小説 「赤と黒」 スタンダール 星2つ

赤と黒
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1. 赤と黒

フランス人作家、スタンダールの代表作の一つで、サマセット・モームの「世界十六大小説」にも選ばれている作品です。

歴史的に評価の高い作品ではありますが、個人的にはあまり楽しめませんでした。特に現代に通じる普遍性の面ではかなり疑問です。とはいえ、時代が変わればまた再評価されるのかもしれません。

2. あらすじ

フランスの田舎町、ヴァリエール。主人公ジュリヤン・ソレルはその町にある製材屋の末っ子であったが、胸の内は野望に燃え、聖職者となって出世するために神父のもとで聖書の勉強に励んでいた。

そんなソレルは製材業などに興味はなく、親兄弟から疎まれていたが、ある日、町の有力者レーナル氏がその素養を見込んでジュリヤンを家庭教師として雇う。そこに待ち受けていた運命こそ、美しいレーナル夫人であった。二人はやがて恋仲となるが、町でその噂が立ってしまい、ジュリヤンはパリの神学校に入ることになる。

神学校でも類まれなる才能と奇抜な振る舞いを見せたジュリヤンは、神学校の神父であるピラール氏の推薦でラ・モール公爵の秘書となることに成功する。

そこで出会ったのがラ・モール家の令嬢マチルド。当初、マチルドはジュリヤンを見下していたが、ジュリヤンの策によりジュリヤンへの恋心を募らせ、ついに彼女はジュリヤンの子供を妊娠するに至る。

貴族の夫となることを確定させ、栄達の道を驀進するジュリヤン。ラ・モール公爵が娘の思いがけない人物との結婚に動揺するちょうどその頃、ジュリヤンのもとにレーナル夫人の手紙が届く。

出世街道を駆け上がるジュリヤンの明日はいかに……。

3. 感想

文章が説明的でくどいですね。小説の決定的な魅力の一つである読者の想像力を引き出すような叙述がありません。恋愛を中心に物語が進んでいくのにこれは致命傷といえるでしょう。もっと言葉の隅々に心情を張り巡らせ、隠喩的に伝える手法がなければせっかく小説を読んでいる意味がありません。

また、登場人物たちの心情も極端に揺れ動き過ぎで、なかなかその理由も汲み取りづらいです。見事な反論に魅力を感じたり、聖書の暗唱で憧れの的になるというのは当時の状況を考えるとそうなのかもしれないと考えることもできますが、特定の文脈に依拠しなくても、この人物になら恋に落ちるという魅力を発信することには失敗しています。流行小説だったというのなら分かりますが、歴史的・普遍的な名作にはなり得ないでしょう。

関連しますが、次から次へと当時起きた事件の名前だけが羅列されるのもなかなか現代の読者には想像しがたく、よほど文脈を共有している者にしか分からないような書かれ方がされています。ストーリー展開もざく切りで、作者が描きたいシーンからシーンへ、読者の気持ちや思考の流れを無視して切り替わってしまいます。小説というものが発展段階にあったのかもしれませんが、それでも酷い場面が多々見られます。

物語の流れの中で特に酷いと感じたのは、ジュリヤンがロシア貴族から恋の手管を伝授されてそれを実行に移していく場面です。ロシア貴族との出会いも唐突ですし、その手法をすぐに信じて実行するのも浅薄すぎますし、実行される手法もいまいち説得的ではありません。様々な側面が洗練されていなさすぎます。

ところどころ見るべき場面もありますが、マクロな視点ではいいところがありません。星1つに近い星2つです。

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