新書・教養書(ジャンル)

生き方・自己啓発

「FIRE 最強の早期リタイア術」クリスティー・シェン&ブライス・リャン 評価:4点|現代人が囚われている愚かさの監獄について老教授が語る【資産運用】

経済紙やビジネス書の界隈においてFIREという言葉が耳目を集めるようになって久しいですが、そんなFIREの考え方や具体的実践方法を示した書籍として、特にFIREの起源国であり本場でもあるアメリカ発の書籍として紹介されることの多い著作が本書となります。 当概念に詳しい方にとっては耳にタコかもしれませんが、FIREとはFinancial Independent Retire Earlyの略称であり、日本語に訳せば「経済的に独立して早期に退職する」という意味になります。 要は会社組織への金銭的な依存をなくし、一般的な退職年齢とされる60歳や65歳を待たずに退職することで自由な人生を謳歌しようというわけです。 そう聞くとフリーランスや一人親方として独立するということかな、と考える方が多数でありましょうし、そういった手に職をつけて独立するという観念もFIREと無関係なわけではありません。 しかし、この時代に置いて新しく設えられたFIREという言葉は、どちらかというと、そういった職業人としての自立を示すのではなく、専ら資産運用で生活費を賄えるようにすることで、(非自発的)...
社会学・歴史・スポーツ

「やさしくない国ニッポンの政治経済学」田中世紀 評価:2点|人助けもしなければ社会参加もせず、それでいて貧乏な日本とその処方箋【社会学】

日本人の良いところは他人に優しくするところであり、お人好し過ぎる点が国際外交やビジネスの場面で仇になってしまうほど日本人は優しいのだ。 こうしたステレオタイプ的な日本人像は、特に日本人のあいだで長く語られてきた典型的日本人像であります。 (自分で自分たちのことを「優しい」と思っているなんて、個人的にはどうしようもなく気持ち悪いですが......) 東京オリンピックの招致やインバウンド需要取り込みのために近年では「おもてなし」の精神が強調される機会も多く、こうした日本人の自己像はますます強化されているのではないでしょうか。 そんな風潮に一石を投じた記事が「Yahoo!ニュース」に投じられたのは2019年10月のこと。 本書のプロローグもまた、この記事の紹介から始まります。 日本人は、本当のところ世界の中でも全然「優しくない」集団なのではないか。 そんな疑念を皮切りに、日本人の利他性/利己性を社会科学的に分析。 貧困問題とも絡めながら論じた著作となっております。 目次 プロローグ 序章 人にやさしくない、貧しい...
作品の感想

「バカの壁」養老孟子 評価:2点|現代人が囚われている愚かさの監獄について老教授が語る【社会学】

400万部以上を売り上げ、日本のベストセラーランキング5位に君臨する伝説的新書である本作。 東京大学名誉教授である養老孟司さんの著作で、2006年には「超バカの壁」、2021年には「ヒトの壁」が発売されるなどシリーズ化されており、人気は現在でも健在です。 本作は新潮社編集部による口述筆記によって著されており、養老さんの語りを分かりやすく文章化したもの。 そのため、確かに文章としては柔らかく読み易いものになっております。 ただ、だからといって内容が濃いか、あるいは理解しやすいかと言われればそれはまた別の話。 社会批判についての方向性としては個人的に賛同できる部分が多かったですが、あくまで老教授の居酒屋談義という色合いの著作です。 目次 第1章 「バカの壁」とは何か 第2章 脳の中の係数 第3章 「個性を伸ばせ」という欺瞞 第4章 万物流転、情報不変 第5章 無意識・身体・共同体 第6章 バカの脳 第7章 教育の怪しさ 第8章 一元論を超えて 第1章 「バカの壁」とは何か 第一章では本作のタイ...
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生き方・自己啓発

