「財産権保護」や「法の支配」に欠けていること、「政府による説明責任なき市場介入」などを理由に主流派の経済学者は持続不可能だとする見解をとっていることが冒頭で挙げられます。 そういった社会経済体制では、例えば特許などが適切に保護されなかったり、相互信頼の欠如から取引が滞ったりする...
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新書 「中国経済講義」 梶谷懐 星3つ 第4章・第5章

1. 中国経済講義 前稿である「第2章・第3章」の続きです。前稿はこちら。 2. 目次 序章 中国の経済統計は信頼できるか第1章 金融リスクを乗り越えられるか第2章 不動産バブルを止められるか第3章 経済格差のゆくえ第4章 農民工はどこへ行くのか第5章 国有企業改革のゆくえ第6章 共産党体制での成長は持続可能か終章 国際社会のなかの中国と日中経済関係 本記事で感想を述べるのは第4章と第5章です。第6章以下は次稿に続きます。 第4章 農民工はどこへ行くのか 中国の労働・貧困問題の象徴として取り上げられることの多い「農民工」と呼ばれる人々。低賃金で3K的な労働を行う都市の貧困層、という切り口はステレオタイプ的な分かりやすさもあってドキュメンタリーなんかでもテーマとして採用されることが多いような気がします。日本の高度経済成長期に出稼ぎのため東京や大阪に出てきた人々の姿と被るという点も、文脈を把握できている気になる要因なのかもしれません。 この第4章はそんな「農民工」にまつわる様々な問題が列挙されているため、一言で結論を述...
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新書 「中国経済講義」 梶谷懐 星3つ 第2章・第3章

1. 中国経済講義 前稿である「序章・第1章」の続きです。前稿はこちら。 2. 目次 序章 中国の経済統計は信頼できるか第1章 金融リスクを乗り越えられるか 第2章 不動産バブルを止められるか 第3章 経済格差のゆくえ 第4章 農民工はどこへ行くのか 第5章 国有企業改革のゆくえ 第6章 共産党体制での成長は持続可能か 終章 国際社会のなかの中国と日中経済関係 本記事で感想を述べるのは第2章と第3章です。第4章以下は次稿に続きます。 第2章 不動産バブルを止められるか 最近の「中国崩壊論」の主流といえばこれではないでしょうか。投機にだけ使われる居住者のいない集合住宅。いわゆる「幽霊マンション」などがいかにも悪質なバブルを象徴しているように描かれることが多い気がします。不動産の値上がりのせいで住居をなかなか見つけられない都市部の庶民が抱える不満という切り口もありますね。 もちろん、「幽霊マンション」や「鬱憤を溜める庶民」の実在を否定するつもりなど毛頭ありませんが、本書の良いところは「そもそも不動産市場への過...
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新書 「中国経済講義」 梶谷懐 星3つ 序章・第1章

1. 中国経済講義 既に中国のGDPが日本のGDPを抜いて久しく、世界の名目GDPの16%を占めるまでになった中国経済。インバウンドで観光客として来日する姿を見ると、立場は明確に逆転したのだなぁと感じてしまいます。中国経済の存在感は外交の舞台でも強く発揮されておりまして、現在進行中の米中貿易協議などはまさに象徴的。アメリカに負けず劣らずの存在感を見せるIT企業群の動向やそれに対する西側諸国の反応、一帯一路を合言葉として世界中にばら撒かれる投資マネーなど、中国経済ニュースを目にしない日はありません。 しかしながら、他の国の経済が好調とあらば粗探しをしたくなるのが人間の性というもの。隣国であればなおさらという訳なのか、インターネット上では中国を一方的に見下す論調の記事が溢れかえっておりますし、書店でも中国経済「崩壊」などの文字が躍る本が平積みされています。 そんな中、中国経済の「現在」について、特に世間的注目が高い分野を中心にそつなく説明しているのが本書の特徴。極端な理論にのめり込んでしまっている人にとっては「一顧だにする価値もない」書籍でしょうし、極端に触れないよう心...
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新書 「現代経済学」 瀧澤弘和 星4つ

1. 現代経済学 古くは傾斜生産方式や所得倍増計画、最近ではアベノミクスなど、どの政権でも経済政策は中心的な分野として扱われ、人々の生活に大きな影響を与えてきました。海外でも、例えば最近の米国における大幅減税と財政出動はトランプ大統領の目玉政策の一つです。 そんな経済政策に理論的枠組みを与えてきたのが経済学という分野。共産主義退潮の後は(新)ケインズ主義と新古典派が主要な流派として語られることが多かったのですが、近年になって経済学の捉え方、経済に対する焦点の当て方が多様化しており、経済学の枠組み自体が決定的に変化しつつあります。本書の副題である「ゲーム理論・行動経済学・制度論」がまさにその変革を代表するキーワードと言えるでしょう。本書の序章でも触れられている通り、最近のノーベル経済学賞はこれらの分野の第一人者が次々と受賞しています。そして、入門レベルの経済学の知識を前提に、そういった「現代」の経済学をこれまでの経済学と対比させながら、古今の繋がりとブレイクスルーを過不足ない記述で分かりやすく伝えてくれているのが本書。新しい経済学の流れを概観するのにうってつけの新書です。 ...
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教養書 「ウォール街のランダム・ウォーカー」 バートン・マルキール 星2つ

1. ウォール街のランダム・ウォーカー 1973年の書版発行以来、投資界隈で読み続けられている本であり、2016年発売の日本語最新版が第11版の訳書になります。ネット証券が台頭し、NISAやiDECOといった個人向けの投資制度も充実してきた昨今、投資についての基礎を身に着けておいて損はないでしょう。年金がGPIFによって運用されるようになったことで、年金の現状について一家言持つにはGPIFのポートフォリオを語れる必要が出てきたため、政治学に興味がある立場としても面白いのではないかと手に取りました。 評価としては微妙だった、というところですね。全般的に誤ったことが書いてあるとは思わないのですが、世界史や経済・金融の知識が全くない人向け(大学で学んでいない人)の説明が全般的に目立つ一方で、前半のほとんどを世界史上に起こったバブル事例の説明に消費してしまうなど、レベルの統一感がない構成になっており、どういった層を満足させられるのだろうという疑問を感じてしまいました。 ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉 ―株式投資の不滅の真理 posted with ヨメレバ バー...
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