【経済学】おすすめ経済学本ランキングベスト4【オールタイムベスト】
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【経済学】おすすめ経済学本ランキングベスト4【オールタイムベスト】
本ブログで紹介した経済学系の書籍からベスト4を選んで掲載しています。第4位 「資本主義が嫌いな人のための経済学」ジョセフ・ヒースカナダの哲学者、ジョセフ・ヒースによる経済学の本。刺激的なタイトルですが、内容の本質を表しているのは帯のコメント。「ヤバくない経済学」。経済学の主流王道基本の考えをもとに、右派そして左派にはびこる誤謬を指摘するという著作です。経済学を学んだことがある人にとってはその復習に、ない人にとっては経済に関する主張を解釈する際のフィルターとして活用できます。本著は前半と後半に大きく分かれており、前半部では右派、保守派の誤りを、後半部では左派、リベラル派の誤りが指摘されます。SNSや動画投稿サイトで蔓延る俗論的な経済学説に対して、少なくとも学術界の主流派はこのように考えているんだな、ということが分かる著作となっております。経済学に対する自分自身のバランス感覚を保つためにお薦めです。
「FIRE 最強の早期リタイア術」クリスティー・シェン&ブライス・リャン 評価:4点|FIRE入門から中級クラスの知識と手法を総覧する、本場アメリカ仕込みの決定版FIRE書籍【資産運用】
経済紙やビジネス書の界隈においてFIREという言葉が耳目を集めるようになって久しいですが、そんなFIREの考え方や具体的実践方法を示した書籍として、特にFIREの起源国であり本場でもあるアメリカ発の書籍として紹介されることの多い著作が本書となります。当概念に詳しい方にとっては耳にタコかもしれませんが、FIREとはFinancial Independent Retire Earlyの略称であり、日本語に訳せば「経済的に独立して早期に退職する」という意味になります。要は会社組織への金銭的な依存をなくし、一般的な退職年齢とされる60歳や65歳を待たずに退職することで自由な人生を謳歌しようというわけです。そう聞くとフリーランスや一人親方として独立するということかな、と考える方が多数でありましょうし、そういった手に職をつけて独立するという観念もFIREと無関係なわけではありません。しかし、この時代に置いて新しく設えられたFIREという言葉は、どちらかというと、そういった職業人としての自立を示すのではなく、専ら資産運用で生活費を賄えるようにすることで、(非自発的)労働そのものから独立してしまおうと...
「やさしくない国ニッポンの政治経済学」田中世紀 評価:2点|人助けもしなければ社会参加もせず、それでいて貧乏な日本とその処方箋【社会学】
日本人の良いところは他人に優しくするところであり、お人好し過ぎる点が国際外交やビジネスの場面で仇になってしまうほど日本人は優しいのだ。こうしたステレオタイプ的な日本人像は、特に日本人のあいだで長く語られてきた典型的日本人像であります。(自分で自分たちのことを「優しい」と思っているなんて、個人的にはどうしようもなく気持ち悪いですが......)東京オリンピックの招致やインバウンド需要取り込みのために近年では「おもてなし」の精神が強調される機会も多く、こうした日本人の自己像はますます強化されているのではないでしょうか。そんな風潮に一石を投じた記事が「Yahoo!ニュース」に投じられたのは2019年10月のこと。本書のプロローグもまた、この記事の紹介から始まります。日本人は、本当のところ世界の中でも全然「優しくない」集団なのではないか。そんな疑念を皮切りに、日本人の利他性/利己性を社会科学的に分析。貧困問題とも絡めながら論じた著作となっております。目次プロローグ序章 人にやさしくない、貧しい国ニッポン第1章 他人を信頼しない日本人第2章 そもそも、なぜ人は他人を助けるのか第3章 日本人の社会...