「エッセンシャル思考」グレッグ・マキューン 評価:2点|絶対にイエスだと言いきれないなら、それはすなはちノーである【生き方】

シリコンバレーのコンサルティング会社CEO、といういかにもな肩書の人物によって著された自己啓発本のベストセラー。 本書の主張は「エッセンシャル思考」というタイトルに凝縮されており、すなはち、本質的に重要なごく少数の事柄に集中して取り組むことで人生の質が劇的に上昇するというものです。 いかに無駄を削ってやるべきことを絞り込むのか、そのためにはどのような心構えを持ち、どのような思考枠組みで物事を評価し、どのように行動するべきなのか。 様々な事例を引きながら、著者は読者に「無駄」をドアスティックに削りなさいと迫ります。 この「ドラスティックに」という点が本書のミソであり、著者は「90点ルール」つまり評価が89点以下の事柄はやめておけとまで言います。 多少有用である程度のことはやらない、90点以上だと評価できることだけをやる。 そういった主張を支える著者の論理や持ち出される例には説得力があるのですが、著者が「やめろ」と主張することは人間の性としてついついやってしまうことが多く、凡人が人間的性質に基づく誘惑を振り切って、ここまで劇的に生きることはできるのかと...
生き方・自己啓発

「死ぬ瞬間の5つの後悔」ブロニー・ウェア 評価:3点|「もっとお金を儲ければよかった」という人はいない【生き方】

介護人として数多くの人物を看取ってきた著者がそれぞれの人物の最期に焦点を当て、彼ら/彼女らが死の直前にどのようなことを後悔していたのかを綴った著作になります。 元々出版を予定していた本ではなく、著者のブログが世界的に読まれるようになり、その結果として出版に至ったという「草の根」の支持から生まれた本です。 この手の本によくある、文字がやたらに大きくて行と行のあいだも極端に広く、見開き2ページごとにサブタイトルが一つという形式の本かなという先入観をもって購入したのですが、意外なことに、字がびっしりと詰まった読み応えのある本でした。 著者に介護を受けた人々が、人生の最終盤に何を想い、著者とともにどのような行動を起こしたのか。 人生でやりすぎてしまうこと、人生でやり残してしまうことの典型が淡々と語られる著作であり、ノンフィクション作品としての切ない魅力と、残りの人生をどう生きるかについて考えさせられる洞察を持った作品になっております。 目次 後悔一 自分に正直な人生を生きればよかった 後悔二 働きすぎなければよかった 後悔三 思い切って自分の気...
生き方・自己啓発

「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015」橘玲 評価:2点|サラリーマンはコスパが悪い【資産運用】

経済や金融に造詣がある作家として活躍している橘玲さんの著作。 2002年に発売された本書は内容の画期性からベストセラーかつロングセラーとなり、「2015」や「新版」という形で改訂されながら今日でも読まれています。 その内容は、資産形成を行って蓄財し、サラリーマンとしてでなくフリーランス、あるいはマイクロ法人の社長になることで徹底して節税しつつ有利に融資を得てさらに投資をしろ、というもの。 当時としては斬新だったかもしれませんが、投資や節約についての情報が氾濫している現代においては凡作になってしまったかな、というのが個人的な感想です。 目次 Prologue 1995-2014 PART1 人生を最適設計する資産運用の知識 PART2 人生を最適設計するマイクロ法人の知識 PART3 人生を最適設計する働き方 感想 Part1では、サラリーマンがなんとかお金持ちになる方法として、住居費と生命保険費用の見直しを中心とした節約と、投資の重要性が説かれます。 とはいえ、インデックス投資でガンガン積み立てろ、というスタンスではな...
経済・金融・経営・会計・統計

「勝っている投資家はみんな知っているチャート分析」福島理 評価:1点|本当に何も知らない初心者向けのチャート解説本【資産運用】

大手ネット証券会社マネックス証券のアナリストである福島理氏の著書。 株式投資の世界においては、各企業の業績や周辺環境から株価の割安/割高を判断するファンダメンタル分析と、株価そのものの推移傾向から将来の値動きを予想するチャート分析という、大きく分けて2つの分析手法があり、本書は後者の入門本という位置づけです。 もちろん、入門本なのですから、一から説明するという趣旨は分かります。 しかし、本書の説明はあまりにも形式的であり、インターネットで簡単に手に入る情報しか紹介されてないうえ、その内容が劇的に分かりやすかったりするわけでもありません。 おまけ程度についている各章僅か数ページずつの漫画もいまいちチャートとの関連性が分かりづらく、あまり理解の助けになっていないという印象。 投資ブームに乗っかっただけの著作だと感じました。 目次 Part1 過去の高値と安値 Part2 ローソク足 Part3 トレンドライン Part4 チャートパターン Part5 移動平均線 Part6 MACD Part7 ボリンジャーバ...
生き方・自己啓発

