1. 時をかける少女
民放とNHKで延べ12回放映されているアニメ映画で、すっかり夏の定番となった作品と言えるでしょう。
筒井康隆さんの有名原作に、「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム」で頭角を現していた細田守さんを監督として迎え、「新世紀エヴァンゲリオン」のキャラクターデザインを務めた貞本義行さんと、「もののけ姫」の美術監督だった山本二三さんが脇を固めるという豪華布陣。
ミニシアターでの上映から異例のロングランを成し遂げた出世映画でもあります。
非常に凝った脚本が素晴らしく、演出も「静」と「動」のバランスがとれていて、これからも定番中の定番であり続けて欲しいと思わせられる映画になっております。
2. あらすじ
紺野真琴(こんの まこと)は高校2年生。
男友達の間宮千昭(まみや ちあき)や津田巧介(つだ こうすけ)とキャッチボールやカラオケで放課後の時間を過ごすような平凡な日々を送っている。
そんなある日、真琴はひょんなことから自身がタイムリープの能力を得ていることに気づいてしまう。
タイムリープの能力を得た真琴は、テストを受けてからテストを受ける前の時間に戻って好成績を収めたり、カラオケで何時間も歌ったり、調理実習での失敗を身代わりに押し付けたりとやりたい放題で痛快な日常を楽しむようになっていく。
しかし、そんな真琴の生活にも転機が訪れる。
いつものように三人で遊んだ帰り道、真琴は千昭から愛の告白を受けたのだ。
思いがけない事態に動揺した真琴は、告白される運命を変えようと何度もタイムリープを行うものの、千昭は何度でも真琴に告白する。
最後はなんとか告白を回避した真琴だったが、相談した叔母には「千昭くんが可哀想」と言われ、微妙な感情を抱くことになる。
告白回避以来、千昭を避け続ける真琴。
その一方、巧介へ告白して一度は断られた友人、藤谷果穂の恋は積極的に応援するようになっていく。
何度もタイムリープを使い、巧介と果歩をなんとか付き合わせようとする真琴。
しかし、ようやく成功したかのように思われた矢先、タイムリープで運命を変えた結果がもたらす悲劇が二人を襲う.......。
繰り返す時間を一生懸命に駆け抜けた少女が経験する、忘れられない夏の感情。
恋を知るために過ごした時間が真琴と千昭にもたらすものとは......。
3. 感想
素直に観賞してもワクワクしたり切ない気持ちになるのに、「なぜこれほど感動できるのか」と考え出すと、その巧みな構成と普遍性に驚かされるという、娯楽性と真理性を両立した名作です。
「過去に戻れる能力を得る」という設定はフィクションの物語としての王道ですが、この作品では特に、それが「現実の温かく切ない感情」を際立たせる点が出色です。
最初はコメディ重視で始まるこの作品で、読者が最初にはっとするシーンは千昭の告白でしょう。
三人の高校生が織りなす楽しげな日常を安心して見ている序盤はそこで終わり、物語が徐々に緊迫していきます。
このシーンでは、何度もタイムリープを繰り返す中でも、真琴が「千昭と一緒に河原の道を帰る」という選択肢を捨て去れないまま「千昭に告白される」という運命だけを変えようとするのが脚本の妙技になっております。
真琴はこのとき、「恋愛感情抜きの気楽に付き合える仲間」としての千昭と巧介を失いたくない、という気持ちだけで動いており、勇気を振り絞って告白した千昭の感情を真剣に受け止めるだけの器量を備えてはいません。
この演出こそ、本作がタイムリープという設定を上手く使っている最初の場面になります。
もし、真琴にタイムリープの能力がなければこの物語はどう展開していたでしょうか。
真琴は千昭の告白をはぐらかし、二人は疎遠になるか、気まずい感情を引きずったまま微妙な関係を続け、そして真琴は後になって後悔するのです。
告白を受けるにせよ断るにせよ、全力で人の気持ちに向き合わなかったこと。
そういう、燻ぶった青春を過ごしてしまったこと。
それらをきっと後悔します。
とはいえ、そんな後悔は世間的に珍しいことではないと思います。
むしろ、「あの時全力になれなかった、真剣になれなかったことへの後悔」や、「浅はかな決断をしてしまった過去に思いを馳せる切なさ」という感情は誰の胸のうちにもあることでしょう。
そんなとき、「もし~していれば」と、かつて行わなかった決断を想像して、それさえしていれば事態は良い方向に進んだものと考えてしまうものです。
まさにそれは、現実では過去に戻れないがために起こる現象です。
それでは、過去に戻れたとして、本当に自分は正しい決断や行動をすることができるのでしょうか。
コメント
こんにちは。映画ブログを運営しているものです。
時をかける少女は何度も観ました。数あるアニメ映画の中でも特に印象に残っている作品の1つです。
タイムループというありがちな設定だからこそ、ストーリー展開がより複雑になっていきますね。「アバウト・タイム」もたしかそんな感じの映画だったと思います。
タイムループが原因で様々な問題が生じながらも、何とか人生を生きていく。
これらの映画は、非現実的な設定ながらもとてもリアルな日常や人生を描いているなぁと思いました。
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