「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015」橘玲 評価:2点|サラリーマンはコスパが悪い【資産運用】
経済や金融に造詣がある作家として活躍している橘玲さんの著作。2002年に発売された本書は内容の画期性からベストセラーかつロングセラーとなり、「2015」や「新版」という形で改訂されながら今日でも読まれています。その内容は、資産形成を行って蓄財し、サラリーマンとしてでなくフリーランス、あるいはマイクロ法人の社長になることで徹底して節税しつつ有利に融資を得てさらに投資をしろ、というもの。当時としては斬新だったかもしれませんが、投資や節約についての情報が氾濫している現代においては凡作になってしまったかな、というのが個人的な感想です。目次Prologue 1995-2014PART1 人生を最適設計する資産運用の知識PART2 人生を最適設計するマイクロ法人の知識PART3 人生を最適設計する働き方感想Part1では、サラリーマンがなんとかお金持ちになる方法として、住居費と生命保険費用の見直しを中心とした節約と、投資の重要性が説かれます。とはいえ、インデックス投資でガンガン積み立てろ、というスタンスではないところに著者の新参者ではない感があります。20年近く下がり続けた日経平均株価の例や、IT...
「勝っている投資家はみんな知っているチャート分析」福島理 評価:1点|本当に何も知らない初心者向けのチャート解説本【資産運用】
大手ネット証券会社マネックス証券のアナリストである福島理氏の著書。株式投資の世界においては、各企業の業績や周辺環境から株価の割安/割高を判断するファンダメンタル分析と、株価そのものの推移傾向から将来の値動きを予想するチャート分析という、大きく分けて2つの分析手法があり、本書は後者の入門本という位置づけです。もちろん、入門本なのですから、一から説明するという趣旨は分かります。しかし、本書の説明はあまりにも形式的であり、インターネットで簡単に手に入る情報しか紹介されてないうえ、その内容が劇的に分かりやすかったりするわけでもありません。おまけ程度についている各章僅か数ページずつの漫画もいまいちチャートとの関連性が分かりづらく、あまり理解の助けになっていないという印象。投資ブームに乗っかっただけの著作だと感じました。目次Part1 過去の高値と安値Part2 ローソク足Part3 トレンドラインPart4 チャートパターンPart5 移動平均線Part6 MACDPart7 ボリンジャーバンドPart8 一目均衡表Part9 RSIPart10 フィボナッチ感想株式投資の経験がある人ならば、目...
【経済学入門の王道】教養書「マンキュー経済学 ミクロ編」グレゴリー・マンキュー 評価:4点【経済学】
目次第Ⅰ部 イントロダクション第Ⅱ部 市場はどのように機能するか第Ⅲ部 市場と厚生第Ⅳ部 公共部門の経済学第Ⅴ部 企業行動と産業組織第Ⅵ部 労働市場の経済学第Ⅶ部 より進んだ話題感想世界で最も有名な経済学の教科書であり、特にアメリカでは長年に渡り有名大学で採用されてきた入門書です。近年ではその古典派的な傾向が批判され、より(アメリカ的な意味での)リベラルな教科書への置き換えが進む傾向にあるという記事もありますが、本書こそ伝統的な経済学の考え方を学ぶにはうってつけだという証左でもあるのだと思います。(よりリベラルな教科書となるとクルーグマンあたりでしょうか)オーソドックスな経済学の思考枠組みが丁寧に語られるという内容のため、経済学についての新しい知見という意味での驚きは少なかったのですが、大変優れた「教科書」であることはひしひしと実感できたため、本記事では本書の「教科書」としての美点を3つ語っていきます。①一から十まで論理的かつ丁寧に説明する社会的な事象に関心があり、進学校卒業程度の知識や思考力は持つが、経済学のことは全く知らない。そんな人に向けて、経済学についての考え方をゼロから頭の中...
「リサイクルと世界経済」小島道一 評価:2点|国際貿易の中におけるリサイクルの立ち位置【経済学】
リサイクルという言葉が人口に膾炙するようになってからずいぶん経ちましたが、資源の制約や環境問題がクローズアップされる中で、その概念は今日においてますます輝きを増しているように感じられます。そして、より一体化する世界経済の中で、リサイクルという行為もずいぶん前から国際貿易の中で行われるようになっております。日本の中古自動車や中古家電が発展途上国で利用されているのは有名な話ですし、紙やプラスチックの再生工場も多くは発展途上国に立地しています。先進国から廃棄物を輸入し、原料として使用可能な状態にしてから再び先進国に輸出するというサイクルはもはや当たり前のこととなっているのです。そのような、国際貿易の中でのリサイクル過程がどのように変化し、どのような問題を孕んでいて、どのように解決しているのかということが本書には記されています。著者はジェトロ・アジア経済研究所の小島道一氏。肩書は研究者ですが、本書の筆致には実務担当者として国際貿易の規制や促進に携わってきた側面が色濃く現れております。目次第1章 国境を越えてリユースされる中古品第2章 国境を越えてリサイクルされる再生資源第3章 中古品や再生資源...
