【現代純文学】おすすめ現代純文学小説ランキングベスト5【オールタイムベスト】
☆☆(教養書)
「リサイクルと世界経済」小島道一 評価:2点|国際貿易の中におけるリサイクルの立ち位置【経済学】
リサイクルという言葉が人口に膾炙するようになってからずいぶん経ちましたが、資源の制約や環境問題がクローズアップされる中で、その概念は今日においてますます輝きを増しているように感じられます。そして、より一体化する世界経済の中で、リサイクルという行為もずいぶん前から国際貿易の中で行われるようになっております。日本の中古自動車や中古家電が発展途上国で利用されているのは有名な話ですし、紙やプラスチックの再生工場も多くは発展途上国に立地しています。先進国から廃棄物を輸入し、原料として使用可能な状態にしてから再び先進国に輸出するというサイクルはもはや当たり前のこととなっているのです。そのような、国際貿易の中でのリサイクル過程がどのように変化し、どのような問題を孕んでいて、どのように解決しているのかということが本書には記されています。著者はジェトロ・アジア経済研究所の小島道一氏。肩書は研究者ですが、本書の筆致には実務担当者として国際貿易の規制や促進に携わってきた側面が色濃く現れております。目次第1章 国境を越えてリユースされる中古品第2章 国境を越えてリサイクルされる再生資源第3章 中古品や再生資源...
新書 「江戸東京の明治維新」 横山百合子 星2つ
1. 江戸東京の明治維新帯の煽り文は「150年前の胸に刺さる現実」。明治維新といえば通常、政府高官として新しい日本をつくりあげていく明治の元勲たちに焦点が当たるか、もしくは、幕府側の将軍とその側近であったり、最後まで佐幕派として戦った武士たちに焦点が当たるかの2択になってしまいがちなところ、本書は旧江戸・新東京に生きた庶民たちの生活について説明しようとしているという点で差異化が図られております。著者は国立歴史民俗博物館教授の横山百合子さん。東大の学部を卒業後、社会科教員として勤めた後に博士課程を経て大学教員としてのキャリアを歩み始めたという人物です。本筋からは逸れますが、リカレント教育の重要性が盛んに言及される中で、今後、日本でもこのような経歴を持つ人が増えるといいな感じます。そして肝心の中身ですが、題材は新鮮だけれどもやや散漫というイメージ。庶民の生活変化の全体像をとらえるというよりは事例集という形式になっており、下級武士の誰それはこう生きた、遊女の誰それはこう生きた、賤民の誰それはこう生きたというような記述が続きます。その生き様の書かれ方は具体的で面白いのですが、それこそ下級武士・...
【経済学】 「ゲーム理論はアート」 松島斉 星2つ
1. ゲーム理論はアート松島斉東京大学教授によるゲーム理論の紹介本です。体系的な教科書や専門書ではなく、かといってエッセイ的な本や時事問題解説本でもないため、「紹介本」としておくのが適切でしょう。近年、社会科学の分野で一大巨頭となりつつあるゲーム理論の考え方が現実とどう関連しているのか、また、ゲーム理論の考え方を現実の状況改善にどう適用しうるのかが事例検討を中心に説明されております。そんな本書ですが、全体的にとても中途半端な本に思われました。ゲーム理論に馴染みのない人にもわかりやすく書いていますといった論調にも関わらず、碌な説明もなしに専門用語やアカデミックな言い回しが多用され、事例も社会科学に興味のある人しか関心を抱かないだろうというものばかり。かといって、体系性や網羅性、専門的な深みがあるかといえばそうではないという本に仕上がっており、ところどころ面白い部分はあったものの、惹きこまれるというよりは購入した義務感で読み進めてしまった本になりました。2. 目次第1部 アートとしてのゲーム理論第1章 ゲーム理論はアートである第2章 キュレーションのすすめ第3章 ワンコインで貧困を救う第...