「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」キングスレイ・ウォード 評価:2点|硬派なビジネス・エリートによる人生の指南書【生き方】

カナダ人の実業家、キングスレイ・ウォード氏が実の息子に宛てた手紙という形でビジネスマンとしての理想的な生き方を説く著作です。 大学進学を控えた息子に贈る第一通から、会社を継いで新社長となる息子に贈る第三十通まで、ビジネスで成功する秘訣から、プライベートを含めた人生全体を成功させる秘訣までを、いかにもこの時代のアングロサクソンな父親らしい、情実のある書きぶりで語っていきます。 内容としては様々な自己啓発本やビジネス書に書かれている内容と重複するものばかりですが、平易な書きぶりと、息子の成長に合わせて段階を踏んで物事を伝えていくという部分に独自性があります。 ただし、本作が善として推す価値観はまさに(カナダ人ですが)アメリカン・エリートのそれであり、いわゆるバリキャリ的で家父長的な行動原則に満ち溢れています。 そういう書籍が好きな人、あるいは、エリートビジネスマンや管理職として、好んでタフな交渉に臨んだり、進んで部下を率いている人にとっては得るものがあるでしょう。 ただ、文芸や映画が好きな人にとって面白い本かと言われれば、ちょっと胃もたれがするかな、といった...
☆☆☆☆(教養書)

「健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて」熊代亨 評価:4|無菌ゆえに息苦しい社会に適応することの困難【社会学】

精神科医ブロガーである熊代亨氏による現代社会評論。 非常に個性的で長いタイトルは、令和時代を覆う雰囲気への違和感を言語化するという本書の試みを見事に表現していると言えるだろう。 令和時代の、清潔で健康で道徳的な秩序にすっかり慣れた私たちから見て、高度経済成長期の日本社会はおよそ我慢できるものではなかったはずである。 本書の「はじめに」に記載されている文章であるが、高度経済成長期まで遡らずとも、最近の社会が妙に潔癖であると感じている人は少なくないと思う。 街は異様なほど綺麗になり、痰を吐いたり立小便をしたりする人はいない。 浮浪者のような恰好をした人物を見かけることもいよいよ稀になってきた。 人々はどこまでも整然と歩き、公的な空間では異様なくらい静かであることに努めていて、喧嘩や体罰、ハラスメントのようなカジュアルな暴力は滅びつつある。 どんな店に入っても店員の態度は概ね良好で、横柄な接客という概念も姿を消し始めた。 かつてに比べ、あらゆるコミュニケーションが丁寧になっている。 良い世の中になりつつある傾向じゃないか。 そう思...
☆☆☆(教養書)

「教養としての大学受験国語」石原千秋 評価:3点|論説文から読み解く近現代社会【国文学教養書】

2000年に筑摩書房から発売された新書で、著者は早稲田大学教授の石原千秋氏。 「この本は、大学受験国語の参考書の形をとった教養書である」 本書冒頭の言葉であり、本書の性質をよく表現した文章となっている。 テーマごとに2つずつの論説文の過去問が紹介され、著者が解説しながら解いていくという形式で本書は進行していくという構成。 精選された論説文と、その解説の中で表現される「近現代社会というものを国文学者たちはどのように考えているのか」という思考枠組みが本書の核心となっている点が面白いところ。 つまり、近現代社会を分析する視点がなければ大学受験国語を解くことはできないため、大学受験国語の参考書は必然的に近現代社会分析の解説になる、というわけである。 本記事では本書の教養書としての側面を重視し、紹介されている論説文の中から印象に残ったものを取り上げて感想を述べていく。 目次 序章 たった一つの方法 第一章 世界を覆うシステムー近代 第二章 あれかこれかー二元論 第三章 視線の戯れー自己 第四章 鑑だけが知っているー身体 ...
☆☆☆☆(教養書)