【経済学】 「ゲーム理論はアート」 松島斉 星2つ
1. ゲーム理論はアート松島斉東京大学教授によるゲーム理論の紹介本です。体系的な教科書や専門書ではなく、かといってエッセイ的な本や時事問題解説本でもないため、「紹介本」としておくのが適切でしょう。近年、社会科学の分野で一大巨頭となりつつあるゲーム理論の考え方が現実とどう関連しているのか、また、ゲーム理論の考え方を現実の状況改善にどう適用しうるのかが事例検討を中心に説明されております。そんな本書ですが、全体的にとても中途半端な本に思われました。ゲーム理論に馴染みのない人にもわかりやすく書いていますといった論調にも関わらず、碌な説明もなしに専門用語やアカデミックな言い回しが多用され、事例も社会科学に興味のある人しか関心を抱かないだろうというものばかり。かといって、体系性や網羅性、専門的な深みがあるかといえばそうではないという本に仕上がっており、ところどころ面白い部分はあったものの、惹きこまれるというよりは購入した義務感で読み進めてしまった本になりました。2. 目次第1部 アートとしてのゲーム理論第1章 ゲーム理論はアートである第2章 キュレーションのすすめ第3章 ワンコインで貧困を救う第...
「法人税入門の入門 2019年版」辻敢・齊藤幸次 評価:1点|帯に短く襷に長く、実用的でもなければ本質的でもない専門書【税法】
「税務研究会出版局」という聞きなれない出版社から刊行されている書籍。調べたところ「税務研究会」という会社があるらしく、その業務内容は「税務、経理、会計などの実務情報サービスとして、定期刊行物、書籍、データベースなどを展開」。どうやら税務関係の本を出版する専門出版社のようです。このような本を手に取った理由を申し上げますと、以前に「日本の税金 第3版」を読んだ際にその中で法人税のことが少しだけ取り上げられておりまして、仕事柄、法人税の知識が必要な場面があるにも関わらず体系的に勉強したことがないなと手に取ってみた次第です。しかし、結果としては大幅な期待外れに終わりました。目次第1章 法人税の基礎第2章 収益の税務第3章 費用の税務第4章 税額計算と申告・納付第5章 連結納税制度第6章 グループ法人単体課税制度感想ある程度経理の知識があり、なおかつ税務にも興味があってその入門本を探している。そのような場合、本書を手に取ることはお薦めいたしません。まさにその2点にこそ、本書の欠点が凝縮されているからです。第1の欠点は、「会計」に加えて「税務」も知りたいと思って手に取ったにも関わらず、個々の論点や...
【税制】新書 「日本の税金 第3版」 三木義一 星3つ
1. 日本の税金2019年10月1日から消費税が10%に引き上げられ、軽減税率も同時に導入されました。最近ではレジで持ち帰りだと宣言して軽減税率の恩恵を受けながら、実際にはイートインスペースで店内飲食する「イートイン脱税」が問題になるなど、前途多難の様相です。もちろん、「イートイン脱税」は悪いことですが、「制度設計が人々の行動に及ぼす影響」としては典型的で実感しやすい例にもなっておりまして、これを機に政治・政策分野における「制度設計」の対してもっと関心が集まって欲しいと思うところであります。さて、上述のようにわたしたちの生活に多大な影響を与える「税金」ですが、こういった個別の問題から派生して、そもそも、いったいどのような税金が日本には存在しているのか、そして、それらはどのような制度設計が為されていて、その制度設計はどのような理念に基づくものなのか、ということに興味が湧いてきました。そこで、今回読んでみたのが本書となっております。2003年に初版が発行され、2018年に第3版が発行されているロングセラー。帯には「定番の入門書」と太字で書いてありましたが、まさにその通りなのでしょう。著者は...