【政治経済】「平成の通信簿」 吉野太喜 星2つ
1. 平成の通信簿元号が平成から令和に変わり、様々な「平成総括本」は出版されている今日。本書もそのバリエーションの一つですが、「識者が平成を語る」という形式ではなく、平成という時代において日本がどう変化したのかを様々なデータをもとに数値で見ようという変わり種。最近のベストセラーの一つである「FACTFULNESS」を意識していると著者自身が本書の中で著している通り、二重の意味で流行を追った本です。そんな本書に対する感想としては、面白いが薄いといったところでしょうか。なるほど、平成元年から現在までというと、ちょうどバブル崩壊直前から令和元年までの期間ですので、様々な指標の数値的変遷には鮮烈なものが多くあります。そしていまの日本には、高度経済成長を経験した世代から、バブルはもちろん2000年代前半にあった一瞬の好景気すら知らない世代が住んでいるわけで、高度経済成長を経験したことで「強い日本」の幻想をいまでも持っている人々にも、逆にバブル崩壊以降に生まれて「化け物じみ(ているように見え)た日本」を知らない世代にも、非常にいい刺激になる時期の切り取りかたになっております。ただ、普段から社会問題...
新書 「世論」 W・リップマン 星2つ
1. 世論20世紀を代表するジャーナリストの一人、ウォルター・リップマンによって著された評論エッセイで、タイトル通り「世論」について取り扱っております。華々しい経歴を持つリップマンですが、「ステレオタイプ」という言葉を世に根付かせたと書けばその偉大さが伝わるのではないでしょうか。新聞・ラジオ・テレビという近代型メディアの登場と民主主義の組み合わせが人々の世界に対する「見方」をどのように規定していくのかという箇所に論の重点がおかれ、人々が抱いてしまうバイアスの傾向について現代にも通じる鋭い指摘を行っております。「評論エッセイ」と表現しました通り、かなり散漫で体系だっていないのが決定的難点ですが、それでも1922年という発表年を考えるとその叡智は驚くばかり。「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」という警句の示す通り、社会に対する考え方が纏まってきた時期に読むと「自分の考えなど車輪の再発明にすぎないなぁ」と思ってしまうこと請け合いです。2. 目次<上巻>第1部 序第2部 外界への接近 第3部 ステレオタイプ 第4部 さまざまの関心 <下巻>第5部 共通意志の形成第6部 民主主義のイメージ...
教養書 「ウォール街のランダム・ウォーカー」 バートン・マルキール 星2つ
1. ウォール街のランダム・ウォーカー1973年の書版発行以来、投資界隈で読み続けられている本であり、2016年発売の日本語最新版が第11版の訳書になります。ネット証券が台頭し、NISAやiDECOといった個人向けの投資制度も充実してきた昨今、投資についての基礎を身に着けておいて損はないでしょう。年金がGPIFによって運用されるようになったことで、年金の現状について一家言持つにはGPIFのポートフォリオを語れる必要が出てきたため、政治学に興味がある立場としても面白いのではないかと手に取りました。評価としては微妙だった、というところですね。全般的に誤ったことが書いてあるとは思わないのですが、世界史や経済・金融の知識が全くない人向け(大学で学んでいない人)の説明が全般的に目立つ一方で、前半のほとんどを世界史上に起こったバブル事例の説明に消費してしまうなど、レベルの統一感がない構成になっており、どういった層を満足させられるのだろうという疑問を感じてしまいました。ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉 ―株式投資の不滅の真理posted with ヨメレババートン・マルキール 日本経...
教養書 「有権者の選択」 平野浩 星2つ
1. 有権者の選択以前に紹介した「二大政党制の崩壊と政権担当能力評価」と同じく、アンケート調査から日本の有権者の投票行動を研究する本です。「二大政党制の崩壊と政権担当能力評価」は「政権交代期における政治意識の全国的時系列的調査研究」というシリーズでまとめられているのに対し、本書は「変動期における投票行動の全国的・時系列的調査研究」シリーズの一つとして刊行されています。とはいえ、その二つの研究が看板を変えただけの続きものになっているのが実質らしく、むしろ継続性のある統計データとして双方の中で扱われているくらいです。しかし、本書は星を一つ下げて星2つとしています。理由は、「データや統計結果に驚きや新鮮さがないこと」と「論全体に有用で核心的な主張がないこと」です。データセットに近いという点では「二大政党制の崩壊と政権担当能力評価」と同じなのですが、それでも、投票行動についてうまく「説明している」とは言い難い、ピントを外した統計処理の当て方や文章での論証がされているように感じました。有権者の選択―日本における政党政治と代表制民主主義の行方posted with ヨメレバ平野浩 木鐸社 2015...
