「日出処の天子」等の作品がある山岸凉子さんの自選作品集。
表題作にもなっている「天人唐草」は彼女の代表作に数えられることが多いようです。
ただ、少女漫画界の古豪的な地位にある著者の作品ということでしたが、私には合いませんでした。
読解力が足りないからか、起伏のない凡庸なストーリーラインに投げっぱなしのオチが付いているだけのように感じてしまいます。
あらすじ
幼いころから厳格で旧い価値観の父に育てられてきた岡村響子。
その教育のせいもあって自分を過度に抑制するようになってしまい、学生時代、そして社会人になっても男性とうまくコミュニケーションをとることができない。
そしてついに、職場で憧れていた男性が自分とは真逆の気質をもつ女性と結婚してしまう。
そんな響子のもとに、父親が倒れたとの一報が飛び込んでくる。
慌てて父のもとへ向かう響子。
しかし、呼ばれた先で響子が目にしたのは、あの表面上は厳格だった父の意外な素顔だった......。(表題作「天人唐草」)
その他4つの短編を収録。
感想
全体的に「ベタ」過ぎるか「あり得なさ」過ぎる話しかないんですよね。
表題作の「天人唐草」は厳格過ぎる父に育てられた女性の話ですが、父の厳格さは欺瞞であり、実は父自身が他の女性と関係を持っていたことに気づいて精神が崩壊するというお話です。
表面上は厳格だった父が女遊びをしていたことに衝撃を受けることそのものがオチというのでは、あまりに陳腐過ぎて物語というものが発展した21世紀の目に堪えうる作品とは言い難いでしょう。
2作目の「ハーピー」は、転校生の美少女が実はハーピー(怪物の一種)なのではないかという疑念を持った高校生が深みにはまって幻覚を見るようになり、結局、精神が崩壊するというお話。
ハーピーという設定自体にあまり意味のあるものではなく(怪物や化物ならば何でもいい)、同級生をハーピーだと信じ込んでいく過程もふっ飛びすぎていて感情移入できるものではありません。
他の作品も神話や幻覚といった要素をモチーフに精神の崩壊を描いていくのですが、どれもリアリティがないのはもちろん、その嘘の部分、フィクションの部分を上手く活かしているとはいえません。
古い漫画だなぁという印象で、古典になりきれずに忘れ去られていく作品となるでしょう。
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