新書 「住宅政策のどこが問題か」 平山洋介 星4つ

住宅政策のどこが問題か
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1. 住宅政策のどこが問題か

住宅政策というあまり注目されない分野に光を当てた新書。

単に住宅政策という個別の政策分野だけでなく、それを通じて戦後日本政府の経済政策の特徴や、これから日本が進むべき道も見えてくる名著です。

2. 目次

本書の目次は以下の通り

第1章 住宅所有と社会変化
第2章 持ち家社会のグローバル化
第3章 住まいの「梯子」
第4章 住宅セーフティネット

3. 感想

第1章では、日本の住宅政策の概要が分析されます。

ここでは、日本の住宅政策の特徴が、就職→結婚→出産(夫が働き妻が専業主婦)という「標準」ライフコースを想定し、そのコースに当てはまる人の優遇であることが述べられます。

多くの人が小規模賃貸から大規模持ち家へと住宅の「梯子」を上っていく単線コースに誘導される仕組み。それが様々なデータの分析によって明らかにされます。若年層や新婚世帯向けの公団住宅の供給、住宅ローン減税のような家族の持ち家取得援助などがその具体的な政策です。

日本全体の所得の伸びとともに、新中間層となった人々がその梯子に殺到しつつ、そういった標準コースを歩めなかった人々が住宅政策から取り残されていくことが指摘されます。

そして、そうやってつくられていった「標準」概念は人々のあいだに深く浸透し、バブル崩壊後の住宅資産価値低下や、全国・全世界転勤の増加及び家族の関係の変化が現われ始めた現代においても根強く残っていることも示されます。

 

第2章では、そういった「日本型」住宅政策が、世界と比較したうえでどのように類型化されるべきなのかが述べられます。

まず、住宅政策の類型として、住宅供給が主に市場を通してなされ、公的住宅供給は残余的な部分でそれを補完するデュアリズムと、市場による供給と公的供給がお互いに影響を与えながら併存するユニタリズムが挙げられます。

デュアリズムでは自由市場がもたらす利点を最大限活用しようとするのに対し、ユニタリズムは自由市場の弊害を阻止するべく、公的住宅供給を敢えて市場に影響を及ぼす形で行うのが特徴です。人々が安定的に住まうことの正の外部性を重視した政策だと言えるでしょう。

そして、主にアングロサクソン諸国がデュアリズム、大陸欧州がユニタリズムという政策関係ではお決まりの配置がここでも示されます。

このような分類のうえで、著者は日本を注釈付きでデュアリズムの国だとします。注釈付きである理由とは、企業による家賃補助や社宅、寮の供給が一定の社会福祉的役割を果たしてきたからです。また、住宅債券の証券化など、住宅金融市場が未発達であることも理由として挙げています。

 

第3章では、近年の社会変化により、住宅取得がどのように変化してきたのかが描写されます。ここでの主張を一言で表すのならば「格差の拡大」であり、もう一言付け足すのならば、他の要因で現れてきた「格差の拡大」を、住宅政策がより後押ししているということです。

これまでの住宅政策は「標準」コースを歩む人々を対象に行われており、住宅建設に対する援助も経済対策的側面が強く、これも利益が中間層以上に集中します。

そこで住宅施策から漏れ出てきたのが、若者や女性、特に結婚していないそれらの人々です。そういった人々が住宅不足に喘ぐ一方で、少子高齢化に伴いより多くの人々が住宅を相続する可能性が高くなっており、中には複数戸の住宅を保有しながら腐らせてしまうケースも見られます。

また、異常に短い住宅サイクルの中では住宅の資産価値の減りが速く、住宅を取得した人々にとっても、住宅が完全なセーフティネットにはならない状態になっています。

「標準」ライフコースから外れる人が多い中、住宅政策の変更が必要だと著者は主張します。

 

第4章は短いながら、どのような変更が必要かについて論じられています。著者は必要な政策がユニバーサルな家賃補助だとしたうえで、その理由を、「母子家庭」「障がい者」「高齢者」などのカテゴリー的弱者救済のような方法では、昨今急増する、いわば「普通に住宅にアクセスしづらい」人々への補助が届かず、また、住宅市場も恵まれた人向けの住宅しか供給しないままだと主張します。

4. 結論

住宅は人々の生活の基盤であり、生涯年収の何割かを捧げる非常に重要なものです。にもかかわらず、日本ではあまり注目されていないのが現状です。

その中で、新書ながら非常に専門的知見に富んだ本書は、手軽な住宅政策の概括書としてもっと読まれても良いはずだと感じます。おすすめの良書です。

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