小説作家名「た」行

武田綾乃

小説 「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第2楽章 前編」 武田綾乃 星2つ

1. 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第2楽章 公立校の吹奏楽部が全国を目指すという内容の人気シリーズ小説で、どちらかというとアニメ版の原作として有名でしょうか。アニメ版は放火事件の起こった京都アニメーションが製作しており、レベルの高い作画や音楽表現、独特のカット割りなどで人気を博しております。私もアニメ版のファンでして、当ブログでも記事を書いております。 ついでに原作小説にも手を出しており、辛口となってしまっておりますがこれも紹介記事を書いています。 さて、本作はシリーズの中で主人公の世代が進級し、2年生として活躍する2年生編となっておりまして、アニメ版では「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」にあたる部分です。 感想としては、散漫な物語と表現力不足によって平坦かつ無個性に見えてしまうキャラクターという2つの要素が災いし、小説というより説明書を読んでいるような気分になる作品でした。 アニメでは効果的な編集とアニメならではの感情表現などで補われていたのでしょうが(というかそこを補えばい...
武田綾乃

小説 「その日、朱音は空を飛んだ」 武田綾乃 星1つ

1. その日、朱音は空を飛んだ 大学在学中に「今日、きみと息をする」で日本ラブストーリー大賞の「隠し玉」を射止め、大学生で小説家デビューを果たした武田綾乃さんの作品。本作で吉川英治文学新人賞の候補になるなど、新進気鋭の若手作家として注目を集めております。 代表作はなんといっても「響け!ユーフォニアム」シリーズでありまして、本ブログでも何度か取り上げてきました。 そんな「響け!ユーフォニアム」シリーズの合間に出版された本作ですが、全体としては非現実感やあまりの極端さが強く前面に出てしまっていてイマイチだったという感想。確かに、極端に個性的なキャラクターを出せば突飛な行動を起こしてくれるの物語に起伏はつきますが、そこに読者として感情移入しスリルを感じられるかといえば難しいところ。変わった性格のいかにもフィクション的登場人物が変わったことをするだけの話であり、小説としての技巧や物語から受ける驚きは薄いものでした。 2. あらすじ 舞台はとある進学校、ある日、 2年生の川崎朱音(かわさき あかね)が屋上から飛び降りて自殺してしまう。 何...
☆☆(小説)

小説 「夏草の記憶」 トマス・H・クック 星2つ

1. 夏草の記憶 日本では「記憶」三部作で有名なアメリカのミステリー作家、トマス・H・クック。「緋色の記憶(原題:The Chatham School Affair)」でエドガー賞を獲得し、アメリカでも一定の評価を得ています。本作「夏草の記憶(原題:Breakheart Hill)」も日本では記憶三部作として売り出された三作品の一角で(原題を見ての通り作品間には何の関連もないのですが、プロモーションのため強引な訳出がされています)、いわゆるジュブナイル的青春ミステリのような要素があるため、令和に入ったいま読んでも流行を狙ったのかと思うくらい日本に馴染む作品だと個人的には感じています。もちろんミステリ要素も評価されておりまして、2000年の「このミステリーがすごい! 海外編」では3位に入っています。 さて、そんな「夏草の記憶」ですが、個人的には「普通」だなというのが感想です。決定的な悪い点はなく、良い点は微妙にありまして、☆3つと☆2つで迷ったのですが、ある種ベタすぎる、という部分を欠点と捉えて良い点と相殺し、☆2つに落ち着きました。 2. あらすじ 舞...
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壷井栄

小説 「二十四の瞳」 壷井栄 星2つ

1. 二十四の瞳 戦前から戦後すぐにかけて活躍した作家、壷井栄さんの代表作。1954年に映画化され、そこから人気に火が付いた作品です。舞台となった小豆島にはいまでも「二十四の瞳 映画村」が存在し、当時の流行ぶりが伺えます。 感想としては「やや薄い」と思ってしまったのが正直なところ。壷井さんが持つ切実な反戦への想いや、心温かな子供たちとの交流とその後の悲劇など、描きたいことは分かるのですが、小説の物語として読むにはあまりにエピソードが淡白な割に主張だけが延々と続く部分が長すぎる印象でした。 2. あらすじ 舞台は戦前の小豆島。治安維持法が制定され、世の中が窮屈になっていく中、主人公である大石先生は分校の小学校に新任教師として赴任することになった。五年生以上は本校に通うため、分校に通っているのは四年生以下の小さな子供ばかり。その中でも、大石先生が担当することになったのは入学したばかりの一年生十二人だった。 子供たちとは次第に打ち解け合っていくものの、洋服を着て自転車で分校に通う大石先生の姿に田舎の村人たちは反感を覚え、嫌味を言う者も多い。それでもへこ...
谷村志穂

