「NANA」で大ブレイクした矢沢あいさんの出世作。
若者の恋愛事情を描く作者得意のスタイルで、芸能人のファンなども多いのだとか。
しかし、私としてはそこまで高く評価はできませんでした。
そこそこ読めるのですが、一般的な人間が共感できる作品なのか、という点で大きく欠けるところのある作品だと思います。
あらすじ
舞台は創立したばかりの私立高校である聖学園。
一期生として入学した冴島翠(さえじま みどり)は、二学期から結成される生徒会の役員候補として、クラス推薦で立候補することになってしまった。
何とか演説を終えた翠だったが、マイクの線に足を引っかけて転倒。
そこをフォローしたのが、不良風の容姿をした男子生徒、須藤晃(すどう あきら)だった。
二人の運命の出会いとともに旗揚げされた生徒会。
少し堅くて高飛車なお嬢さまである麻宮裕子(まみや ゆうこ)。
長身で生徒会のなだめ役、瀧川秀一(たきがわ しゅういち)。
お調子者のラグビー部員、河野文太(こうの ぶんた)。
五人が過ごす、切なくて激情的で、そしてなによりも温かい高校生活。
感想
なんだか客観的に読んでしまうお話でした。
作中、登場人物たちは様々な恋のかたちに巻き込まれていきます。
叶わぬ片思い、どうしても離れ離れになってしまう二人、ためらいや後悔といった胸を衝く要素も織り込んであります。
しかし、どうでしょう。
本作の無茶な設定から「こいつらだからこんな恋ができるんだろうなぁ」と思わされてしまいます。
例えば、主人公の翠は最初からクラスや学校の人気者。
「エンジェル」と呼ばれ、「いればその場がぱっと明るくなる」とまで評される人物です。
心優しく、分け隔てなく、モノマネカラオケが非常に上手い。
そんな人物を主人公に据えて、どうして多くの人が共感できるでしょうか。
成績優秀、容姿端麗の才媛である麻宮裕子。
美麗で穏やか、美人の彼女を持つ瀧川修一。
スポーツが得意でおふざけが面白い河野文太。
他の登場人物たちも、一般的な感覚からすれば並外れた才能と容姿を持った人物ばかりです。
確かに、親子関係やいかんともしがたい恋の悩みが彼/彼女たちの胸を苦しめるのはわかります。
ただ、彼女たちのスペックからすればそれを乗り越えられるのは驚きに値しません。
苦難があろうとなかろうと、彼女たちならば自ずと素敵な高校生活が送れるに違いないのです。
もちろん、少女漫画であるという制約上、少女が憧れる世界を書かなければならなかったのかもしれません。
しかし、憧れの世界を描くのに拘泥するあまり、全てが「ありがちな少女漫画」になってしまっています。
とはいえ、物語的には凡庸であっても、絵の美しさや、登場人物たちの表情、台詞のセンスなどはそれなりです。
読み進めていくのに苦労するわけではなく、まさに評価2点(平均的な作品)が妥当な漫画です。
「90年代の王道恋愛少女漫画」を読んでみたいというのなら、手に取る価値はあるかもしれません。
コメント