【経済学入門の王道】教養書「マンキュー経済学 ミクロ編」グレゴリー・マンキュー 評価:4点【経済学】

目次 第Ⅰ部 イントロダクション 第Ⅱ部 市場はどのように機能するか 第Ⅲ部 市場と厚生 第Ⅳ部 公共部門の経済学 第Ⅴ部 企業行動と産業組織 第Ⅵ部 労働市場の経済学 第Ⅶ部 より進んだ話題 感想 世界で最も有名な経済学の教科書であり、特にアメリカでは長年に渡り有名大学で採用されてきた入門書です。 近年ではその古典派的な傾向が批判され、より(アメリカ的な意味での)リベラルな教科書への置き換えが進む傾向にあるという記事もありますが、本書こそ伝統的な経済学の考え方を学ぶにはうってつけだという証左でもあるのだと思います。 (よりリベラルな教科書となるとクルーグマンあたりでしょうか) オーソドックスな経済学の思考枠組みが丁寧に語られるという内容のため、経済学についての新しい知見という意味での驚きは少なかったのですが、大変優れた「教科書」であることはひしひしと実感できたため、本記事では本書の「教科書」としての美点を3つ語っていきます。 ①一から十まで論理的かつ丁寧に説明する 社会的な事象に...
生き方・自己啓発

「イケメンはモテない」仮メンタリストえる 評価:2点|メンタリストによる恋愛指南【恋愛心理学】

恋愛テクニックについての動画を専門とし、登録者数35万人超を誇る人気YouTuber「仮メンタリストえる」さん。 彼がYouTubeで紹介した恋愛テクニックを凝縮した著作が本作となります。 数多くの「モテテクニック」が紹介されており、ハウツー本として一定の価値はあるのでしょう。 ただ、「恋愛慣れしていない男性」向けであると銘打ちながら不親切な部分が多く、本当に「恋愛慣れしていない男性」が本書を使いこなせるかと言われればかなり疑問です。 加えて、アカデミックな心理学解説本や面白い雑学本という枠組みとしてもイマイチ。 最近流行している心理学ベースの「恋愛テクニック」を知識として仕入れることができるという程度の価値しか持っていない本という評価です。 目次 Part1 出会いPart2 LINE編〈初デートまで〉Part3 待ち合わせPart4 ランチPart5 LINE編Part6 ディナーのお店決めPart7 水族館デートからディナーまでPart8 帰路Part9 告白前Part10 告白 感想 主人公であるリョウタが懇親会会...
生き方・自己啓発

【転職支援】教養書「転職の思考法」北野唯我 評価:2点【ビジネス書】

博報堂やボストンコンサルティンググループで働き、いまは就職支援サービス会社ワンキャリアの取締役を勤める北野唯我さんの著書。 「転職の思考法」というタイトルの通り、転職するにあたって考えるべきことや、業界・会社選びのコツが述べられているほか、そもそもどのような環境で働くべきなのかという普遍的な「仕事論」にまで言及されている著作です。 一人のサラリーマンが転職について考え始めてから実際に転職するまでの物語に沿って著者の主張が述べられていくという形式を取っており、物語自体もそれなりに面白いので、読み易さという点では万民向けになっております。 ただ、全体としては凡庸なビジネス書であったというのが本ブログにおける評価。 良いことを言っっておりますし、間違ったことを言っているわけではないのですが、巷に溢れる転職論や仕事論からさらにもう一歩踏み込んだ言説に乏しく、やや内容的に薄い本だったと感じました。 目次 プロローグ このままでいいわけがない。だけど...... 第1章 仕事の「寿命」が切れる前に、伸びる市場に身を晒せ 第2章 「転職は悪」...
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