小説 「海猫」 谷村志穂 星1つ

1. 海猫 エッセイを含め女性の生き方にまつわる著作が多い谷村志穂さんの作品。上下巻合わせて600ページ超の本作で島清恋愛文学賞を受賞しており、映画化までされていることから代表作といっても良いでしょう。親子三代に渡る母娘の恋愛物語という昨今の文芸界ではあまり見られなくなった系統の作風です。 個人的評価としては唾棄すべき作品で、ほとんど良い点が見当たりません。谷村さんがデビューした1991年といえばちょうど出版業界の最盛期にあたります。出せば当たる時代の産物なのかと想像してしまいます。 2. あらすじ 野田薫は故郷の函館から漁村である南茅部の赤木家へ嫁いできた。ロシア人と日本人のハーフである薫は青い目と白い肌を持っており、それが原因で疎まれることも多かったのだが、偶然出会った 赤木邦一からアプローチを受けついに女の幸せを掴んだのだった。 長女の美輝も生まれ、夫婦生活は順調に思われた。しかし、邦一が入院先の看護婦である啓子との不倫に走ったことから夫婦のあいだには亀裂が入る。人形のような薫よりも啓子の母性に惹かれる邦一。そんな中、邦一の弟である広次の...
☆☆☆(小説)

小説 「時をかける少女」 筒井康隆 星3つ

1. 時をかける少女 1967年刊行ながら夥しい数のメディアミックスによって今日においても有名タイトルとなっている作品。その中でも、1983年に原田知世さん主演で公開された実写版と、2006年に細田守監督の指揮によって製作されたアニメ版という二つの映画が知名度の牽引役となっております。 アニメ映画は本ブログでも以前に感想を書きました。 原作たる小説は僅か100ページ余りの作品であり、文体や展開も非常にあっさりとしたものでしたが、ここが斬新だったのだろうと思わせる点がいくつかあり、派生作品がいくつもある現代だからこその読み応えがありました。 2. あらすじ ある日、中学3年生の芳山和子(よしやま かずこ)は、同級生の深町一夫(ふかまち かずお)・浅倉吾朗(あさくら ごろう)と一緒に理科室の掃除をしていた。掃除を終え、隣の理科実験室に用具をしまおうとすると、理科実験室から奇妙な物音が聞こえてくることに和子は気づく。 恐る恐る理科実験室の扉を開ける和子。しかし、和子が明けた瞬間に中にいた人物は別の扉から逃亡したようで、残っていたのは液...
☆☆☆(小説)

小説 「細雪(下)」 谷崎潤一郎 星3つ

1. 細雪(下) 上巻、中巻と記事を重ねてきた「細雪」。これが最終巻である下巻の感想記事になります。上巻、中巻の紹介はこちら。 上巻248ページ、中巻305ページと、これだけでもなかなかの長編ですが、下巻は346ページで全巻合計899ページになり、まさに大長編に相応しい貫禄。ヨーロッパで第一次世界大戦が始まり、激動の時代が始まりを告げる中、旧習に倣ってお見合いを続ける雪子と、職業婦人や身分違いの恋など、新しい生き方を模索する妙子。二人の結末と、それを見つめる幸子の心情と時代の相克が鮮やかに描かれます。 細雪 (下) (新潮文庫)posted with ヨメレバ谷崎 潤一郎 新潮社 1955-11-01 AmazonKindle楽天ブックス 2. あらすじ 板倉の死により、激しい恋に終止符を打たれた妙子。だからといって奥畑への慕情が復活するはずもなく、彼には憐憫の気持ちしかないといって、結婚せず職業婦人になる気である。そんな妙子をよそに、雪子のもとへ2年...
☆☆☆(小説)

