2017-03

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トルストイ

「イワンのばか」トルストイ 評価:1点|ロシアの文豪が著したシンプルな勧善懲悪寓話【海外文学】

「戦争と平和」「アンナ・カレーリナ」等の作品で有名なロシアの文豪トルストイが著した寓話。富を求めることや暴力による解決に疑義を呈し、素朴な信仰に基づく生活がよいという直截なメッセージが印象的な作品です。しかし、物語の内容があまりにも単純な勧善懲悪に過ぎ、もうすこし工夫がないと楽しみようがないと思ってしまう作品でした。あらすじとある国のとある場所には、軍人の長男セミョーン、商人の次男タラース、ばかの三男イワン、啞の妹マルタがいた。ある日、悪魔が遣わした二匹の小悪魔のために、セミョーンとタラースは軍隊と財産を失い、イワンのもとへ身を寄せることになった。一方、イワンに遣わされた小悪魔は、腹痛中でも農作業を続けるイワンの真面目さに太刀打ちできずたイワンを不幸にしてしまう目論見が破綻。それどころか、三匹の悪魔はイワンの純真さのために捕らえられ、イワンに贈り物をして消えていく。兄たちはイワンにその贈り物を使って軍隊や財産をつくるように要求し、そのおかげで王様となる。しかし、イワンだけは農民として朴訥とした生活を送るのだった。やがて、イワンたちが住む国の王女が病気だという噂が立ち......。感想純...
経済・金融・経営・会計・統計

新書 「組織の限界」 ケネス・J・アロー 星3つ

1. 組織の限界ノーベル経済学賞を受賞し、「アローの不可能性定理」等で著名な経済学者、ケネス・アロー氏の講演集です。もともと岩波から出ていたのですが、このたび筑摩書房から復刊ということで読んでみました。現代の政治・経済学が取り組んでいる論点について、従前から鋭い指摘を行っていたアロー氏の視点には驚くばかりです。組織の限界 (ちくま学芸文庫)posted with ヨメレバケネス・J. アロー 筑摩書房 2017-03-08AmazonKindle楽天ブックス
川端康成

小説 「雪国」 川端康成 星2つ

1. 雪国「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」非常に有名な一文から始まる、川端康成の長編代表作です。繊細で心震える省略美、たおやかな視点と形容。それらの評価が高いのは分かりますが、ストーリーが微妙ということもあり読後の感動はそこまで強くありませんでした。雪国 (新潮文庫 (か-1-1))posted with ヨメレバ川端 康成 新潮社 2006-05AmazonKindle楽天ブックス
桜庭一樹

小説 「少女には向かない職業」 桜庭一樹 星2つ

1. 少女には向かない職業直木賞作家、桜庭一樹さんの作品です。彼女の作品の中ではややマイナーでしょうか。東京創元社の本というのも珍しい気がします。内容としては初期の桜庭さんが得意な少女モノですが、ポップな文体と切なく陰惨な心情・情景描写が読ませます。ただ、ストーリーにはかなり疑問が残り、すっきりとした読後感とはいきませんでした。少女には向かない職業 (創元推理文庫)posted with ヨメレバ桜庭 一樹 東京創元社 2007-12-23AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo
カフカ

【変身】ある朝、目覚めると、自分の身体が巨大な虫に「変身」していた 評価:2点【フランツ・カフカ】

「審判」「城」などでも有名なフランツ・カフカの作品です。降りかかる不条理に対して主人公が何を思い、どう行動するか。そして、それを取り巻く家族の反応とその悲しい結末。そのような描写は鋭くかつユーモアに富んでおり、文学界に新風をもたらしたのは理解できるのですが、物語の展開が「当然の結末」だらけで意外性がなく、その点の面白さが欠ける小説でした。あらすじある朝目覚めると、グレゴール・ザムザは一匹の巨大な虫に変身していた。真面目な勤め人だったグレゴール。失業中の父の代わりに一家を支え、妹を音楽学校へと進学させるべく辛い仕事に耐えていた。しかし、変身してしまった彼を家族は恐れるようになる。妹のグレーテだけがかろうじて世話をしてくれるものの、虫になってしまったグレゴールの人間性は次第に失われていく。一家の生活も困窮していき、金策として、家の一部を客人へと間借りさせることにしたザムザ一家。ある日、間借り人をグレーテがバイオリンでもてなしていると、そこにグレーゴルが降りてきて.......。感想読む人によって様々な比喩を想起させる作品です。突然、大病を患って要介護になってしまった人や、働き過ぎて精神病に...
川上弘美