【政治経済】「平成の通信簿」 吉野太喜 星2つ
1. 平成の通信簿元号が平成から令和に変わり、様々な「平成総括本」は出版されている今日。本書もそのバリエーションの一つですが、「識者が平成を語る」という形式ではなく、平成という時代において日本がどう変化したのかを様々なデータをもとに数値で見ようという変わり種。最近のベストセラーの一つである「FACTFULNESS」を意識していると著者自身が本書の中で著している通り、二重の意味で流行を追った本です。そんな本書に対する感想としては、面白いが薄いといったところでしょうか。なるほど、平成元年から現在までというと、ちょうどバブル崩壊直前から令和元年までの期間ですので、様々な指標の数値的変遷には鮮烈なものが多くあります。そしていまの日本には、高度経済成長を経験した世代から、バブルはもちろん2000年代前半にあった一瞬の好景気すら知らない世代が住んでいるわけで、高度経済成長を経験したことで「強い日本」の幻想をいまでも持っている人々にも、逆にバブル崩壊以降に生まれて「化け物じみ(ているように見え)た日本」を知らない世代にも、非常にいい刺激になる時期の切り取りかたになっております。ただ、普段から社会問題...
【制度・制度変化・経済成果】ノーベル経済学賞を受賞した経済学者による新制度派経済学の礎を築いた古典 評価:3点【ダグラス・C・ノース】
1993年のノーベル経済学賞受賞者、ダグラス・C・ノースの著書。原著は1990年の刊行となっており、ノーベル経済学賞受賞直前までの業績を纏めた内容となっております。難解な言い回しも目立ちますが(堅い訳だからかもしれませんが)、「制度」を軸に新古典派経済学に対して大きな影響を与えた現代経済学の古典として面白く読むことができる著作です。目次第Ⅰ部 制度第Ⅱ部 制度変化第Ⅲ部 経済成果感想ノース教授が教鞭を執っていた1970年代から90年代といえば自由競争の価値を重視する新古典派経済学の全盛期でありますが、本書は巻頭からその「自由競争」について重大な問いを投げかけます。その問いとは「なぜいまだに『競争』が終わっていないのか」という問いかけです。確かに、人類社会は太古の昔から(太古の昔ほど?)様々なレベルにおける「自由競争」に直面してきたはずです。その中で優勝劣敗が決まり、より優れた財やサービスだけが生き残っていくとすれば、現代社会時点で誕生から多くの時間が過ぎた財やサービスの市場においてはもう非効率など残っていないはずです。しかし、現実には様々な非効率が残存しており、ともすれば、非効率な財や...
新書 「中国経済講義」 梶谷懐 星3つ 第6章・終章
1. 中国経済講義 前稿である「第4章・第5章」の続きです。前稿はこちら。 2. 目次 序章 中国の経済統計は信頼できるか第1章 金融リスクを乗り越えられるか第2章 不動産バブルを止められるか第3章 経済格差のゆくえ第4章 農民工はどこへ行くのか第5章 国有企業改革のゆくえ第6章 共産党体制での成長は持続可能か終章 国際社会のなかの中国と日中経済関係本記事で感想を述べるのは第6章と終章です。第6章 共産党体制での成長は持続可能か 大きく出たなぁというタイトルですが、中国崩壊論の極北はここに辿り着きますよね。とにかく、共産党独裁体制が持続するはずもなく、崩壊時のカタストロフィに中国経済は耐えられない、という理論です。本書でも、「財産権保護」や「法の支配」に欠けていること、「政府による説明責任なき市場介入」などを理由に主流派の経済学者は持続不可能だとする見解をとっていることが冒頭で挙げられます。そういった社会経済体制では、例えば特許などが適切に保護されなかったり、相互信頼の欠如から取引が滞ったりする恐れがあり、それが経済発展やイノベーションを阻害する、というのが経済学における王道の考...