新書 「スポーツ国家アメリカ」 鈴木透 星2つ
1. スポーツ国家アメリカ著者は慶応大学教授でアメリカ文化研究が専門の鈴木透教授。「民主主義と巨大ビジネスのはざまで」というサブタイトル通り、政治や経済との関わりが意識された内容でした。帯には伝説の野球選手であるベーブ・ルースや、近年興隆するアメリカ女子サッカーの一場面を捉えた写真と共にトランプ大統領がプロレスのイベントに参加する写真も掲載されており、本書の雰囲気が伝わってきます。ただ、内容の質としては、知識面においてWikipedia記事の寄せ集め、論理面においてやや強引なこじつけが多くみられました。「アメリカ・スポーツ・政治・ビジネス」に関心があり、最初からある程度の知識がある人は読む必要がなく、そうでない人にわざわざ推奨するほどの本でもないというのが正直な感想です。スポーツ国家アメリカ - 民主主義と巨大ビジネスのはざまで (中公新書)posted with ヨメレバ鈴木 透 中央公論新社 2018-03-20AmazonKindle楽天ブックス
新書 「稲盛和夫の実学 経営と会計」 稲盛和夫 星2つ
1. 稲盛和夫の実学 経営と会計アメーバ経営で有名な京セラの創業者であり、日本航空の再生でも力を振るった名経営者、稲盛和夫さんが会計について記した本になります。いかにも昔ながらの実務者が語るという内容で、精緻さや体系の美しさはありません。普遍的な理論を求めている人には不向きでしょう。ただ、行動経済学が注目を浴びているように、政治学や経済学ではどのような人物を「普通の人間」と想定するか、現実における「摩擦」をどう扱うかはホットなトピックです。この「摩擦」という点について示唆のある内容もちらほらあったため、そこを評価して星2つとしました。稲盛和夫の実学―経営と会計posted with ヨメレバ稲盛 和夫 日本経済新聞社 2000-11-07AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo
教養書 「都市農地はこう変わる」 倉橋隆行 星2つ
1. 都市農地はこう変わるもともと住宅・土地問題に関心があるのですが、その界隈で「生産緑地」問題が浮上し始めてきたことから手に取った本です。「生産緑地」で適当に検索して購入したのであまり期待はしていなかったのですが、まぁ、そのたいしたことない期待の程度だったという感想。著者が不動産コンサルということもあり、学術的で客観的な分析と言いうよりは、土地保有者向けの土地活用術の本という雰囲気が濃いものでした。都市農地はこう変わるposted with ヨメレバ倉橋 隆行,林 愛州 プラチナ出版 2017-09-07AmazonKindle楽天ブックス
新書 「欧州複合危機」 遠藤乾 星2つ
1. 欧州複合危機 混迷深まるEUの情勢を歴史的に振り返りつつ、今後の展望を解説するという著作です。 著者の遠藤教授はヨーロッパ経験も長いようで、現在のヨーロッパ情勢を概説する書としてはよくまとまっていたと思うのですが、制度的な面に社会科学的手法を用いて深く切り込むことはなく、ある程度新聞を読み、通り一遍の解説を知っている人にとっては耳にタコな話が多かった印象です。 欧州複合危機 - 苦悶するEU、揺れる世界 (中公新書) posted with ヨメレバ 遠藤 乾 中央公論新社 2016-10-19 Amazon Kindle 楽天ブックス 楽天kobo
新書 「日本の統治機構」 飯尾潤 星2つ
1. 日本の統治機構政策研究大学院大学教授、飯尾潤氏の著作で、本作でサントリー学芸賞を受賞されています。戦後から21世紀までの日本政治の動きを統治機構の面から総覧するという意図をもって書かれているようでしたが、普段から新聞を読んでいる人には不要で、そうでない人にとっては意味不明な本になってしまっているという印象でした。日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)posted with ヨメレバ飯尾 潤 中央公論新社 2007-07-01AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo
新書 「北方領土問題」 岩下明裕 星2つ
1. 北方領土問題 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授で、ロシア外交や中露関係に詳しい岩下明裕氏の著書です。 述べられている「事実」は興味深いものも多いのですが、本書に理論として優れている部分があるかと言われればその点はイマイチだったと思います。 北方領土問題―4でも0でも、2でもなく (中公新書) posted with ヨメレバ 岩下 明裕 中央公論新社 2005-12-01 Amazon Kindle 楽天ブックス 楽天kobo