第2位 「蹴りたい背中」綿矢りさ
【青春小説の「スクールカースト」はここから始まった】
・あらすじ
主人公は高校2年生の長谷川初実、通称「ハツ」。
クラスで「余り物」になってしまっているハツは、ひょんなことから、同じく「余り物」の蜷川智と親交を得る。
蜷川智、通称「にな川」はモデル兼アイドルである「オリチャン」に夢中であり、クラスで孤立していることにも頓着していない様子。
一方、ハツは「スクールカースト」を嫌悪しているがゆえに、自覚的に「余り物」となっている。
理由は別々、けれども、学校では孤独な二人。
そんな「にな川」との交流を通じて、ハツの内面にも変化が表れ始め......。
・短評
「スクールカースト」的な学校観とその中で葛藤する高校生の心情、という枠組みを(おそらく)初めて用いた小説として、文芸界に彗星のように現れた作品です。
当初は「スクールカースト」を軽蔑しながら孤高を貫いていたハツでしたが、次第に「軽蔑しながら孤高を貫く」という態度自体の惨めさや矮小さに気づいていき、現実に折り合いをつけながらも一生懸命に生きていくことの大切さを知っていきます。
作者の綿矢りささんは本作で史上最年少19歳での芥川賞受賞となり、その記録はいまも破られておりません。
個人的にも「スクールカースト」小説の原点にして最高峰の作品だと捉えており、その瑞々しい筆致と心理描写によって夢中にさせられること間違いなしだと思います。
本作は純文学小説ではありますが、日本の高校を舞台とした作品であり、文体も読みやすい中編小説。
純文学入門に最適な親しみやすい作品という点でもお薦めです。
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