「センセイの鞄」川上弘美 評価:2点|穏やかな大人の恋愛小説【純文学】

芥川賞作家、川上弘美さんのベストセラー小説です。谷崎潤一郎賞を受賞した「純文学」なのですが、異例なほど売れた作品。小泉今日子さん主演で映画化もされています。大人の恋のなかにある淡くて切ない心境に感動できる一方、登場人物の現実感や物語の起伏という点ではイマイチな作品でした。あらすじ37歳独身のOL、大町月子は居酒屋で高校の恩師と再会する。「センセイ」こと松本春綱は月子の30歳年上。奥さんを亡くしているセンセイと、彼氏のいない月子。二人は居酒屋で、あるいはキノコ狩りで、徐々に打ち解けあってゆく。そんな中、高校の同級生である小島孝が月子にアプローチする。月子はその誘いを断り、自分の中での先生への想いを明確にしていく。それでも、なかなか決定的なところまで踏み出せない。しかし、小島孝に旅行に誘われたことをセンセイに打ち明けると、意外にもセンセイが「島に行きませんか」と誘ってきて......。感想紳士的で穏やかなセンセイとの、大人の恋愛。センセイに惹かれていく月子の内面が抒情的に描かれ、こちらにまで切ない気持ちが伝わってきます。ただ、この小説の良いところはその一点のみ。センセイにも月子にも、まるで...
カミュ

【共感は欺瞞】小説「異邦人」カミュ 評価:3点【海外文学】

ノーベル賞作家、アルベール・カミュの代表作です。面白いと思う人とつまらないと思う人が分かれる作品ですが、私は好みです。「共感」ばかりが重要視され、真実を客観的に見る視点を失った現代社会。「誰もがそう思っている」に過ぎない「常識」が、まるで「道徳・正義」のように扱われる今日。そのような風潮に疑問を投げかけ続ける古典の佳作です。あらすじ主人公、ムルソーの母が養老院で亡くなるところから物語は始まる。葬儀に参加するために養老院へ向かうも、涙一つ見せず、母の死体も見ず、ミルクコーヒーを楽しむムルソー。その翌日には恋人のマリィと海水浴に行き、映画を見て笑う。何事にも動じず、淡々と過ごす彼だが、頼まれれば友人を助け、話を聞き、遊びに誘われればついてゆく。その理由は「それをしない理由がないから」だとムルソーは言う。理性・感情を持ちながら、一切の「人間らしさ」がないように見えるムルソー。ある日、彼はビーチでアラビア人を殺し、裁判にかけられることになったのだが......。感想味のある良い作品だと思います。母の死に涙を流し、我を忘れるほど思いつめること、その後しばらくは立ち直れないこと。そんな人物を、我々...
☆☆(小説)

小説 「伊豆の踊子」 川端康成 星2つ

1. 伊豆の踊子前置きはいらないほどの有名作品。吉永小百合さんや山口百恵さんが主演した同名映画の原作としても知られています。描写の美しさは折り紙付きで、特に踊子のいきいきとした描き方には感動がありますが、物語としての含蓄や面白さがあると言われると微妙なように感じられました。伊豆の踊子 (新潮文庫)posted with ヨメレバ川端 康成 新潮社 2003-05-05AmazonKindle楽天ブックス
山田詠美