小説 「細雪(中)」 谷崎潤一郎 星3つ

1.細雪(中) 今日でも読書子に愛され続ける谷崎潤一郎の大長編、「細雪」。斜陽の旧家、蒔岡家の三女である雪子の縁談を中心に話が進んだ上巻から変わって、中巻では四女である妙子を襲う波乱が中心に描かれます。上巻の感想はこちら。 上巻はいかにも昔といった雰囲気のお見合いが中心なので、「旧い小説を読む」という意識でいればそこまで違和感を覚えないのですが、ついに妙子という現代的な人物にスポットが当たることで、谷崎がこの小説に仕込んだ興味深いギミックが見えてきます。 細雪 (中) (新潮文庫) posted with ヨメレバ 谷崎 潤一郎 新潮社 1955-11-01 Amazon Kindle 楽天ブックス 2. あらすじ 蒔岡家の三女である雪子のお見合いが相次いで破談となる中、雪子が縁付くまでは結婚できない立場である四女の妙子は人形作りに打ち込んでいた。百貨店にも出品されるほどの腕前である妙子の人形作りは趣味の範囲を超えた域に達しており、専用の仕事場を持って弟子をとるほど本人も力を入れている。 そんな妙子が洋裁にも興味を持ち...
☆☆☆(小説)

小説 「細雪(上)」 谷崎潤一郎 星3つ

1. 細雪(上) 戦前から戦後にかけて活躍した小説家、谷崎潤一郎。いまなお評価が高く、ファンの多い彼の代表作ともいえる作品が「細雪」です。新潮文庫版は上中下巻の構成で出版されておりまして、執筆に4年を費やしたという大作。映画化3回、テレビドラマ化6回という数字が文学の古典ながら世俗にも通じる魅力をもった作品であることを表していますね。 やや冗長な表現や本筋から外れたエピソードなどが多いながら、やはり読みごたえのある作品だったというのが感想です。もちろん、そういった冗長さや寄り道部分を評価する人もいるでしょうから、私の星3つという評価が低すぎると感じる人はいても高すぎると思う人は少ないのではないのでしょうか。凋落しつつある旧家の娘が結婚相手を探すというストーリーは婚活全盛の今日においてむしろ示唆的ですらありますし、人物の描かれ方の今日との対比という点でも深く読み込んでいける作品だと感じました。 細雪 (上) (新潮文庫) posted with ヨメレバ 谷崎 潤一郎 新潮社 1955-11-01 Amazon Kindle 楽天ブックス
☆☆☆(小説)

小説 「アルジャーノンに花束を」 ダニエル・キイス 星3つ

1. アルジャーノンに花束を アメリカのSF作家、ダニエル・キイスの作品で、1959年に中編として、そして1966年には長編に書き直されて発表されています。ネビュラ賞とヒューゴー賞という権威ある賞を受賞しており、日本でも2015年に新版が出るなど、定評ある古典として読まれ続けています。 感想としては、「手堅い名作」という印象。斬新な設定で唯一無二の地位を確立しており、特殊な題材ながら人を選ばない筆致には素晴らしいものがあります。一方で、これほど突飛な設定ながらあと一押しとなるようなどんでん返しなどがないところはやや肩透かしでありました。 アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫) posted with ヨメレバ ダニエル キイス 早川書房 1999-10-01 Amazon Kindle 楽天ブックス 楽天kobo
☆☆☆(小説)

小説 「絵草紙 源氏物語」 田辺聖子 星3つ

1. 絵草紙 源氏物語 芥川賞作家である田辺聖子さんが訳し、絵草子画家として著名な岡田嘉夫さんの美麗な挿絵が多数掲載された作品。ダイジェスト版の源氏物語が読みやすい訳で収録されており、手に取りやすい日本文学の古典となっております。 1984年の出版ですが、むしろ現代語訳としても全く古びておらず、近年の過度に崩した訳などよりはよほど読書に値するもので、源氏物語の特殊な世界を気軽に堪能するにはうってつけでしょう。 絵草紙 源氏物語 (角川文庫 (5594)) posted with ヨメレバ 田辺 聖子 角川書店 1984-01 Amazon Kindle 楽天ブックス 楽天kobo
☆☆(小説)

小説 「恋人たち」 立原正秋 星2つ

1. 恋人たち 1960~70年代にかけて一世を風靡した立原正秋さんの作品です。1966年に直木賞を獲っておりますが、それまでに芥川賞の候補になるなど、純文学も大衆文学もこなす万能の作家でした。本作は根津甚八さんと大竹しのぶさんの主演でテレビドラマにもなっています。感想としては、現代の感覚からすれば「ありえない」作品です。それをもってこき下ろす人がいてもおかしくありません。一般的に考えれば、この21世紀に純粋な娯楽作品として読んで楽しい作品ではないでしょう。ただ、この作品・作家が「人気だった」ということを踏まえて読めば良い洞察を得られるのではないかと思います。 恋人たち (角川文庫 緑 298-6) posted with ヨメレバ 立原 正秋 KADOKAWA 1971-09 Amazon Kindle
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