小説 「ぼくは勉強ができない」 山田詠美 星2つ 

1. ぼくは勉強ができない「新潮文庫の100冊」の常連であることからも知っている人が多いのではないでしょうか。文藝賞でのデビュー以来、直木賞、谷崎潤一郎賞、川端康成賞などを受賞し、純文学とエンターテイメントの両方で活躍する作家、 山田詠美さんの作品です。コミカルな語り口と勉強一辺倒に対する爽やかな反論が面白い一方で、勉強のやり過ぎは悪、恋することこそ善といった二項対立で物事を語ることができた時代に取り残されてしまった作品でもあるように思いました。ぼくは勉強ができない (新潮文庫)posted with ヨメレバ山田 詠美 新潮社 1996-03-01AmazonKindle楽天ブックス
げんしけん

漫画 「げんしけん」 木尾士目 星2つ

1. げんしけん2000年代前半、当時隆盛の兆しを見せ始めていた「オタク文化」に焦点をあてたことから注目された漫画です。大学のいわゆる「オタサー」を最初に描いた作品ともいえ、そのリアルな「オタク感」からにじみ出る独特の雰囲気は確かに異色で面白いのですが、その斬新性を差し引いたときに魅力が残るかと言われればそうでもない作品でした。げんしけん(1) (アフタヌーンKC)posted with ヨメレバ木尾 士目 講談社 2002-12-18AmazonKindle楽天ブックス 
ラフ

「ラフ」あだち充 評価:2点|あだち充の定番展開が詰め込まれた、熱心なファン向け作品【水泳恋愛漫画】

「タッチ」「みゆき」等で有名なあだち充さんの作品。高校水泳部を舞台にしていますが、ストーリー展開はいつものあだち充パターンが全開。スポーツ万能な主人公、訳ありな関係の幼馴染、立ちはだかるライバル。そして誰かが死ぬ(もしくは重傷)。その意味であだち充らしさがふんだんに盛り込まれた作品なのですが、悪く言えば「あだち充止まり」の作品。ファン層以外には受けづらいのではないでしょうか。一般的な漫画ファンとしては+αが欲しいところでした。あらすじ舞台は私立栄泉高校水泳部。競泳の大和やまと圭介けいすけと飛び込みの二ノ宮にのみや亜美あみは幼馴染だがぎくしゃくした関係。その理由は、お互いの実家がライバルの和菓子屋であること。しかも、先代が経営していた際に「やまと」が「にのみや」のパクリ商品で人気を得てしまったという因縁があった。高校生活の偶然を通じて誤解が解け、惹かれあう二人。しかし、二ノ宮に想いを寄せる人物がもう一人いた。その名前は仲西なかにし弘樹ひろき。自由形100mの日本記録保持者である。恋と水泳。大和はその両方で仲西に勝つことができるのだろうか......。感想悪い点はないのですが、良い点もない...
坂道のアポロン

【青春・恋愛・ジャズ】漫画「坂道のアポロン」小玉ユキ 評価2点【青年漫画】 

「このマンガがすごい! 2009」オンナ編で1位となり、アニメ化もされた本作。ジャズという珍しいテーマと、1960年代という時代設定は確かに面白いと思いました。ただ、ストーリーに捻りがないのは非常に残念。ベタ展開に次ぐベタ展開で起伏がなく、最後も高校生活の枠内で納めきれずに駆け足で大学→社会人としてしまったところに作者の力量不足を感じてしまいました。あらすじ主人公、西見薫(にしみ かおる)は父の都合で横須賀から佐世保の高校へと転校することになった。幼いころから転校ばかりだった西見は秀才だが人見知り。そんな西見がひょんなことから出会ったのが不良として知られる川渕千太郎(かわぶち せんたろう)。正反対の二人だが、千太郎の趣味であるジャズに薫が惹かれ始めたことをきっかけに、二人はかけがえのない友人となっていく。しかし、二人を巡る恋模様は複雑。薫は千太郎の幼馴染である迎律子(むかえ りつこ)が好きだが、律子は千太郎に想いを寄せており、その千太郎は上級生の深堀百合香(ふかほり ゆりか)に恋をしている。そんな百合香の想い人とは、「淳兄(じゅんにぃ)」と千太郎から慕われている桂木淳一(かつらぎ じゅ...
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